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連載「遠藤義人の全国のインストーラーを訪ねて」

住宅メーカーとコラボの元祖・ダイナミックスカスタマイズは “毎日楽しい家” をつくるホームシアター伝道師

公開日 2025/08/21 06:30 遠藤義人
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九州には、ハウスメーカーとコラボレーションして新築住宅にホームシアターを導入してきた元祖がいる。熊本にあるインストールショップ・ダイナミックスカスタマイズの小山(おやま)信一郎氏だ。どうしてそういうビジネスモデルに行き着いたのか、郊外の新興住宅地にある光の森店に伺い話を聞いた。

ダイナミックスカスタマイズ インストーラーの小山信一郎氏

地元企業と連携してシアターの楽しさを伝え続ける

わたしが小山さんに会ったのはそれこそ15年以上前になろうか。高級外車を乗り回す代わりに家で映画を独り占めする “お父さんの趣味” から居住空間において家族みんなで大画面を囲む “リビングシアター” へ、ホームシアターの軸足がようやく移行してきた頃だ。ホームシアターのいい音と大画面は、パーソナルなモノ弄りの趣味から「日々の暮らしを豊かにする」ライフスタイル志向の人のための提案となった。

その感覚を早くから抱き、地元のハウスメーカーと連携する活動を長らく推し進めてきたのが、小山信一郎氏(以下、小山氏)だ。

「そもそも、ホームシアターは家がないとつくれませんから『ホームシアターをウリにする家』をお薦めすることを考えます。新築住宅をきっかけに導入されるお客さまは、オーディオ・ビジュアルのマニアではない一般の方ですから、難しい用語で機械の細かいことをご説明しても、まったく意味がわからなくて当たり前なんです。その傾向は、スマートフォン時代のいま、さらに強くなっていると感じます。どうやったらわかりやすくお伝えできるのかを日々考えています」(小山氏)

大規模なコンペティション会場やハウスメーカーの住宅展示場を使ってイベントを開催する場合も、プロジェクターやアンプといった機器の 「販売会」 ではなく、ホームシアターの楽しさを啓蒙する 「展示会」 に。上映する出し物も、映画作品の見所を吟味するものではなく、家族みんなが楽しめるアニメーションや音楽ライブが中心。映画なんかまったく上映しないこともざらだという。

わたしもその取り組みに深く共感し、インテリアメーカーさんらのご協力を仰いでラグジュアリーにくつろいで楽しんでいただける家具を展示したり、水戸岡鋭二氏の手がけた豪華寝台列車「ななつぼし」のポスターを飾ったりしてお手伝いした。グランメッセ熊本でのイベント前日には東日本大震災が起こったり、息子の拓郎さんが「家業を継ぐ」と宣言した場に居合わせたり、小山さんとは数々の思い出もある。

長嶺本店は息子の拓郎氏が守っている

平成25年に開催されたFMKオーディオ&スマートハイムの模様
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音楽ライブや視聴デモも実施

自分のスタジオをつくるためだった! 新店舗「光の森店」

その、モノ売りではなく “ホームシアターの伝道師” たらんとする姿勢は、いまでも変わらない。「長嶺本店」と施工の現場は二2代目の息子・拓郎氏に委ね、信一郎氏自身は4年前につくった「光の森店」にひとりで常駐する。

この光の森店は、コロナ禍でイベントが減った2021年6月、ハウスメーカーの元営業マンでバンド仲間でもある甲斐勇一氏が不動産会社SHELL(シェル)を立ち上げるのにともない、共同してオープンした2号店だ。折しも、豊富な水を求めていた半導体工場TSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)が誘致され、その関連会社や住宅の増加も見込まれるようになった時機だ。

SHELLの待合にもミラーテレビINTELUXやDEVIALET、KEFなどのオーディオが配置

長嶺本店にもシアタールームはあるが、光の森店はそれよりグンと広く20畳。ビクターのハイエンド・8Kプロジェクター「DLA-V90R」の映像を映すスクリーンは、150型(16:9)と130型(シネスコ)の本格派である。

サウンドもAuro-3Dにも対応する5.1.6ch構成をマランツのAVアンプ「CINEMA 30」で再生。フロントスピーカーはJBL「Project K2 S9900」で、ドライブするアンプもマークレビンソンの「No5805」(パススルー)とマニアックだが、色彩豊かな壁に掛けられた無数の色紙や写真、節々に置かれたインテリアグッズが大人の趣味部屋といった趣で、ダークなお籠もり感は微塵もない。

このお店に来るお客様さんは、特定の機材の性能をチェックしに来るのではなく、これから作る家で毎日をどう楽しもうかというヒントを求めて来場し、ホームシアターという文化を体験しに来るのだ。

光の森店のシアタールーム。サラウンドはマークレビンソンをフロントLRに採用した5.1.6ch構成

視聴位置方向。色彩豊かな大人の趣味部屋といった趣

そして背後には、ご自身が叩くドラムセットが鎮座。一段高いステージ上に配置されている。「当初より、自分のスタジオをつくろうと思って光の森店をオープンしました。ドラムの音が漏れない防音設計を紹介するという趣旨もあり、ご来場のお客さまにはその効果も存分にご体験いただけます」(小山氏)

またこの店は、一般のお客さんだけでなく、住宅メーカーの営業や設計士、インテリアコーディネーターを招いた勉強の会場にもなっている。

「私がやっているのは、ホームシアターの布教活動のみです。やっておけば、必ずあとからお客さんは来ますもの。最初からあきらめて何もやらなければ、何も起こらない。とりあえずやってみよう、から何事もスタートです」と小山氏。こうしたノリは、長年のバンドセッションから生まれたに違いない。

視聴位置のさらに後方にドラムセットが。「小山信一郎」の提灯が目を惹く

取材の日も夜は仲間のバンドで叩いて場を盛り上げていた

時代は配信に。還暦もとうに過ぎたのに「以前より学ぶことが多い」

映像も音楽もディスクから配信の時代となったが、これまで以上に小山さんはお客さんから新鮮な感動を受け取るのだという。

「ひととおりデモンストレーションをしたあと、お客さまに好きな作品や曲をかけてもらうのがいま一番の楽しみです。いまのトレンドがわかるんですよ。驚くことに、10代の子らがぼくらの世代の曲をかけたりする。どうしてだろうと尋ねると、最近のアニメーションに使われていたりとか、意外な事実がわかるんです。お客さまから学ぶことは、いまでもとても多いですよ」(小山氏)

映画も音楽もその人を表す。それらを共有することで、世代を超えた繋がりが生まれる。そもそも映画館って、赤の他人同士がひとつの空間に同じ時間閉じ込められ、笑って泣いて感動を共有するものだった。

それは配信の時代になっても変わらない。気の置けない家族や仲間とリアルな空間で大画面と食を囲み、好きな映画や音楽、スポーツを特等席でいつでも楽しめる。こんな素敵な趣味って、ほかにあるだろうか?

ダイナミックカスタマイズ最新実例

140型のサウンドスクリーンを採用、サラウンドは5.1.6ch構成のオールJBLで揃えた専用ルーム

部屋は大建工業のプレミアム防音仕様となっている

題して「天空のシアター」。リビング吹き抜け部にスクリーンを設置

シアター観賞時にはフェンスが倒れる仕組み

お問い合わせ先

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SHELL(シェル)

場所:熊本県熊本市北区武蔵ヶ丘8-8-40 Amitie 1F
TEL:096-348-1200
営業時間:10時00分 – 18時00分
定休日:水曜日

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