NEXT、アート感覚の空間提案力が光るホームシアターショップ。文化的イベントでさらに輪を拡げる
愛知県・名古屋にあるホームシアター/オーディオショップNEXT(ネクスト)は、1988年設立、現在の場所にショールームを移転してから12年になる老舗。ハイクオリティな音と映像の環境から、照明コントロール、インテリアコーディネートに至るまで、上質なライフスタイルをトータルに提案するショップとして独自のブランドを築いている。今回は、その秘訣を代表の青山浩久氏に伺った。
“空間全体の美しさ” をつくる提案が目を惹く
「NEXTは、空間全体の美しさをお客さまに感じていただきたいんです」とは、代表の青山浩久氏。もともとは熱心なホームシアターユーザーだったところからNEXTに入り、NEXT名古屋の代表となって5年になる。
NEXTは名古屋地区でもデザインに優れたハイエンド製品の取り扱いが目を惹くお店として知られている。理由としては、数あるホームシアター/オーディオショップ群にあって、住宅や商業施設の設計事務所とつながりのある案件が多く、住宅設備の中でもホームエンターテインメントを充実させたいという “アート志向” のオーナーの支持を受けていることにありそうだ。
もっとも製造業の町・名古屋とあって、価格と価値が見合うかどうかの判断が厳しいお客さんが多いのは事実。本当に必要性がある、と納得した上で導入されるという。最近では30 - 40代の比較的若いお客さんほど、シンプルかつコンパクトでありながら、スマートで高品位なものを好む傾向があるとも。
「弊社は元来ソニーショップなので、テレビも取り扱っています。しかしお客さまとお話ししていると、テレビは要らないという方が多いんです。以前は、リビングに大型テレビ、寝室など個室にも小型テレビを置くのが贅沢の象徴とされましたが、いま若い方はとくにタブレット視聴が中心。地上波離れが進んでいて、映画を観るならプロジェクターの大画面で、サウンドシステムも大袈裟な機械ではなくシンプルながらアートを感じさせる上質なものを好まれます」(青山氏)
そんな傾向を反映し、NEXTはコンパクトでシンプルなLINNのネットワークオーディオシステム “EXAKT” や、ブランクーシ『空間の鳥』をモチーフにしたKEFのスピーカーシステム “Bladeシリーズ”、壁掛けでも意匠に優れたArtcousticのスピーカーシステムなどをセレクトして展示している。
トレンドも採り入れた独自のコンセプトを発信し続ける
NEXTの数々の提案は、この場所に12年間構えるショールームにも存分に込められている。とくにコロナ禍以降、音と映像を実際に体感できる場所は少なくなったが、NEXTはトレンドに合わせてたびたびリフォームを敢行し、独自に練ったコンセプトを発信するための拠点として活用している。
近年熱心に取り組んでいるのは、イベントの開催。オーディオビジュアル機器の製品試聴というよりも、文化的な内容題目が主体になっている。
最新の短編映画を上映して出演女優を招いたり、ゲストを招いてそれぞれテーマを題した講演イベントを開催したり。24年11月にはジャズ喫茶バリレラのオーナーでYouTube登録者数1万人越えのYuji Sano氏による講演「映画音楽とジャズ」、25年1月にはクラシック愛が高じてアリアCD店主となった解説者・松本大輔氏を講師に「ベートーヴェン、その目覚めのとき」と題したクラシック愛好家に向けたイベントを開催しした。
「満席でキャンセル待ちになるほど盛況でした。こうした『名演を聴く/観る』といったイベントには、はじめてご来店になるお客さま、とくに女性の方からも気兼ねなく参加できると好評です。音楽や映像の作品を愛する方々にお集まりいただくことで、映像とオーディオにも親しんでいただくいい機会になります」(青山氏)
「よいものはよい」と評価してくれるお客さんが集う場として快適なショールームを開放し、地道な啓蒙活動に繋げているのだ。次に、そのショールームを順に紹介する。
