音楽ストリーミングを信頼のヤマハサウンドで鳴らす!ワイヤレスHiFiスピーカー「NX-70A」を聴く
オーディオ界の台風の目となった感のあるワイヤレススピーカーだが、そこに国内ハイファイの最大手であるヤマハが動いた。新たにワイヤレスHiFiスピーカー「NX-70A」をリリースしたのだ。
同社は、2015年10月に「NX-N500」というモデルを発売し、ワイヤレススピーカーの分野で先鞭を付けた。そこから11年、Qobuzを始めとするハイレゾ対応の音楽ストリーミングの普及で時期が整ったといえる。
スマートフォン/タブレットやPCといった端末とNX-70Aがあれば、プレーヤーやアンプといった別のコンポーネントがなくても、信頼度の高いHiFiサウンドで音楽ストリーミングサービスを楽しるのだ。音楽を楽しむための手軽さと高音質の両立を高いレベルで実現し、従来までの音楽再生を一変させようとしている。


また、音楽ストリーミングサービスだけでなく、ワイヤレス接続のBluetoothやテレビなど映像機器と接続しやすいeARC対応のHDMI接続、光デジタル音声接続などカバーしており、メディア多様化時代のオールラウンドプレーヤーといっていい。
しかし、NX-70Aの価値は、多機能性ではない。ハイファイの総合メーカーであり、伝統ある楽器メーカーであるヤマハが、音楽ストリーミング時代に求められる高音質なワイヤレススピーカーというテーマに向かって、エレクトロニクスから音響工学までの知見と技術を注ぎ込んで、新しく切り拓こうとしている姿だ。
「新しい酒(コンテンツ)は新しい皮袋(オーディオ)に盛るべし」、新時代の主役を担って登場したNX-70Aの真価は、挑戦と音質へのこだわりにあるのだ。そのこだわりに触れるべく、本稿では音質の徹底レビューをお届けしよう。
アップデートでQobuz Coneectに対応、幅広い音楽ストリーミングサービスをカバー
NX-70Aの特徴として先に挙げておきたいのが、対応する音楽ストリーミングサービスの多様さだ。同社独自のワイヤレスネットワーク機能「MusicCast」に対応していることから、Spotifyをはじめ、ハイレゾストリーミングのQobuzや海外のTIDALなど、多くのサービスが再生できる。
さらにSpotify Connect、今後のソフトウェアアップデートでQobuz Connectにも対応予定であり、よりシームレスな再生もカバーしてくれる。ハイレゾ再生を嗜んでいるオーディオファンは、Roon Readyもフォローすることも注目ポイントだろう。
ほかにも、AirPlay 2をはじめ、Google Cast、PodCastsに対応している。
NX-70A専用にチューニングされた独自の「ハーモニアスダイアフラム」を振動板に採用
ヤマハが掲げる一貫したオーディオフィロソフィー「TRUE SOUND」による、「TONAL BALANCE」「DYNAMICS」「SOUND IMAGE」の3つのコンセプトは、もちろんNX-70Aでも継承されている。
それはプレミアムHiFiスピーカーの “NSシリーズ” で培ってきたドライバーユニット技術が、NX-70Aにも着実に踏襲されていることからもわかる。
本モデルには、NSシリーズのフロアスタンディングスピーカー「NS-2000A」やブックシェルフスピーカー「NS-600A」などで使用されている、ハイスピード素材「ZYLON」とグランドピアノの響板に使われるスプルース材などを混抄して整形した素材をNX-70A専用にチューニングした、独自の「ハーモニアスダイアフラム」を振動板に導入する。
ツィーターは30mm・ドーム型、ウーファーは130mm・コーン型による2ウェイモデルであり、両方に「ハーモニアスダイアフラム」を採用することで、 ツィーターとウーファーの繋がりを、非常にスムーズにしたものとしている。加えて、バスレフ型としている。
「シナジスティックドライブ」で音楽の生き生きとした「響き」を引き出す
アンプ出力はツィーター部が60W、ウーファー部が100Wとなる。NX-70Aの最⼤の注⽬ポイントである「シナジスティックドライブ」は、ウーファー部に搭載される。
