公開日 2021/12/05 07:00

「300B」はなぜ“真空管の王様”と呼ばれるのか?ウェスタンエレクトリック流の矜持、復刻の舞台裏を探る

現代の最新技術で再構築した新300B
■本家・ウェスタンエレクトリック「300B」が国内でも正式発売

去る10月28日、待望のニュースが発表された。真空管アンプに用いられる出力管の中でも格別の人気を誇る、本家ウェスタンエレクトリックの「300B」再生産品がようやく国内で販売されることになったのである。数年前から噂でウェスタンエレクトリックの300Bが再生産されることを耳にしており、2021年に入ってから本国サイトでは販売を開始していたので、国内導入の知らせを待っていたのだ。

ウェスタンエレクトリックの「300B」が国内でも正式発売開始!

10月28日のリリースで、ここ日本では輸入総代理店に株式会社エレクトリ、総販売元に株式会社トライオードが担当することが公表された。これは真空管をよく知るトライオードならではの販売チャネルを通すことで、市場動向や後に説明する保証体制の手順を円滑に進められるという利点があるからだ。

新たな300Bは1本11万円、特性の揃った2本ペア+化粧箱セットで23万1千円、さらに特性の揃った4本クアッドセットが48万4千円となる。近年オリジナル300Bが高騰する情勢を踏まえると決して安くはないものの、高すぎるプライスではない。

今回、「2021東京インターナショナルオーディオショウ」開催直前の慌ただしい中、株式会社トライオードの山崎順一社長にもウェスタンエレクトリック300Bを取り扱うことになった経緯やその思いを伺うことができた。その中で見えてきたのは、今回の再生産はオリジナルに忠実な復刻というより “現代の最新技術で再構築” した、『新300B』であるということだ。

“三極管”への思い入れも一際強い、(株)トライオードの山崎順一社長

■さらに一皮むけた音質クオリティの新300B

山崎社長もウェスタンエレクトリック製品の魅力に惹かれていたお一人であり、かなり以前から入手し、その音に耳を傾けていたという。「300Bはもちろんですが、励磁型コンプレッションドライバー『555W』を使った大型のホーン型システム『15A』を使っていたこともあります。その当時勤務していた国鉄の社宅に搬入するのにとても苦労しましたね。ベランダの窓枠を外すしかなくて(笑)。6畳の部屋に2台入れたんです」

最新の300Bを手に取る岩井 喬氏

まさに武勇伝だが、古くからのオーディオマニアにとってウェスタンエレクトリックとは憧れの存在であり、いつかは手に入れたい逸品であったのである。

社名とした “トライオード” は三極管を意味しており、まさに300Bはその代表格。今回のウェスタンエレクトリック300Bを取り扱うようになったことはまさに格別の思いであろう。

「日本にはまず先方からヒビノさんに打診があったようなのです。ヒビノさんは基本的にプロシューマー企業ですから、コンシューマー向けには傘下企業であるエレクトリさんでどうだろうという話の流れとなったようですね。ただ真空管単体の販売という点では経験も必要ですし、そうしたことが得意な販売元を探していたそうです。イベント等でもご一緒する機会も多くありましたので、そんなご縁からお声がけいただきました」

「新300Bの音質はかなり低域が伸びてます。97年の再生産のものよりも一皮むけてます。空間の出方もここまで変わると思わなかったほどで、ハイレゾ時代でも対応できるレンジの広さを実感しました。一口にウェスタンといっても製造時期によって音も違いますが、新300Bの音質傾向は非常に良いもので、ウェスタンとして語れるものであると考えています」

東京インターナショナルオーディオショウでも「ウェスタンTシャツ」で気合いたっぷりのデモを行った山崎さん

次ページウェスタンエレクトリックの歴史

1 2 3 4 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック

クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 ビックカメラ、実店舗での「2026年新春福箱」は元日10時から。約250万円おトクなホームシアター福箱も
2 レコードプレーヤーが好調持続。デノン「DP-3000NE」が圧倒的存在感<販売店の声・売れ筋ランキング11月>
3 SOUNDPEATS、「福袋2026」販売開始。「ハイエンド機とランダム1機種ずつ」「完全ランダムで2機種」の2タイプ
4 ビクター、最上位完全ワイヤレス「WOOD master」にK2テクノロジー対応アップデート
5 メタリック・レッドのアクセントがクール。AKGの銘ヘッドホン「K240」の日本限定版、プロ機の高性能健在!
6 4K UHD BD『28年後...』、恐怖と静寂のコントラストが際立つ、没入感たっぷりの立体音響
7 Qobuz、ドイツ・グラモフォン/デッカのDSDが最大33%オフの「クラシックDSDホリデーセール」
8 「オーディオフェスタ・イン・ナゴヤ 2026」、2/14 - 15に開催。名古屋コンベンションホールにて
9 【年末特別企画】ニュース記事アクセスランキングで振り返る2025年<上半期編>
10 j5create、小型のUSB-C to HDMI ワイヤレス送受信機など2機種
12/26 10:53 更新
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー199号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.199
アナログ Vol.90 2025 WINTER
季刊・アナログ
最新号
Vol.90
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
特別増刊
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
最新号
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.23 2025冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.23
プレミアムヘッドホンガイド Vol.33 2025 SUMMER
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.33(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • プレミアムヘッドホンガイド
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX