PR 公開日 2025/07/01 06:30

麻倉怜士もノックアウト!音源の持つ音楽性を色濃く引き出す“オーディオ専用ルーター”「DATA ISO BOX」徹底レビュー

無線アクセスポイント「OPT AP」も合わせてチェック!

オーディオ処理のみに特化させる“ネットワーク・セパレーター”

ハイレゾストリーミングへの音質対策はこれまではネットワーク経由、もしくは電源経由、外乱、内乱……などから発生するノイズをいかに減少させるかが主眼だった。そうしたオーディオ用のハブとケーブル、そして電源……など、従来からの高音質への視点で欠けていたのが、ルーターだった。そこで、最新の高音質化の武器として、いま大いに注目を集め始めているのが、“オーディオ用ルーター”だ。その代表がトップウイングが設計、開発した「DATA ISO BOX」。

TOP WINGのオーディオ専用ルーター「DATA ISO BOX」とアクセスポイント「OPT AP」を麻倉怜士氏の自宅に持ち込みテスト!

ルーターは複数のネット機器をインターネットに接続するための中継機器。契約に基づき、プロバイダーとインターネット回線を接続し、室内の各機器にIPアドレスを割り当て、ネットからのデータパケットを適切な機器に転送、逆に機器からネットへの橋渡しを行うのが一般のルーターだ。これまではルーターから、こうした措置が入った信号を、オーディオ用のハブやネットワーク機器に、そのまま入力していた。

「それが音質的に大きな問題を引き起こしているのです」と喝破するのは、開発者のトップウイング社長の菅沼洋介氏だ。「ネットワーク機器には、ルーターからさまざまなデータがやって来ます。だからとにかく一度は受信してみて、この信号は自身が対象かそうでないかを判別しなければなりません。その過程で一定の処理が発生し、CPU負荷が高まり、本来は音処理に使われるべきリソースが不要事に割かれるのです。DATA ISO BOXは、IoT家電機器による“呼びかけ”(特定の宛先にデータを送信)、通知、探索、認証……などのオーディオに余計な動作や信号をシャットアウトし、ハブには送りません。ハブ以降のネットワーク機器は邪魔な信号が来ないので、必要なオーディオ信号の処理に集中できるのです」。

トップウイングの社長であり、製品開発を一手に引き受ける菅沼洋介氏(左)と麻倉怜士氏(右)

なるほど。とても分かりやすい解説だ。となると、これは「ルーター」と言ってはミスリードだろう。ルーターは前述のようにたくさんの仕事をさばくネットワークの司令塔。DATA ISO BOXはそこから、オーディオに必要な信号のみを抽出する役割を持つ。正しくは「ルーター」ではなく、ネットワーク・セパレーターだ。

TOP WING「DATA ISO BOX」(55,000円/税込)。上の黒いボックスはひっくり返らないよう重しとして設置しているもの

「DATA ISO BOX」の背面端子。一般的なハブとの違いは、接続するポートが決まっていること。ROUTERを上流ルーターと接続、APを同社の「OPT AP」と接続するのが推奨。AUDIO1〜3をネットワークプレーヤーやサーバー等と接続する

それはともかく、普通のルーターでなくなると不便になるのが、スマホやタブレットからの操作が不可能になること。ルーターならば、Wi-Fiのアクセスポイント(発信基地)機能を内蔵しているので、同一ネットワーク内のスマホやタブレットと通信できるが、アクセスポイントなしのネットワーク・セパレーターでは、ご無体。

そこで、専用のアクセスポイント「OPT AP」も開発した。 「一般的なWi-Fiアクセスポイントと、われわれのOPT APの違いは、オーディオ用に特化したことです。なのでDATA ISO BOX+OPT APが最大限の効果を発揮します」(菅沼氏)。

無線アクセスポイントとなる「OPT AP」(33,000円/税込)。「OPT ISO BOX」とセットで購入するとセット割りで77,000円(税込)となる


「OPT AP」の背面端子。RJ-45のほか、SFPポートも搭載している

一音一音の中味が充実し、音の粒子が細かくなる

では、DATA ISO BOX+OPT APはどんな効果を聴かせてくれるのか。ファースト・インプレッションを述べると、「こんな手があったのか! と驚いた」である。

