テレビのスマート化が加速

<IFA>折原一也のスマートテレビまとめ − スマート化で欧州でも録画文化が普及!?

折原一也
2014年09月12日
先にレポートしたように、IFA 2014の薄型テレビ関連の出展では、湾曲ディスプレイや4K(UHD)が目立っていた。しかしその一方で、“スマートテレビ”に各社が一定のスペースを割き、デモを行っていたことも印象に残った。本記事では、欧州におけるスマートテレビ機能の普及という観点から展示内容を紹介していきたい。

各社がスマートテレビのデモも実施

サムスンによるスマートテレビの「SmartHUB」


LGによる「WebOS」をベースとしたスマートテレビのデモ

スマートテレビの機能で、いま最も熱い視線が注がれているのが4K解像度でのVODやネットストリーミングだ。この9月の時点では、欧州で4K配信はまだ開始されていないが、今年10月にはNetflixが4Kでのストリーミングサービスを英国で開始する予定。まさに離陸直前といった状況にある。

最も多くのコンテンツデモを提供していたサムスンのブースでは、Netflix、Amazon Instant Video、さらにドイツのMaxdome、イタリアのChili、イギリスとスペインでサービスを展開するWuaki.tv、そして20世紀フォックス、パラマウントによるコンテンツが上映されていた。

欧州のVODサービスでは、米国と同じく月額10ユーロ程度でのサブスクリプション型の普及が進んでおり、なかでもNexflixは、時としてYouTubeを上回る5割以上の利用率を誇るなど“1強” 状態となっている。ネット配信最大手が4Kサービスを開始することで、欧州での4Kビデオ配信がこれから少しずつ身近になっていくことだろう。

テレビ側の対応としては、東芝、パナソニックら各社が薄型テレビにH.265/HEVCデコーダーを冬モデルから搭載するようになっており、4K配信を受け入れる準備が整いつつある。あとはサービス事業者側の条件が整えば、そのまま4Kストリーミングを利用できる。いわば「4Kストリーミングレディ」な状態なのである。

4K動画配信の最前線はNetflixとAmazonの2社


ソニーのBRAVIAによるAmazon InstantVideoのデモ

ドイツのVOD事業者Maxdomeのデモ


テレビメーカーもH.265/HEVC対応を進めている

他社と比べてユニークな試みを行っているのがサムスンだ。旧機種も含めた同社の4Kテレビに向けて「UHD Evolution Kit」という外付けボックスを提供。HDMIの4K/60p対応、HEVCデコーダー、HDCP 2.2対応、MHL 3.0サポートを可能とするアップグレード・アダプタを別途用意することで、すでに発売済みの4Kテレビについても4K配信や4K入力対応可能にする手段を提供する。4Kは著作権保護や放送フォーマットなど未確定要素が多かっただけに、先行して4Kテレビを購入していたユーザーに対してもサポートしていく姿勢に好感が持てる。

なお、サムスンは他にもコンテンツ保護技術「SCSA」を利用した500GBのダウンロード用HDDも用意。これは20世紀FOXとの提携によって提供されているもので、4K配信の新たな選択肢となる。

サムスンによる「UHD Evolution Kit」

サムスンによる「UHD Donwload Service」

■欧州でも録画機能がブレイクの兆しあり

顔認識と学習機能によって、テレビをパーソナライズ化できるというのも各社スマートテレビの流れだ。各社ともクラウドサービスと連携し、視聴履歴からユーザーの好みを学習して行うオススメ番組を提案する、レコメンド機能を展開しようとしている。欧州では放送やVODの視聴履歴からお薦めの映画をピックアップする形がほとんどだったが、新しい動きも始まっている。

そして、スマートテレビをもっと大きな括りでみると、”テレビ録画”が欧州にも普及し始めているという事実もひとつのポイントだ。

日本人からすると「今さら?」という声が挙がるかもしれないが、かつては「日本以外には録画文化がない」と言われたほど、欧州でのテレビ録画はマイナーなものだったのだ。各社の欧州向けテレビも、従来から機能としては外付けHDD録画に対応していたり、PVR(外付けのデジタル放送チューナー)の内蔵HDDが一部で録画に使われていたりはしたが、テレビ録画は一般的ではなかった。しかし、ここにきてようやく、日本独自の文化と言われていた録画文化が受け入れられつつある。

