“引き算の美学”、エソテリックの真髄。A級パワーアンプ「S-05XE」、魅惑の音質を聴く
ESOTERIC(エソテリック)の「S-05XE」は、2022年発表の「S-05」の後継機となるA級ステレオパワーアンプである。シンプルかつストレートな回路設計思想に、新設計の完全シンメトリー・バランス入力バッファーアンプや大容量トロイダルコアトランスなど、先端の新技術が投入された注目モデルである。
「引き算の美学」が生み出したシンプルな回路構成
いつ見ても美しいラウンドカーブを湛えたエソテリックのモデルたち。どのシリーズにもドイツのバウハウス・アートを彷彿とさせるデザインを纏っている。
その同社から進化を遂げたA級ステレオパワーアンプ、S-05XEが登場。出力は、30W/8Ω(A級動作時)、60W/4Ω、120W(2台によるBTLモード)である。
フロントやサイドはシンプルなフラットデザインだが、天板中央には精緻なハニカム状放熱口があり、両サイドのメッシュの放熱口とともに高級感を醸し出している。
注目の技術は、A級本来の持ち味である豊かな倍音再現性をさらに高めるため、シンプル&ストレートな回路を構成。内部インピーダンス低減により、自在なスピーカー制御を実現したことだ。
それは、高度なエンジニアリングによる「引き算の美学」とのこと。実にいいワードだ。
その内部には、各部が整然とレイアウトされており、魅力的。これぞ、ハイエンドなのである。特徴の一つは、伝送距離を最短にしたピュアな設計である。位相補償回路もシンプルな1ポールとし、出力段のコイルレス化も実現。
まず入力アンプを詳しく説明しよう。
今回は、完全シンメトリー・バランス入力バッファーアンプを投入。もちろんこの前段には、電流・電圧変換部があり、電流伝送であるES-LINK Analog入力に対応する。その目的は、交流の音楽信号を完全なバランス信号に変換し、コモンモード・ノイズを除去することだ。その信号をパワーアンプ部(電圧増幅段、電力増幅段)に送り込むのである。
特に本機では、バランス回路の正/負、左右回路をシンメトリーに配置し動作の正確性を高め、電源の平滑回路も左右独立とした。
全ての切り替えスイッチにも、固有音のないMOS FETスイッチを採用。これは、静寂な音や音の透明感、そして広い空間描写性に貢献するのである。高い音質化に徹底し、本体制御回路もフォトカプラー素子でアイソレート。
電圧増幅段を配置した出力段は、大容量のバイポーラ・トランジスターによる3パラレル・プッシュプル構成である。
A級アンプは、発熱量が大きく、温度の安定化が音質に大きく影響するため、トランジスターをヒートシンクの下部、一列に配置(底板方向)。これにより電源投入直後であっても素早くアイドリング電流が安定し、最高のパフォーマンスが実現できるのである。全回路の温度管理も徹底している。
もう一つの特徴は、前述のとおり、スピーカー制動力を最大限に高めるため、内部回路の低インピーダンス化を実現したことだ。
高音質部品を採用するほか、基板パターンに、105μmの銅箔を採用。極太ゲージのケーブルは接触抵抗の低いボルト締めであり、出力段の8式のバスバーは1mm厚のOFC製。スピーカー端子直前には、機械式接点をもたないMOS FETスイッチも採用した。
電源部もアップグレードされ、漏洩磁束の少ない瞬発力の高い、ケースを排除した1000VAの大型リング・トロイダルトランスを搭載。10000μFのカスタム・フィルターコンデンサーを4本も採用。デュアルモノ、パラレル構成とし高音質ハイスピード電源を構成している。
芳醇な倍音空間を3D的に描写する
その音質は直熱三極管300Bアンプを彷彿とさせるほど、倍音が豊潤であり、弱音に深みやエレガントさを感じさせる。
音源が内包する空間を3D的に描写することも魅力。レンジの広いジャズやクラシックを再生するとスピーカーを朗々と鳴らし切り、ウーファーを引き締め、低音がリニアに伸びてくる。
最新のネットワークDACプリアンプ「N-05XE」ともベストマッチであり、ケーブル抵抗などの影響を受けないES-LINK Analog接続では、ベールを一枚も二枚も剥いだ、鮮度の高い、さらなる高解像度再生を実現。
音楽の躍動を引き立て、その存在がマッシブ。個人的には、広く厚みのある天然木ボードの上に、彫刻のように設置したくなる。長く愛用できる佇まいがある。
(提供:ティアック)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.200』からの転載です