これまで私のQobuz対策は、もっぱらハブとケーブルに注がれていた。特にハブには徹底的にこだわってきた。ケーブルも多数のブランド製品を試し、数種類の組み合わせに落ち着いた。ルーターもケアしなかったわけではない。以前使っていたかなり古い無線ルーターをバッファローのWi-Fi6対応の最新のルーターに変更したところ、音質に著効があったという経験をしていたが、それ以上のことはなかった。そこに忽然と来訪したのが、DATA ISO BOX+OPT APであった。

では、いよいよ試聴に入ろう。基本の経路は、NTTのONU(光回線終端装置)→バッファローWi-Fi6対応ルーター→エディスクリエーション「FIBER BOX 3 JAPAN EXCLUSIVE MODEL」+「SILENT SWITCH OCXO 2 JAPAN EXCLUSIVE MODEL」→イタリアのVolumioのトランスポート「Rivo+」(Qobuz Connectで制御)→Meridian 「ULTRA DAC」という系だ。以降、プリアンプはオクターブ「ジュビリープリ」、メインがZAIKA「845PP」、スピーカーがJBL「K2 S9500」と続く。

メインスピーカーはJBLの「K2 S9500」

ここでバッファロールーターと エディスクリエーションのハブの間に、DATA ISO BOX+OPT APを介すと、どう音が変わるか。「無し」がストレート接続、「有り」が本機を介した音だ。音源はいずれもQobuzストリーミング。

 

DAコンバーターにはMERIDIANの「ULTRA DAC」を使用する

●情家みえ「チーク・トウ・チーク」

私が制作したUAレコードの情家みえ 「チーク・トウ・チーク」(アルバム『エトレーヌ』、192kHz/24bit)。編集なし、イコライジングなし、ワンテイク録音と、演奏者にはたいへん評判が悪いが、やはりジャズの生演奏のグルーヴはこれに限る。

結論から初めに述べると、「有り」と「無し」ではこれほど違うのかにノックアウトされた。具体的には透明感が圧倒的に向上し、フォーカスが格段に鋭く、音像のエッジがシャープになった。このことは冒頭のアコースティック・ベースのF→D→G→Cというピッチカート進行を聴くだけで、分かる。「無し」に比べ、一音一音の中味が充実し、そこに詰まった音の粒子が断然細かく、音階感も明瞭に、音の体積感が高密度に、音の核がリジッドになった。 

でも、もっとも刮目は情家みえのヴォーカルだ。声にキレと輪郭感とヴィヴットさが加わり、言葉のニュアンスをとても大切にしている細やかな歌い方が伝わってくる。歌詞に込めた感情が聴け、音の飛翔の速さ、音の屈託のなさ、輝度感の高さは耳の快感だ。

具体例を挙げよう。冒頭の♪Heaven, I'm in heaven And my heart beats so that I can hardly speakの「speak」は腹式的に強く、気持ちを込めて強く発声させている。ここが「無し」ではメタリックを帯びるが、「有り」では滑らかにして鋭角になった。もうひとつ情家みえの歌い方の特徴のひとつに、浮力が加わった放物線を描くフレージングがある。♪Dance with me I want my  arm about you The charm about youの「arm」「charm」の韻を踏んだ部分が、まるで弧を描くように浮上するのである。「有り」では、弧の半径が格段に大きく、浮力も強い。♪Oh, I love to climb a mountainの「mountain」の語尾の大きなヴィブラートとニュアンスの濃さも、格別だ。

山本剛のピアノも違う。響きが有機的になった。「無し」では、単音の積み重ねという雰囲気だったが、「有り」では、それらが生体的に、重層的につながった。スピードも速い。まさに鍵盤の上を指が踊っている。ベースの表情もヴィヴッド。確実に通奏低音として楽団の音を支え、同時に自身の存在も主張する。「有り」では、ベテランプレーヤーの至芸がより堪能できた。

