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技術の粋を凝縮

トランスローター「DARK STAR」を聴く。ブランドエントリーとなるアナログプレーヤーの実力は?

公開日 2017/09/29 16:52 角田郁雄
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広く深い空間に奏者や歌い手をリアルに描写

オーディオテクニカのMMポジションで使える「VM760SLC」、マイソニックの「Ultra Eminent Bc」、フェーズメーションの「PP-2000」を使ったが、共通する特徴は、音の透明度が極めて高く、広く深い空間に奏者や歌い手をリアルに描写することだ。何故なら、アクリルと同様の特性をもつ特殊高分子素材、S/Nの良い軸回転構造、慣性力の高い滑らかな回転が、この特徴に貢献するからである。

振動対策が施されたモーター部とそれを司るコントロールユニット。回転数切り替えは、コントロールユニットのスイッチで行う

この特徴を理解していただいた上で、本レポートを読んでいただきたい。まず、VM760SLCを使って感心したことは、奏者や歌い手の輪郭を明瞭度高く描写し、そのディテールに繊細さや柔らかさを加えていることだ。静けさを引き出す、S/Nの良い、高解像度型カートリッジといえ、周波数レンジの広さや倍音再現性の高さも感じた。中低域の量感にも満足できた。この特性は高額なMCカートリッジに迫っているように思えた。コストパフォーマンスが格別に高いので、DARK STARに搭載するカートリッジとして推薦したい。実際の使用にあたってはできる限り、S/Nが良く、倍音の再現性の高いフォノイコライザーを選ぶと良いであろう。

Ultra Eminent Bc は、内部インピーダンスが格別に低く、高出力を発生することが特徴だ。実際に再生すると、レコードに内包する情報をストレートに引き出していることを実感する。ナチュラルな音質であるが、弱音から強音までのダイナミックレンジは広い。音の立ち上がりも速い印象を受けた。ナチュラルかつ、高解像度でエネルギッシュな音と言えるであろう。内部インピーダンスが低いので、ハイ・ゲインのフォノイコライザーや対応する昇圧トランスを必要とするであろう。

PP-2000は、空間に奏者の情念までも再現できることを目標としたモデルである。レコードから微細信号を徹底的にトレースできる技術を搭載。したがって、空間性もさることながら奏者や歌い手のちょっとした動作、演奏の深みや音楽のコクまでも再現する。この超高解像度特性をDARK STARは、よく発揮した。インピーダンスは4Ωで扱いやすい。同社のフォノイコライザーでバランス伝送にも挑戦されたい。



DARK STARに秘められた魅力
カートリッジの特性に敏感に反応

プレーヤーの理想的な構造は、まず、スピーカーから伝わる床振動などの微細振動の影響を、プラッターを支えるキャビネット(ベース部)が一切受けないことである。プラッターに求められることは、平面性と、いつまでも回り続けようとする高い慣性力である。さらにプラッターの回転では、プラッターの軸とキャビネットの軸受けの摩擦抵抗が極小となることが大切である。何故なら、金属摩擦はノイズを発生させ、プレーヤーのS/Nを悪化させるからである。ベルトドライブ型では、モーターの微細振動を大幅に低減することも大切である。

これらの要素を満たすために、トランスローター社は、アクリルに目を付け、アルミ材と組み合わせたのである。そして長く使え、価格もリーズナブルにできる素材として、DARK STARには新たに特殊高分子素材を採用した。

私は実際にDARK STARを5回ほど使用したが、前述の要素を満たし、カートリッジの音質や特性に敏感に反応することが理解できた。標準装備の9インチ、SMEのM2-9ストレートアームも、カートリッジの音質をよく再現する。空間にリアルな音像を描写し、音楽でエッセンシャルな弱音再現性の高さにも満足できる。カートリッジのバランス伝送でも効果を発揮するだろう。愛着の湧くプレーヤーだ。



トランスローターとは?


トランスローターは、ドイツの老舗ブランドである。設立は1972年。製品ラインアップはアナログプレーヤー関連に特化している。設立者のヨハン・レイカ氏は、アクリルが振動を低減させるために有効であることに着目し、アクリルとアルミを組み合わせたターンテーブルの開発に取り組んできた。76年にはアクリルガラス製ターンテーブルを搭載したTRANSROTOR ACが完成。以後、アナログシーンで話題を集めるブランドへと成長してきた。2007年に発表されたフラッグシプ機であるARTUSでは、独創的な磁気ドライブであるFMD(Free Magnetic Drive)方式を採用するなど、意欲的な開発力と徹底した振動対策、美しい外観で注目されるブランドである。

DARK STAR:注目すべきポイント
(1)プラッターとベースに特殊高分子素材を採用
(2)モーターユニットは特殊樹脂素材筐体に収納
(3)高精度軸受け
(4)高いコストパフォーマンス




DARK STARに秘めた想い


TRANSROTORのCEO、ヨハン・レイカ氏
DARK STARのプラッターやベースの主要な材料はPOM材(ポリアセタール樹脂)です。プラッターやトーンアームのベースに打って付けの硬質な樹脂素材です。さらにこの素材は優れた振動減衰特性を持っています。外観も共振が最適化されるように念入りにデザインされています。 POM材の内部に真鍮が入った黒色の重量級のプラッターはレコード再生時の微細な不要共振を防ぎ、レコードのそりを平らにする作用があります。その重量のあるプラッターを支えるベアリングは真鍮切削した受けとスティールのシャフトで出来ております。これらは公差を少なく作られているのでプラッターは軽く回転して、しかもブレが少ないように作られています。(TRANSROTOR CEO ヨハン・レイカ氏)

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  • ジャンルADプレーヤー
  • ブランドTRANSROTOR
  • 型番DARK STAR M2
  • 価格620000
●駆動方式:ヘ?ルトト?ライフ?●フ?ラッター:特殊高分子素材60mm厚●軸受け:真鍮●モーター:外部ユニット●コントロールユニット:33 1/3、45回転切り替え、微調整可能●シャーシ:30mm厚●サイス?:約460W×190H×340Dmm(高さはSME M2-9トーンアーム搭載時)●質量:24kg●アームヘ?ース:SME 9インチ用を標準装備●その他:アームレスモデルは¥400,000/税別●取り扱い:エイ・アント?・エム(株)