Zeroルーム・等身大の映像と包まれる音場
ショールームの中核を成すのが、等身大のリアリティあふれる映像を提供する「Zeroルーム」。床から天井まで映像が視野角いっぱいに広がり、あたかも実際にその場にいるかのように、オーケストラを鑑賞したり、スポーツを観戦したり、世界中の風景を愉しむことができる。
映像の両サイドに置かれたスピーカーが無指向性のGERMAN PHYSIKS「HRS-130」であるため、音場は泣き別れることなく包囲感が抜群。リアにArtcousticの2基を加えた4.0ch構成にもかかわらず、試聴したお客さんからは「天井にスピーカーはないようだけれど、なぜ天井から音が聞こえるの?ウーファーはどこにあるの?」と尋ねられるそう。
「GERMAN PHYSIKSはスピーカーから音が出ている感じがなく、作品そのものに没頭できるんです」と青山氏。もちろんトップスピーカーを含めた立体音場を希望されるお客さんにも対応できるというが、このZeroルームでは、フロントスピーカーに重きを置いたサラウンド再生のよさを再確認できる。
ショールームを訪れるお客さんには、普段から劇場でのコンサートに足を運ぶ音楽ファンも多いとのこと。青山氏は取材当日もApple TVでベルリンフィルchを聴かせてくれ、ホールトーンを堪能させてくれた。また80年代アイドル好きの私のために、中森明菜のYouTubeチャンネル『北ウイング』を再生してくれ、そのクオリティはYouTubeとは思えないほどで舌を巻かされた。
Black Room・唯一無二の「360 EXAKT」試聴室
Zeroルームの左奥には、実は隠し扉がある。開くと、忍者屋敷のように暗黒のBlack Roomが登場するのだ。茶室に誘われるように頭を低くして潜り込むと、そこはLINNのハイエンドスピーカー「360 EXAKT」を中心としたオーディオルームとなっている。
まるでプライベートジェットで移動しているかのような耳がキンとするほどの閉塞感。音響的には極めてデッドな空間で、これほどダイレクトに360 EXAKTのサウンドが聴ける場所は他にないだろう。
「こんな狭い空間で爆音にして聴く。一般的な空間なら低音が飽和してしまうでしょうが『SPACE OPTIMIZATION+』で低音がコントロールできるLINNの360 EXAKTだからこそできる業なんです。この音をお聴きになって、否定するお客さまは皆無です」


音楽配信サービスQobuzで聴くジャズボーカルは、マッシブなウッドベースと羊羹のように濃密な女声。ジョナサン・アイブがデザインしたレコードプレーヤー「LP12-50」で聴くマイケル・ジャクソン『BAD』は40年前の曲とは思えぬほど生々しいこと!
空気まで快適なエンターテインメント空間へ
そもそも音は空気の振動。そして「ホームシアターは作品を鑑賞している最中、その空間に縛られるので、空気は非常に大切です」という青山氏。ホームシアター製品以外にも、心身ともに健やかに暮らすための生活環境づくりに資する製品を取り扱っている。
放射と自然対流で空気を汚さず冷暖房するルーバー状の空調設備「PS HR-C」、除菌アロマ「A2 Care」、水素吸入器など、いいと思ったものは積極的に取り入れる姿勢にはとても感銘を受けた。
NEXTはオーディオ機器そのものよりも、どこにもない空間提案に基づくライフスタイルを提案してくれる。なんだか高そう‥などと物怖じせず、ぜひ足を運んでみてほしい。「近々、また新しいことを始めようと思っているんです。期待していてください」と青山氏も背中を押してくれた。
NEXTの最新実例。隠すのではなく飾る、空間表現力に注目
お問い合わせ先

NEXT(ネクスト)
場所:愛知県名古屋市千種区向陽1-11-14池下ホームズ1F
TEL:052-757-3355
営業時間:10時00分 – 18時00分(予約制)
定休日:火曜日、水曜日
