HOME > レビュー > スピーカーセッティングを攻めろ!FYNE AUDIOの10万円ブックシェルフの使いこなしを徹底研究

設置位置や距離、角度でガラリと変わるオーディオの楽しみ

スピーカーセッティングを攻めろ!FYNE AUDIOの10万円ブックシェルフの使いこなしを徹底研究

公開日 2026/08/12 06:30 栗原祥光
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

デスクトップに置くにちょうどよいサイズのスピーカーが英国から届いた。FYNE AUDIO(ファイン・オーディオ)最少となる125mm同軸ユニットを搭載した「F5S」(132,000円/ペア、税込)だ。セッティング次第で他のスピーカーでは得られない音世界が拡がる本機をご紹介する。

FYNE AUDIO ブックシェルフスピーカー「F5S」(132,000円/ペア、税込) 

セッティングの追求がもたらす深いオーディオ世界

「壺中の天(こちゅうのてん)」という言葉がある。俗世間を離れ、酒を楽しむ隠れ家的な空間や体験のことだ。

リスニングルームという壺の中に入り音楽を愉しむオーディオという行為は、壺中の天そのものであろう。壺の大きさは人それぞれだが、壺の大小と感動は比例しない。小さな壺ならではの世界があり、そこでしか得られない感動がある。

なぜそのような話をしたのか。それはF5Sとリスナーの間を1mの正三角形にセッティングし、かつ耳の高さを同軸ユニットの中心に合わせた時にのみ、精緻で左右の広い音場と自然で深い奥行きという、小さな壺でしか得られない音世界が得られたからだ。これはタイムアラインメントがキチンと取れた、優れたスピーカーシステムでしか実現し得ない。

「F5S」の試聴は、ティアックのネットワークトランスポート「NT-507T」とアキュフェーズのプリメインアンプ「E-3000」+DAコンバーターボード「DAC-60」を、USBケーブルで接続して行った

また、本拠地であるスコットランドのノース・ラナークシャー風景を想わせる、どこか陰のある表現にも好感を抱いた。造り手は意識していないだろうが、オーディオ機器には、どうしても作り手の意識が反映されるものだ。

セッティングの重要性を教えてくれる

その作り手が過去タンノイに在籍していたことからか、クラシックの表現には目を見張るものがある。イラン系オーストラリア人のチェリスト、キアン・ソルターニが弾き振りしたシューマンのチェロ協奏曲などは、まさに水を得た魚のよう。カメラータ・ザルツブルクを従えて、堂々とチェロを奏でる姿が眼前に浮かび上がる。キラリとした高音が、楽曲に活き活きとしたアクセントを加える。

19mm径コンプレッション・トゥイーターと125mm径ウーファーによる同軸ユニットISOFLARE(アイソフレアー)ドライバーを搭載。ウーファーは口径こそ小さいものの、上位機同様マルチファイバーペーパー・コーンに特殊な溝加工を施したFYNEFLUTE(ファインフルート)エッジの組み合わせ。トゥイーターの振動板はマグネシウム材が用いられているという

もちろん、ポップスでもロックでもジャズでも、少し大人の色香を加えたサウンドでリスナーを魅了する。手練れの仕事ぶりに、ただただ感心した。

ただ、セッティングはかなりシビアだ。というのもホーン型トゥイーターゆえ、指向性はかなり狭く耳とトゥイーター中心部の高さを合わせなければ、美しい高域が耳に届くことはない。試しに高さはそのままで外振りにしてみたところ、やはり高域がどこかへ消えてしまった。さらにスピーカーとリスナーの距離を厳密に揃えないと、音像のフォーカスはかなり甘くなる。

F5Sは、美しい音を奏でるスピーカーであり、セッティングの重要性を使い手に教えてくれるオーディオの先生でもあるのだ。

スピーカーとリスニングチェアまで約3m離れたところから試聴。間隔が広いことから、ピンポンステレオのような音像と低域の量感に不満を抱いた

試しにスピーカーを正面に向けた様子。左右の拡がりは得られるものの、奥行きの音場が得られづらくなったこと、また高域の減衰も少し気になった。どうやらスピーカーをリスナーに向けるセッティングが良いようだ

それゆえ筆者がF5Sを手に入れたら、リビングのテレビの横に置きパートナーや家族と共に映画を愉しむのではなく、PCデスクのディスプレイの両脇に置いたデスクトップオーディオシステム用として使うだろう。

トゥイーターの高さはIsoAcousticsやクリプトンから出ている卓上用スピーカースタンドと椅子の高さを調整すれば解決しそうだ。

厳密にセッティングを詰めて、ドイツ・グラモフォンの「ステージプラス」をはじめとする映像のサブスクリプションサービスを愉しんでみたい。アンドリス・ネルソンス、ヤニック・ネゼ=セガン、ジョン・エリオット・ガーディナー等の一流指揮者による有名オーケストラの名演を目前で愉しむ。これを壺中の天と呼ばずして、何といおうか。

F5Sを横から見たところ。奥行きも約250mmと省スペースで設置できるのも魅力

キャビネット下部には、下向きに取り付けられたバスレフポートの直下に円錐形のディフューザーを介して水平方向360度に放射するBassTrax(ベース・トラックス)開口部が設けられている

使い手を選ぶかもしれない。だが、ツボにハマったら他のスピーカーでは得られない、ミクロコスモスの世界が待っている。まさに、オーディオの魅力を伝えるコンパクトなブックシェルフスピーカーと言えるだろう。

スピーカーターミナルはバイワイヤリング接続対応型。またターミナルの間に2.5kHz - 5kHzの音圧レベルを3段階に調整可能なプレゼンスコントロールスイッチが設けられている

 

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE