公開日 2017/09/29 16:52

トランスローター「DARK STAR」を聴く。ブランドエントリーとなるアナログプレーヤーの実力は?

技術の粋を凝縮
■平面性と内部損失の高いアクリルに注目

TRANSROTER(トランスローター)は、ヨハン・レイカ氏が、1972年に創業を開始したドイツの老舗アナログプレーヤー・メーカである。創業以前は、ミッチェル・エンジニアリングのジョン・ミッチェル氏とともに、平面性と内部損失の高いアクリルに注目し、研究を行った。

TRANSROTOR「DARK SATR M2」¥620,000(アームレスモデルは¥400,000、各税別)

その後ミッチェル氏は、プラッターを浮かせるフローティング方式へと進み、レイカ氏は、プラッターを支えるベース部を強化したリジット型プレーヤーを開発し、このブランドを立ち上げた。このアクリルの特性を活かすために、アルミ材を脚部やプラッターに採用し、「アクリルとアルミの音響芸術」とまで言われるほどのモデルを創出している。

音を極めるためには軸受けが大切だと考え、摩擦抵抗が極小となるプラッター軸と軸受けの開発を進めた。結果として空間描写に優れた、高S/Nでダイナミックレンジの広い音質を獲得した。その優れた特性により、使用するカートリッジの音質や特性をフルに発揮することができ、レコードに内包する空間性や微細な音までも再現する。

引き締まったデザインも本機の魅力。スタビライザーもプラッターと同じ特殊高分子素材が採用されている

DARK STAR M2は、SMEの9インチストレートアームM2-9が標準装備されている。トランスローターのトーンアームTR5009も搭載可能

そして近年では、空前のアナログブームが世界的にも広がり、開発のコンセプトを変えずに、少しでもトランスローターの音に触れて欲しいとコストパフォーマンスの高い、ブラックの「DARK STAR」を登場させた。このモデルはアクリルとアルミを使わずに特殊高分子素材を使い、微細振動を減衰させる内部損失を獲得。強固な平面性も実現した。

音質も同ブランドの上位モデルを踏襲している。世界的にも高い評価を受け、日本においても注目を浴びているところである。私も音質の良さ、使いやすさ、長く愛用できることを高く評価している。50万円クラスのプレーヤーを検討する方には候補になることだろう。

特殊高分子素材による独創的な振動対策

このモデルの大きな特徴は、アクリルと同様に高い平面性と内部損失を誇る特殊高分子素材(POM樹脂と同等)を、慣性力の高い60mm厚のプラッター、30mm厚のキャビネット・ベース、3点支持の脚部、モーター・ケース、ディスク・スタビライザーに使っていることである。読者もご存知のように、プレーヤーは不要振動の影響を受けないことが大切で、すべてにこの高分子素材を使ったわけである。まったく他の素材をコンビネーションしない、独創的な振動低減の考えである。一見、マットなブラック仕上げのように思えるが、実際に間近に見ると、仕上がりの良さ、重厚さ、気品の良さを感じさせ、格好良い。ぜひ一度、専門店で間近で見て欲しい。

プラッターを外した状態。ボディはプラッターと同じ特殊高分子素材が採用されている

特殊高分子素材のプラッター(裏面)は、上級機同様の形状に加工。厚さは60mm

重厚なベース部には高精度軸受けを配置し、プラッターを載せるコマ形状のスピンドル軸がセットされる。これが高いS/Nと高精度回転のコアとなる。プラッターも十分に重量があり慣性力が高い。一見、脚部のように見える駆動モーターは独立配置され、回転による微細振動を伝えない。ベルトを駆動する大き目のプーリーも精密に仕上げられており、滑らかな回転を実現するために、強力な外づけアナログ電源も付属している。これも、このブランドのこだわりである。

軸受けは強固な真鍮製。プラッターを支える軸部はステンレスが用いられている

トーンアームは、SME「M2-9」ストレートアームを標準装備。アームベースについては、SMEタイプのみの対応となっており、長さは9インチのみをマウントすることが可能だ。マウントできるトーンアームをあえて絞ることで実に扱いやすくなっているほか、プレーヤーの水平調整は、前面の2つの脚部を回し、簡単に行えることなどにも好感を持つ。本機は同ブランドの技術の粋が、扱いやすいかたちで凝縮されているのだ。

次ページ3つのカートリッジで聴く、DARK STARのサウンド

1 2 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
製品スペックを見る
  • ジャンルADプレーヤー
  • ブランドTRANSROTOR
  • 型番DARK STAR M2
  • 価格620000
●駆動方式:ヘ?ルトト?ライフ?●フ?ラッター:特殊高分子素材60mm厚●軸受け:真鍮●モーター:外部ユニット●コントロールユニット:33 1/3、45回転切り替え、微調整可能●シャーシ:30mm厚●サイス?:約460W×190H×340Dmm(高さはSME M2-9トーンアーム搭載時)●質量:24kg●アームヘ?ース:SME 9インチ用を標準装備●その他:アームレスモデルは¥400,000/税別●取り扱い:エイ・アント?・エム(株)
クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 レコードの音楽を読み取って光るターンテーブル。オーディオテクニカ「Hotaru」一般販売スタート
2 ダイソンとPORTERがコラボした特別デザインのヘッドホンとショルダーバッグ。全世界380セット限定販売
3 LUMINの進化は終わらない。初のディスクリートDAC搭載「X2」の思想を開発担当者に訊く!
4 Spotif、2025年に最も聴かれた邦楽は「ライラック」。国内外で最も聴かれた楽曲・アーティストの年間ランキング発表
5 DUNU、7ドライバー/トライブリッド構成を採用したイヤホン「DN 142」
6 カセットテープとともに過ごすカフェ「CASSE」。12/17渋谷でグランドオープン
7 Vento、3次元特殊メッシュを採用したハイブリッド拡散パネル「DAP180 / DAP120」
8 AVIOT、最大120時間再生と小型軽量を両立したオンイヤー型Bluetoothヘッドホン「WA-G1」
9 サンワサプライ、省スペース設置できる木製キャビネットのサウンドバー「400-SP120」
10 アイレックス、ALBEDO/AUDIAブランド製品の価格改定を発表。2026年1月1日より
12/5 10:47 更新
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー199号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.199
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
特別増刊
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
最新号
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.23 2025冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.23
プレミアムヘッドホンガイド Vol.33 2025 SUMMER
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.33(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • プレミアムヘッドホンガイド
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX