公開日 2015/07/31 11:48

純国産だから可能なモノづくり。マランツ「AV8802A」製造工場に行く【レポート後編】

白河のマランツ拠点を前後編でレポート
マランツの旗艦AVプリアンプ「AV8802A」の開発・製造が行われた同社の白河工場を山之内正氏が取材。前編では開発試聴室にてAV8802Aのサウンドを確認した模様をお伝えした。後編では、実際にAV8802Aが開発されている製造現場に潜入。最新テクノロジーと熟練の手作業が可能にするモノづくりの現場に迫った。

白河工場の開発試聴室に設置された「AV8802A」。マランツの旗艦AVプリアンプだ

■開発・設計と製造を白河に集約することで生み出される大きなメリット

マランツのハイファイ製品の中心的な生産拠点は、福島県白河市のD&M白河工場である。オーディオ機器専用工場としては国内最大規模を誇る白河工場は、設計から製造まで一貫した設備があり、前編で紹介したようにホームシアター仕様の試聴室も完備している。

今回の記事では、マランツのフラグシップモデルが国内工場にて一貫して製造されている模様をお伝えしたい

電機メーカー全体で見ると、設計と生産を国内外の拠点で別々に行うなど、海外へのシフトが進んでいる。国内での開発と生産にこだわるメーカーはいまや少数派になってしまったのだ。しかし、マランツがそこにこだわるのはもちろん理由がある。AV8802Aの製造現場を見学し、その理由を理解することができた。

AVアンプのように部品点数が多く複雑なソフトウェアで動作する製品は、開発段階で様々な試行錯誤や検証の作業が不可欠だ。設計者のアイデアを実際の基板設計に反映させたり、試聴結果をフィードバックして部品を変更するといったプロセスが頻繁に行われる。その際に設計と製造の現場が別々だと、変更や修正をスムーズに進めることが難しく、開発に余計な時間がかかってしまう。設計と製造の現場を集約する第一のメリットは、その無駄を省き、効率的かつ入念な開発が行えることにある。

各種基板を専用マシンが高精度に組み上げていく

現場を集約させることは、効率だけでなく、品質の改善にも大きく貢献する。それを理解するには、実際の製造工程に則して説明する方がわかりやすいだろう。

AV8802Aを例にとると、メイン基板や多チャンネルのプリアンプ基板、電源回路など、複数の基板に様々なサイズ・形状の部品を実装し、高い精度で組み上げていかなければならない。パーツのなかには電源トランスなどの大型部品もあり、ネジのトルク管理など、シャーシ全体の組み上げ精度を確保することも要求される。

実際に製造工程を見ていくと、表面実装の微小な部品から電解コンデンサー、コイルなどの立体部品まで、形状の異なる部品を複数のマシンでマウントしていく作業が整然と進められていた。部品の形状ごとに専用のマウント機が用意され、作業はすべて自動化されているとはいえ、点数が多いだけに入念な管理が欠かせない。

専用マシンによって回路基板を製造する工程を担うフロアの模様。高精度な実装を行う大型機械が並ぶ


プリント基板にハンダ印刷を行う機械


こちらは基板に微細な部品を装着するための機械。機械に連なっている“テープ”が供給する部品を組み込んでいく


ハンダ印刷や部品の組み込みを途中まで終えたオーディオ/ビデオ基板


コンデンサーなどやや大きめの部品も機械による自動での実装が行われる。上の写真の基板と見比べると、この工程で追加された部品がよくわかるはずだ


マシンによる工程で出来上がった各基板は、正確な部品実装や半田付けができているかひとつひとつX線検査で確認。問題があることはごく希だが、ここでしか発見できない不具合もあるため入念なチェックが行われるという


最初の工程を経た基板群は次工程へ送られ、マシンでは装着ができない部品が手作業で取り付けられる

部品を挿入し終えた基板は、何度かに分けて半田付けの工程に送り込まれる。温度と速度を厳密に管理した自動装置だが、半田の組成やペーストの配合など、この工程にも多くのノウハウが集約されている。また、半田付けを終えた後、不良箇所がないかどうか、目視などによる検査が行われる。

次ページマシンと手作業のコンビネーションで基板が完成

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