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公開日 2015/02/05 17:10

黒船到来。 映像配信の巨人「Netflix」日本参入で何が変わる?

日本ユーザーにもたらす「3つの恩恵」とは
折原一也
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VODの巨人「Netflix」、ついに日本でもサービス開始へ

北米・欧州を席捲する映像配信業界の巨人「Netflix」が、ついに日本でのサービス開始を発表した(関連ニュース)。米国から上陸する映像配信の黒船としては「Hulu」に次ぐ第二弾になるが、全世界で5,700万人以上の契約者を擁するNo.1サービスが日本で事業を開始するインパクトは絶大だ。

米国・欧州の家電ショーの展示を見ていると、「映像配信」を取り巻く環境は、日本国内の事情とは大きく異なる。2015 International CESのスマートTVの記事でもレポートした通り(関連記事)、米国のテレビのトレンドはNetflixの存在抜きに語ることはできない。いわゆる「映像配信」というサービス全体の括りのトレンドではなく、Netflixという1社の名前、1社のサービスで語り尽くせるほど、テレビ/スマートフォン/タブレット向けの映像配信サービスとして存在感を持っているのだ。

今年のCESの各社プレスカンファレンスでも大々的に紹介されていたNetflix

映像配信サービスでも別格の扱いを受けている

無料の地上波放送が王様である日本国内の感覚では、映像配信最大手の意味合いにピンと来ない人もいるかも知れないが、米国はもともと家庭のケーブルテレビ契約率が8割近いCATV契約大国だ。有料チャンネルの契約が文化として根付いている中で、レンタルビデオサービスからネット配信に移行したNetflixは、ドラマや映画を中心とした月額定額見放題のサービスを展開(現在の料金は月額$7.99)。CATVや衛星放送の専門チャンネルを契約していた視聴者を、「テレビ放送と同時提供/見たいときにいつでもすぐ見られる/スマホやタブレットでも視聴可能」という利便性を武器として獲得してきた。今や米国では、Netflixに加入し、テレビやスマホで利用するのは当たり前という風潮になりつつあるのだ。

米国の映像配信サービスは他にもあるのでは、という声もあるかもしれないが、テレビにおける映像配信サービスの利用状況を取材すると、米国・欧州ともにNetflixがユーザーの利用率で圧倒的な“1強”。次いで「YouTube」「Amazon Instant Video」という序列は、どこに取材をしても、また調査結果を見ても同様だ。無料のYouTubeよりもNetFlixの利用率が高いというところからも、Netflixは日本の感覚でいう「映像配信」サービスというより、テレビ放送のチャンネルの一部に近いイメージで定着していることが伺い知れるだろう。

米国ではNetflixが1強で、その後をYouTube、Amazon Instant Video、Video Unlimitedなどが追いかけるかたち

ちなみに、日本では米国発の映像配信というと「Hulu」が有名だが(現在日本国内向け事業は日本テレビが担当)、米国においてHuluは4位以下グループという扱い。「MLB.TV」「BBC Sport」などスポーツ専門チャンネルや、総合配信サービスでは「Vudu」「Maxdome」などと同列で、現在は存在感を示せないでいる。

欧州についても基本的にはNetflixがテレビからのアクセスで見ると5割以上の利用率を持つ1強。それを「YouTube」「Amazon Instant Video」が追いかけるという構図は変わらない(関連記事)。

昨年9月のIFA(ドイツ・ベルリンで開催)でもデモが行われていた

Netflixの日本市場参入がもたらす恩恵とは?

Netflixの日本市場の参入はどんな恩恵をもたらすのか。筆者は3つの影響があると考えている。

1つは、テレビにおける映像配信サービスのさらなる拡大だ。

日本で最も成功しているSVODサービスは、NTTドコモが運営しているもの。「dビデオ」は437万契約、「dアニメストア」は152万契約で、合計約590万契約となっている(1月13日のリリース時点)。ただし、通信事業者であるNTTドコモ提供のサービスという事もあって、テレビやPVでも視聴できるにも関わらず、スマホ/タブレット主体という色が拭えない。例えばテレビ向けの視聴アプリなどは提供されていない。その点、Netflixはテレビ、スマートフォン、タブレットのマルチデバイスを徹底したサービスになる事が期待できる。

また「Android TV」をはじめとしたプラットフォームでも、Netflixのようにアプリを中心としてテレビとスマホ・タブレットを連携させる動きが既に始まっている(関連記事)。既に海外で実績のあるアプリの日本版となれば、開始直後から完成度の高いものが導入されるだろう。

NetflixはAndroid TVなどで提供されるスマホ・タブレット連携にも優れている

2つ目はコンテンツ提供だ。米国におけるNetflixのサービス形態はSVOD(見放題型)であることは既に説明した通りだが、Netflixの特徴は、旧作のみならず、日本でいう「見逃し配信」のような形で新作の配信も手がけている実績があるということ。

現在は「Netflixドラマ」として、自社で番組制作を手がける放送局のような領域にも進出。2013年にNetflixが自社作品として制作した『House of Cards』(邦題:『ハウス・オブ・カード 野望の階段』)がエミー賞受賞という快挙も成し遂げた。日本でコンテンツ制作に参入するかどうかは不透明だが、米国ではNetflixのドラマを観るためにNetflixに加入するというサイクルも生まれている。

3つ目はクオリティ面での革新だ。Netflixは米国で、昨夏より4Kクオリティの映像配信をスタートし、Netflixドラマも4Kによる制作を実施。日本でも4Kコンテンツ配信を行うとアナウンスしている。ちなみに米国における4K配信対応テレビはパナソニック、ソニー、東芝、シャープと日本メーカーも名を連ねているので、Netflixのサービスが米国と同じプラットフォームでスタートすれば、すぐにでも4K配信レディになる可能性が大だ。


米国では昨年から4K配信も開始開始した
さらににNetflixは、4Kの次の映像トレンドとして注目を集めている「HDR」(関連記事)への映像配信を2015年中にスタートさせることを既に発表している。家庭に届けられるHDRコンテンツの第一弾が、Netflixになる可能性もある。

日本のテレビに映像配信のトレンドを根付かせることができるのか。Netflixの動向を今後も追いかけていきたい。


(折原一也)

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