デノンAVアンプの次世代サウンドを牽引するミドルクラス『AVR-X3900H』堂々登場!その真価を徹底レビュー
エントリーの5.2ch構成から孤高の15.4ch構成のフラグシップまで、AVアンプにおいてフルラインアップを擁するデノンから、今夏はミドルクラスにあたるAVR-X3900H、ならびにAVR-X2900Hが同時リリースされた。
両機種の性格分けは明快であり、AVR-X2900Hが「AVアンプで始める初めてのオーディオ」というメッセージが込められているのに対し、AVR-X3900Hは「最初のハイエンドAVアンプ」といったコンセプトを持っている。
特にAVR-X3900Hは、従来までのミドルクラスの位置よりも、よりハイグレードモデルに近付いたハイミドルクラスとして再定義しても良いレベルのAVアンプである。前モデルの「AVR-X3800H」の発売から4年の歳月を経て、どれだけのクオリティアップを実現したのか、本稿では音質レビューも実施して、AVR-X3900Hの真価に迫っていこう。
電流出力型のDACを採用し、高音質パーツを細部までブラッシュアップ
本機は、アナログフルディスクリート構成の実用最大出力215Wの9chパワーアンプを搭載し、最大で11.4chプロセッシングによるサウンドシステムが構築できるモデルだ。
前モデルのAVR-X3800Hからの見直しは多岐に渡る。大きなポイントはDAコンバーターの変更だ。
電流出力型のDACであり、コストは電圧出力型より掛かるが、現在日本で手に入るDACを全て入手し、設計陣が音質検討した結果、デノンが求める音質「Vivid & Spacious」を実現するのに望ましいと判断し採用した。プリアウトのS/Nが15dBと劇的に改善し、音の立ち上がりと瞬発力が上がった。
もちろんDACだけで音質が決まるわけではなく周辺回路、カップリングコンデンサーもDACに最適化、I/V変換部に薄膜抵抗を採用するなど、再設計されている。
アンプの基礎体力を担う部分も強化された。ブロックコンデンサーは、基本設計や材料といった部分で、同社のフラグシップ「AVC-A1H」でも採用されているものが導入されている。
固定材なしの基本設計とし、電解紙の材質、箔の引っぱり強度や巻テンションに関してさまざまな試作品を作り、音質検討した中で一番優れたものを選んだ。
独自のアルゴリズムを採用した「チャンネルエキスパンダー」に注目
新機能の中で最大の注目が「チャンネルエキスパンダー」機能だ。
Dolby Atmos収録の映像コンテンツを再生した際、トップミドルとフロントハイトのスピーカーがあるシステムで再生すると、トップミドルしか出力されないという再生状況になってしまうのだが、「チャンネルエキスパンダー」機能を使用することで、フロントハイトからも音が出力されるようになるのだ。
このとき、フロントハイトから再生される音は、フロントチャンネルとトップミドルの信号を、デノンの独自アルゴリズムで合成されたものとなっている。
「チャンネルエキスパンダー」は、Dolby Atmosのみに対応しており、効果は弱/強から選択できる。自身が持っているスピーカーを全て鳴らしたい、そんなオーディオビジュアルファンの声に応えてくれる、待望の機能が導入された。
「ワイヤレスサラウンド」機能で“DENON HOMEシリーズ” と連携
もうひとつ新機軸の機能として搭載されるのが「ワイヤレスサラウンド」だ。
サラウンド/サラウンドバックスピーカーに、“DENON HOMEシリーズ” にラインナップするDolby Atmos対応ワイヤレススピーカーを、ワイヤレス接続で使用できるようになる。DENON HOMEシリーズで対応するのは、DENON HOME 200/400/600の3モデルとなる。
例えば、5.1chシステムの場合は、サラウンドにDENON HOME 200を2本、もしくはDENON HOME 400/600を1本、7.1chシステムでは、サラウンドにDENON HOME 200を2本、またはサラウンドバックにDENON HOME 200を2本か、DENON HOME 400/600を1本組み合わせたシステムを構築できるという。こちらの機能は、今後のアップデートで対応予定であり、非常に楽しみな機能だ。
さらにフロントLRだけでなく、センタースピーカーをバイアンプ駆動できるモードを初搭載したことも注目。センタースピーカーのウーファーの逆起電力によるトゥイーターへの悪影響を抑える副次効果もある。
従来モデルから引き続き、Dolby Atmos/DTS:X/Auro-3D/IMAX Enhanced/MPEG-H 3D Audio(360 Reality Audio)など、多彩な立体音響フォーマットに対応。ネットワークオーディオ「HEOS」によって、Qobuzをはじめ、Amazon Music、Spotify、Deezer HiFi、SoundCloudなどの音楽ストリーミングサービスもカバーする。
ほかにも、ゲーミング時にモニターのフレームを完全同期させティアリング(画面のずれ)を抑える1440p/AMD FreeSync対応を果たすなど、AVアンプファンの拡大に繋がる機能も備えている。
音質レビュー:S/Nと解像力が高く見通しの良い広大なサウンド
では、AVR-X3900Hの試聴してみよう。一言で表現すれば、ステレオ音源からUHD BDのイマーシブサウンドまで、全てのソースでS/Nと解像力が高い。
大型のフロア型スピーカーを悠々とハンドリングし、ワイドレンジ、ハイレスポンス、繊細鋭利に切れ込む。音場が澄み切って爽快であり、見通しがよく広々と大きいのも特長。近年のデノンのHi-Fi/ホームシアターに共通した音調である。
まず、高忠実度の指標となる女声ボーカルから。サマラ・ジョイの『ポートレート』(CD)は、解像力とカラレーションのない素直な音質に引き込まれる。
ジョイの歌声は、輪郭が鈍らず太く音場をまっすぐ貫き、多様な楽器の音色と質感も色付けなく再生するため、楽音が生々しい。ドラムロールも音の輪郭が鮮明でキレがある。
セシル・マクロリン・サルバントの『OH SNAP』(CD)は、ソットヴォーチェ(弱音)で歌うときのハスキーな肌理もリアルに出してくる。
多重録音の音のレイヤー、ハーモニーも適度に分解し重層的な音空間を表出。フォーキーな楽曲では、包み込むような広がりも心地よく、デノンのサウンドマイスターの音作りの狙いが、素直さ、レスポンス、クラリティにあることが伝わってくる。
ステラ・コールの『マジック』は、強化された足腰の強さを発揮。スピーカーを生き生きとしたレスポンスで鳴らし、駆動力の高さを証明する。
加えて、S/Nと解像感の良さが出色、歪みのなさが発揮され、コールの魅力であるディクション(口跡)のなめらかな美しさ、音程のにじみない正確さに聴き惚れる。やや薄旨で清楚なのでもう少し厚みや色彩感が欲しくなるかもしれない。
クラシックは、ラファエル・ピション指揮、ピグマリオン・バロック・アンサンブルの『J.S.バッハ ミサ曲ロ短調』(CD)を聴く。天地方向に広大な空間の残響成分から生まれるナチュラルサラウンド効果と、どこまでも立ち昇る合唱の倍音が清冽する。こちらも歪成分が少なく、聴き手を優しく包み込み。
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