公開日 2025/09/29 06:30

”自分の音を探求する旅”の相談役として信頼される福井のマイスター、オーディオスペースコア

連載「遠藤義人の全国のインストーラーを訪ねて」

北陸新幹線で東京からのアクセスが心理的に近くなった福井に、日本中から電話やメールでの問い合わせが絶えないオーディオ&ホームシアターショップがある。オーディオスペースコアだ。

福井のオーディオスペースコアを訪れた

人気の火付け役が語る「音のハイエンド」とは

「私が心がけているのは、金額のハイエンドではなくて、音のハイエンドです」

そう語るのは、YG Acousticsのスピーカーをはじめとするハイエンドオーディオ群の人気の火付け役のひとりとして全国に名を馳せる、筏 隆市(いかだ りゅういち/以下、筏氏)氏。一部の富裕層だけをターゲットにした高額ビジネスではなく、お客さんとともにひとつずつステップを重ねて、気づいたら景色のいい高みに至っていた…という感動を共有させてくれる手法に徹している。

「機器を揃えるだけではいい音は得られません。それをどう生かしていくかが重要なのです。たとえば、機器のセッティングなんてタダでできるものです。アクセサリーもピンキリですが、何段階もステップを踏んでようやく高みへと至る。そのための引き出しをたくさんご用意しています」(筏氏)

筏氏は創業以来25年「何も活動していない」と謙遜するが、いつお会いしてもブレのないスタンスで、一貫してお客さんと接していることが伝わる店構えと語り口だ。

ハイエンドオーディオの展示も揃えている

YG Acousticsのスピーカーシステム「Hailey3.2」

信頼できるアドバイザリーとしてユーザーに寄り添う

「ブログで発信した内容に共感を得たお客さまだけに足を運んでいただければいいと思っています」と語る筏氏。

お店のHPやブログを読み込んでアプローチしてくるお客さんは、そういった筏氏の見立てに共感して「この店のいうことなら間違いない」とわざわざ福井まで足を運び、相談に訪れるに違いない。そう思っていたが、最近とみに、これまでになかった事態が起きているという。遠隔のお客さんが、相談だけで実際に試聴することもなく購入するというのだ。

店内の試聴スペース

「同じことをずっと発信し続けてきただけなのですが『この店で買ったら間違いない』とおっしゃる方が増えたんです。どの機械がいいですか? とメールや電話してくる方もいます。もっとも、はじめてのお客さまですと、お客さまの部屋も知らないし、お好みの音も曲も知らないので、普段お聴きになるCDを数枚持参してお店で聴いて下さいとご案内しています。決して安い買い物ではないので。でも…」

筏氏も戸惑っている様子。現代人はそんなに時間に余裕がないのだろうか? 空気を伝わる音はもちろんその場にいなければわからないし、初めて心を通わせようという人のいうことだって実際に対面してしなければ本当のところはわからないとわたしも思うのだが。いまやユーザーは、メディアが発信する情報にかぎらず多様な情報を得やくなっているし、自身が発信すらする中で、選びきれなくなってきているのかもしれない。

そんないま、筏氏はオーディオ販売店としてあるべき姿を常々考えた結果、オーディオメーカーのショールームとならないように心がけ、アドバイザリーとして正直に見解を述べている。それゆえに、ユーザーからの信頼が集まっているのではないだろうか。

綿密なセッティングが無数のこだわりのひとつ

そうした一種の審美眼めいたものを、筏氏は常々磨いているのだと思う。車にしても、時計にしても、洋服にしても、何事にもこだわりがあると感じる。

「興味を持ったことにこだわることで、色々得られるものってあると思うのです。オーディオアクサセサリーひとつを取っても、削り方とかバリの出方とか、ものの作り方に強いこだわりがあります。どういう素材で、どういう造りで、こういう手触りだからこういう音が出るのか理解すると、辻褄が合ってくる。そういう自分の趣向が、仕事にも生かされている気がします」(筏氏)

店内には筏氏の審美眼にかなうアイテムがところ狭しと並べられている

オーディオ・ビジュアルは、芸術作品を再生する装置であり、必ずしも生活に必要不可欠ではない、それがゆえに、美意識は大切だ。レーシングドライバーやエンジニアがマシンをセッティングするように、筏氏はスピーカーセッティングを事前シミューレーションした上で、現場でも1時間半ぐらい掛けて無数の引き出しを駆使して行う。

そこを売り文句にしないと、あえてこのお店で買う理由はない。機器自体は工業製品ゆえ、どこで買っても同じものだからだ。

ネットワークオーディオ全盛の時代にあえてCDを推す

数々のウリがあるオーディオスペースコア。なかでも際だった主張が、メインソース機器としてネットワークオーディオを扱わず、CDプレーヤーを推していることだ。

「わたしは、一回途切れただけで不良品だといわれるようなものは、まだまだ未完成だと考えているんです。それに、10年経っても20年経っても修理してあげたい。ですから、ネットワークオーディオの取り扱いは、まだ見合わせているんですよ」(筏氏)

今回紹介したのは筏氏の考えのごく一部だが、趣味人としてのこだわりは一級品。ぜひブログを読み、共感した人は連絡を取った上で、CD持参でお店に足を運んでいただきたい。筏氏と価値観を共有しながら、自分の音を探求する旅に出て高みを目指しませんか。

ソース機器はCDプレーヤーをメインに取り扱い

オーディオスペースコアの実例

オーディオスペースコアが実用新案を取得している音響設計で最近施工したオーディオルーム。天然木のバックの壁面は、音の拡散とともに、間接照明で視覚的にも立体的になる工夫が施されている。さらに、部屋のコーナーなどには調音のため日本音響とオーディオリプラスの製品を組み合わせて配置してある。オーディオスペースコアが長年扱うYGアコースティクスのスピーカーとFMアコースティックスの設置には、ミリ単位のセッティングが施されている(福井M邸)

M邸同様、実用新案取得の音響設計ルーム。協力工務店の丁寧な施工もあり、あとからあまり調整を施さなくても済むほど音響特性に優れた部屋に仕上がっている。電源は専用分電盤を機器の真横に設置し、位相がずれないように同相の電源を確保。スピーカーはWilson Audioで、定在波の影響のない場所を事前シミュレーションで割り出し、ほぼ計算通りに設置できている(勝山X邸)

オーディオ評論家・音楽家の生形三郎さんの視聴室もオーディオスペースコアが手掛けた。これも実用新案取得の音響設計ルームで、解体時から何度か立ち会って仕上げた。トップスピーカーを配しているので、そのための工夫も凝らされている。訪れるオーディオ業界関係者も音のよさに驚くという(生方邸)

大型ディスプレイ採用のシアター兼用ルーム。ルームチューニングとして壁面一杯に反射と吸音のパネルを敷き詰め、ポイントに吸音素材を配置している。YG Acousticsのスピーカーシステム「CARMEL」とChord Electronicsのプリメインアンプ「Ultima Integrated」の組み合わせは絶妙で、筏氏のチョイス。フォノEQもあえてこだわり、GOLD NOTEを選んでいる(福井Y邸)

写真に多数写っている往年の銘機の多くがメーカー修理不能となり、修理を受け付けたのがきっかけのオーナー宅。10回ほどのメンテを乗り越え未だに稼働しており、現在では新品もオーディオスペースコアから購入しているという(横浜S邸)

お問い合わせ先

Placeholder Image

オーディオスペースコア

福井市新保1 - 808クレストデュオ1F
TEL:0776-52-2952
営業時間: 11時00分 – 12時30分/14時00 – 19時00分(日曜は18時00分まで)
定休日:水曜日、木曜日

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