積極的な展示をしていたのが、日本では「ざんまいプレイ」やクラウドサービス「TimeOn」を展開する東芝だ。クラウドと連携し過去の視聴履歴学習による自動録画機能を組み合わせた機能のデモなどを始めたところ、「欧州各国のメディアから取材が相次ぐほど好評だった」(REGZA海外マーケティング担当・西岡氏)という。

同社では、録画文化の入り口として自動録画をアピールしているが、実際にユーザー宅に貸し出したサンプルでは、全録画番組の半分ほどが手動で行われていたという。ユーザー自身が能動的に録画するスタイルも、今後欧州で定着する可能性があるかもしれない。

欧州ではペイTVが中心で、リピート放送が見やすいため録画は不要ともかつては言われていた。一方で見たい番組をローカルに保存しておき、いつでも見られる利点も認知されつつあるようだ。なお、現状では欧州向けテレビはシングルチューナー機のみのため、ダブルチューナー機の登場など、さらなる普及に向けてテレビ側の改善の余地もある。

東芝は欧州向けのクラウド「Smart TV Cloud」を通して提供

外付けHDDによる録画番組のリスト。「AUTO」と表示されているのは自動録画による番組


手動録画をするためのEPG

欧州向けに録画・再生をコントロールするアプリも提供予定

■欧州でもテレビ番組を録画する文化が普及の兆し!?

同じく録画機器の好調を伝えるのがパナソニックだ。「ドイツの“メディアマルク”という大手量販店が独自に企画している店頭施策では、画質に次いでUSB-HDD録画が顧客に響いている」(VIERA欧州担当・浦川氏)とのことで、同社製テレビでも録画機能が認知され始めているようだ。

欧州においてテレビはデザイン性が重視される傾向にあり、薄型化のために録画用HDDを内蔵するようなテレビは受け入れられにくい。だが、テレビ録画用のUSB-HDDもドイツ、イギリスを中心として欧州各国できちんと売れるようになっている。

IFA会場で行われていたVIERAのデモでは、録画した番組、および放送中番組を外出先からスマートフォンで視聴できる「TV ANYWHERE」の機能を紹介。スマホ普及率が高く、日本以上に旅行を楽しむ人が多い欧州人に好評だという。

パナソニックは、PVRで他社に先駆けてダブルチューナー・モデルを展開し、自動録画対応など日本のDIGAに近い機能性を持たせている。PVRについては、すでに英国とドイツを中心にビジネスとして成立する規模となっており、進出は無事進んでいるようだ。

欧州版のリモート視聴サービス「TV ANYWHERE」

■欧州独自の衛星放送、見逃し視聴への対応も

パナソニックのブースには、欧州市場ならではの機能として、衛星によるペイTVとスマート機能を連携させた展示もいくつか披露されていた。

そのひとつが、VIERAが対応する「SAT-IP」。「SAT」(ドイツの衛星有料放送)をホームネットワーク内の専用STBで受信し、それをIP経由で連携してVIERAで視聴できるというものだ。「ドイツはTV好きな人が多く、裏番組録画ができるツインチューナーが伸びている」(VIERA欧州担当・浦川氏)とのことで、国ごとの状況に合わせた製品展開が功を奏しているようだ。

ドイツで人気の「SAT-IP」に対応

サムスンも有料衛星放送への対応をアピールしていた

もうひとつは、VIERA向けに提供している「freetime」という仕組み。これは、英国で提供されている、見逃し番組の無料配信「キャッチアップTV」の視聴に対応したものだ。英国ではBBCをはじめとした各チャンネルがキャッチアップTVを展開しており、テレビ放送後に1週間、ネットで無料見逃し視聴を提供している。

「freetime」は、それをVIERA内蔵機能としてダイレクトに視聴できる仕組みだ。実はこのキャッチアップTVはこれまで、PCでの視聴以外は一部メーカーが独占契約をしていた。そのためVIERAで提供できずにいたものだが、「freetime」という各社が参加できるプラットフォームを通して提供することで、VIERAが他社に先駆けて全6局の視聴機能を提供する。

英国の見逃しサービスと連携する「Freetime」

トルコのVERSELがデモしていた「BBC iPlayer」

ひと口に“スマートTV”と言っても、4K配信、クラウド連携を利用したテレビ録画、そして放送事情に合わせたサービスまで数多い。スマートTVの普及によって、欧州のように各地域ごとにニーズが異なる市場で、それぞれに最適化した製品作りをしやすくなったという点にも、テレビの進歩が現れていると言えるだろう。

関連記事