トップウイングのルーター+アクセスポイントの効果に唸る麻倉氏

クラシックは切れ味鋭く、切り口もシャープ

●モーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」 第一楽章

ピリオドスタイルの、ガッツと躍動に溢れる元気なモーツァルト、リッカルド・ミナージ指揮、アンサンブル・レゾナンス(以下ジュピター、96kHz/24bit)。「無し」と「有り」ではこんなに音楽表現が違うのかに驚く。まず鮮鋭感がまるで違う。「無し」は模擬剣、「有り」は真剣だ。切れ味が鋭く、切り口もシャープだ。というより、切り口が不自然に波打たず、スパッと美しく切れる。それが「鮮鋭」が命のピリオド系演奏にどれほどのリアリティを与えるか。弾むスタッカート、ダイナミックなクレッシェンドとデクレシェンド、フレージングの弾力感など、本演奏の特質である個性的なアーティキュレーションがより明確に分かる。

9小節からの弦の5度の急下行は、まさに叩き付けるような衝撃だ。「有り」では弓圧の強さが分かる。逆に弦部がフレーズを悟られないような弱音で、かそけく始める繊細さ、も。このようにアーティキュレーションのDレンジが極めて大きい本演奏の面白さを、「有り」では、たいそう音楽的に聴かせた。周波数帯域が違ったのにも驚いた。「有り」では、上下に大胆に拡張。低音方向への量感に加え、高音方向の伸びも顕著だ。特に高域再現は倍音再現に効き、ピリオドの魅力全開だ。

一方で、キレが鋭くなるに止まらず、レガートに歌い上げる部分は、より滑らかになる。24小節からの木管のオクターブ上行に、たっぷりとした思いと歌いが聴け、さらにドシラソファミレドと下行にちょっと溜めるルバートがおしゃれ。それまでが弦主体でキレキレだったから、このレガートな木管フレーズには対照的に、味わいと人間味を感ずる。総休止(ゲネラルパウゼ)も凄い。80小節の一小節の四拍全部を使う総休止は、直前の勢いままに「無音の旋律」が聴こえる。100小節、歌謡的旋律に入る直前の一拍だけの総休止は、次の旋律への期待を抱かせる。その歌謡旋律も心地良い。

「無音の旋律」、総休止(ゲネラルパウゼ)

●荒井由実「中央フリーウェイ 2022MIX」

「中央フリーウェイ」はQobuzには2バージョンがある。40周年版の2019MIXとGOH HOTODAによる2022MIXだ。音質は、後者が格段に良い(96kHz/24bit)。2022MIXは音場が透明になり、各音像が締まった。音の粒子とグラテーションが緻密に、ディテールへの描写が繊細になり、音の表面の僅かな凹凸がより明瞭に感じられる。ギターソロが前面に出て、カッテングも明瞭になった。ベースの音階の輪郭もくっきりとし、キーボードサウンドに煌びやかさが加わった……というのが、2022MIX音源の特長だ。

では、「無し」と「有り」では、この基本的に優れた2022MIXを、どう聴かせるか。まず冒頭のエレクトリックベースの雄大さと、そのフォーカス感。「チーク・トゥ・チーク」の時はアコースティック・ベースだったが、ここはエレクトリック・ベース。「有り」では、その音像の内実の緻密さ、輪郭の明瞭さ、エッジのキレが特に違う。ギター・カッティングがさらに鋭い。キーボード、ベース、ギターの名人芸が冴え渡り、この曲を成立させている音楽的要素が分析的に聴けた。ストリングスの艶感も美しい。

荒井由実の鋭角的なヴォーカルが、まるで中央高速から夜空に飛び出すように、宙を舞う。中間部でヴォーカルがダブルトラックになると、さらにパワーと切り込みが増す。ここでは、どちらのトラックも明瞭にメロディ線が追え、重なりが絢爛。「無し」ではハーモニーが浅い。

「無し」と「有り」の違いは、オーディオ的な特性が向上するということに止まらず、音楽性に関する情報量が格段に増える。「チーク・トゥ・チーク」ではこの歌手ならではの微細な表情づけのこだわりがより明確に分かった。モーツァルト「ジュピター」では、まさにピリオド的アーティキュレーションが、これほど明瞭になるとは。生命感に溢れる音進行だ。荒井由実「中央フリーウェイ」では2022MIXの音の魅力が全開。

その音源の音楽性をより濃く体感させてくれるのがDATA ISO BOX+OPT APの本質であろう。

Photo by 高橋慎一

(提供:トップウイング)

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