スピーカーを駆動する際、その磁気回路で発生する磁束が駆動電流を歪ませ、音楽性を著しく欠如させる原因となることが知られている。そこで、長年アンプとスピーカーの両⽅を⼿がけてきたヤマハは新時代のアクティブスピーカーを作るに当たり、この歪みを回路アプローチで解決することを考えたようだ。
それは、スピーカーをアンプ回路の一部品として扱い、時々刻々と変化するスピーカー電流の情報をアンプに帰還し正確な駆動電流を得ようとするもの。その結果、これに起因する音響歪みを150Hzから3kHz帯域で最⼤15dBの低減(約1/5)を実現したという。
元々ウーファーで発生していた歪みは、その帯域外の高調波成分を含んでおり、ツィーターが受け持つ再生帯域に悪影響を及ぼしていた。「シナジスティックドライブ」は、この歪みを低減させ、ツィーターへの不要な干渉が抑えられ役割分担が明瞭となることで、低域から最高音までスムーズにつながるようになったのがメリットだ。
歪みの低減で音空間が澄み渡ることで音場の奥行きが増し、歌声や楽器の楽音の輪郭が冴え、定位が明瞭なものになることが音質的な特徴だ。さらに、これまで邪魔だった高調波歪が抑えられ、音楽に欠かせない演奏会場の残響成分や楽器の発するデリケートな余韻が聴き取れるようになった。
歴史ある楽器メーカーであり、音楽の現場と深いつながりのあるヤマハ。新時代のスピーカーを作るにあたり、第一に目指したことは表面上の新しさでなく、初心に立返り音楽の生き生きとした「響き」を引き出すことだったのだ。
自動音場補正機能「YPAO」からアプリ「MusicCast」まで幅広い機能性を備える
NX-70Aには、同社のAVアンプでも実績のある自動音場補正機能「YPAO」も搭載する。付属マイクを接続するだけで、リスニング環境の音響特性を実測し、フラットでクセのない音質傾向に補正してくれる。


本機は、プライマリーとセカンダリーで分かれているが、スピーカーのLRを入れ替えが可能、さらに接続ケーブルがなくてもスピーカーのLRをワイヤレスで繋げることができるのも特徴である。主要の端子は、全てプライマリー側に装備されている。
また、付属リモコンによる操作も可能だが、アプリ「MusicCast」からのコントロールに対応。音楽ストリーミングサービスを中心に楽しむユーザーにとっては、スマートフォン/タブレットのみで再生も操作も完結できるのは、ユーザビリティに優れている点と言えるだろう。
ノイズ成分と付帯音がなく、ピアノの打鍵の立ち上がりと立ち下がりの解像感に感心
それではNX-70Aの実機に触れていこう。ヤマハというと「NS-1000M」や「NS-10M」、“SOAVOシリーズ” など木工技術を駆使したスクエアなキャビネットのスピーカーをイメージするが、本機は平行面のない優美なラウンドフォルムに包まれている。
カラーは専用スタンドも含めて、ブラックとホワイトの2種を用意。ユニットを縁取るリング、アルミ材を使った天面に配されたガーニッシュのカッパー色が新鮮だ。黒とカッパーのコンビネーションはグランドピアノの筐体内部のイメージを敷衍したものだそうだ。
まず、ヤマハが自信をもって推奨するコンテンツを聴いてみよう。Qobuzのハイレゾ音源からダイアナ・クラールを聴かせてもらったが、スピーカーの背後に出現する深く澄みわたった音場に驚く。ピアノの共鳴弦が放射する白銀色の倍音が試聴室に立ち昇り、これだけで高調波歪の弊害をなくした「シナジスティックドライブ」の威力が感取される。
ステージ上のピアノ、ベース、ギター、ドラムスの配置が立体的で明瞭、ステージサイトで演奏を目の当たりにする生々しいリアリティがあるのだ。
ヤマハのオーディオは、ピアノ音楽を再生して決して裏切られることがない。チョ・ソンジンのモーリス・ラヴェルの『古風なメヌエット』は、ピアノの音にまとわりつくノイズ成分や付帯音がなく、打鍵の立ち上がりと立ち下がりの解像感に感心した。
ソステヌートペダルを使った音の保持、なめらかな減衰とソンジンのピアニズムを正確にクローズアップ。一見カジュアルなライフスタイルスピーカーなのに、この点はまぎれもなくヤマハのHiFiオーディオだ。
