公開日 2015/12/28 10:00

【レビュー】JVCの“フルスペック4K”プロジェクター「DLA-X750R」を大橋伸太郎がチェック

HDR/HDCP2.2を始めとした最新の4K仕様に対応
■JVCから約2年ぶりに登場した新プロジェクター「DLA-X750R」

DLA-X750R

2014年にはJVCのDLA プロジェクターの新製品がなく、やきもきしたファンも少なくなかったのではないか。JVCは映画ソフト、特にフィルムで撮影されたコンテンツは暗部に凋密な情報(階調、色彩)が秘められていることに着目、傑出したネイティブコントラストの反射型液晶素子と独創的なカラーマネジメントの相乗効果でそれを再現、映画再生において従来の家庭用ディスプレイが踏みこめなかった表現域に到達、プロジェクター高級機に圧倒的牙城を築いたことはご承知の通りだ。

UltraHDテイクオフを前に、2年ぶりに登場した新D-ILAプロジェクターは「DLA-X750R」「DLA-X550R」の2機種で構成される。なお選別パーツで構成した「DLA-X950R」が北米市場向けに存在するが国内には導入されない。ここでは国内向け最上位の「DLA-X750R」の視聴レポートをお届けしよう。

JVC開発陣がDLA-X750Rに与えたミッションは、4Kフルスペック信号への対応。その第一がHDR(ハイダイナミックレンジ)への対応だ。D-ILAの特長の暗部階調の豊かさとの両立に注目したい。

新規に搭載するNSHランプは、265Wの高出力で1,800ルーメンの高輝度を実現、アーク長の伸縮を監視する新システム搭載でランプ寿命は逆に長寿化した。

6.5 世代(後述)D-ILA デバイスと組み合わせネイティブコントラスト12万対1、インテリジェントアパチャー使用時にダイナミックコントラスト120万対1に達し100インチのホワイトマットスクリーン投写時に180ニットの明るさが得られる。

心臓部であるD-ILAデバイスにも改良のメスが入った。“4K e-shift 4”を搭載、Multiple Pixel Controlも進展を果たす。

前世代機DLA-X700R/500Rまでは4K/60p入力の場合、メニュー画面上のMPCの項目はブラックアウト、つまりデフォルトのまま見ていたが、今回、回路規模が2倍化しエンハンスやNRの度合が調整可能になった。

ネイティブ4K信号に対応の新解析アルゴリスムで斜め方向の検出精度を上げ、FHD/ネイティブ4Kを問わず自然な精細感が得られる。画質調整メニュー内の“MPC Level”オリジナルレゾリューションから480、720pの選択肢が姿を消したことも4k UltraHD BD時代を見据えた前向きな対応と受け取った。

この他にも改良部分は枚挙に暇がないが、前世代でAdobeまでカバーしたReal Color Imaging Technologyはカラーフィルター変更でDCI色域に対応、BT.2020を約80パーセントカバーする。

一方7軸だったカラーメネージメントはOg(オレンジ)が消え一般的な6軸調整に改められた。他に細かな所ではスクリーン補正の対象が前世代の106から117スクリーンに増加。キクチのDressdy4K、SILVERやOS WF302、スチュワート新製品が含まれた。詳しくは同社公式サイトを参照されたい。

■2K映像も「4K HDR映像なのかと錯覚する完成度の高い映像」に

視聴は同社ラボラトリーで行った。最初に視聴したコンテンツは、同社お膝元の横浜みなとみらい地区でソニーF65を使って撮影した白昼の自然光下の4Kロケーション映像だ。

HDR/SDRそれぞれのグレーディングをDLA-X750Rで見比べてみる。 SDR映像でのっぺりと白潰れして平板だった昼間の明るい空が俄にニュアンス豊かに変わる。薄青の空にかかる薄雲や微妙な明暗変化の情報が、澱を洗い流したように画面一杯に現れる。薄く柔らかいブルーのピュアな発色は紛れもないD-ILAだ。

一方、続いて視聴のPQカーブ12bitのHDR映像(ST.2084)の夜景は暗部からピークまで広大なDレンジが破綻せず、大画面効果とあいまって肉眼視の錯覚を覚えるほどだ。

ここまでは4Kネイティブソースの再現だが、エンドユーザーの使用実態は今後も2K映像のアップスケールが中心と思われる。そこで続いては、筆者が持参した2K BD-ROMをDLA-X750Rで視聴した。

韓国映画「海にかかる霧」の船上のナイトシーンは、夜闇とサーチライトのコントラストが輝度の余裕で鮮烈。暗闇に横殴りの雨が吹き荒れ、雨滴がサーチライトの光を反射して光ると難度の高い映像だが、解像感、コントラスト、動画輪郭のいずれにも破綻が生じない。

4K HDR映像なのかと錯覚する完成度の高い映像だ。一年間の雌伏の成果が窺われる。今回詳細な調整を試みる時間がなかったが、暗部の再現という点ではコントラストのバランスがやや高輝度の方に引っ張られ、従来のDLAプロジェクターの特長だった「濡れたような黒」から若干薄味になった印象だった。いずれ機会を見て、量産機で調整を試みたい。

なお、最後にDLA-X750RはHDMIver.2.0、HDCP2.2規格へ完全対応し、4K/60p 4:4:4 8bit、4K/60p 4:2:2 12bit、4K/24p 4:4:4 12bit、4K/30p 4:4:4 12bit等の18Gbps入力にフル対応する。HDCP2.2に2入力で対応は他社にない特長。ロングケーブルのスペック不足によるエラー発生時に画面でそれを報せる仕組も頼もしい。

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