公開日 2014/02/14 14:55

【レビュー】オーディオテクニカ“IMシリーズ”用6N-OFCリケーブルの実力を検証!

人気モデル向けに高音質化を実現するリケーブルが登場
人気のIMシリーズ向けに、高音質化を実現するリケーブルが登場

昨年秋に登場したオーディオテクニカの“イヤーモニター”IMシリーズは、ダイナミック型ドライバー形式2モデル、バランスド・アーマチュア型ドライバーを積むシングルウェイ〜3ウェイ4ドライバーまでの4モデルすべてが着脱式ケーブルに対応。交換用ケーブルのグレードによって音質変化を楽しむ“リケーブル”が可能になった。もちろん、付属のケーブルのままでも価格を超えた高解像度・ウェルバランスなサウンドを楽しめるシリーズであるのだが、ヘッドホン&イヤホンのヘビーユーザーにとっては非常に気になるポイントだろう。

そしてこのたびオーディオテクニカから、IMシリーズ用・純正ヘッドホン交換ケーブル3製品が発売された。ラインナップは、高音質化を実現する「AT-HDC5/1.2」、付属品と同じスペアケーブル「AT-HDC1/1.2」、スマホ対応リモコンを備えた「AT-HDC1iS/1.2」だ。

6N-OFCを採用するなど高音質化を実現する「AT-HDC5/1.2」(実売価格9,450円前後)


付属品と同じスペアケーブル「AT-HDC1/1.2」(実売価格3,175円前後)

スマホ対応リモコンを備えた「AT-HDC1iS/1.2」(実売価格3,675円前後)
なかでも注目度の高い「AT-HDC5/1.2」は、ケーブル導体に高純度な6N-OFCを採用し、シースにはチタンを配合し不要振動を抑制。高音質化を図れることが特徴だ。ステレオミニジャック部は樹脂モールド成型であったものが微細な振動を抑える堅牢なアルミプラグとなり、見栄えも含め高級感が向上している。


AT-HDC5/1.2(左)と通常の付属ケーブル(右)。AT-HDC5/1.2のチタン配合シースは茶色のカラーリングで、柔らかく取り回しがしやすい。耳かけ部分は、どちらも耳に沿って調整できるフレキシブルワイヤーが備えられている。


プラグ部も通常モデル(右)に比べてがっしりしたアルミ製。側面にはオーディオテクニカのロゴ入りだ。

リケーブルのメリットは「修理保全」「音質グレードアップ」

さて、“リケーブル”って何? という方にに、より詳しく解説をしよう。

もともとケーブル着脱ができるようになった背景は、ヘッドホン&リモコン故障で最も多い“ケーブル断線”に対するメンテナンスとしての側面がある。筆者もお気に入りのイヤホンが断線してしまい、修理もかなわず悲しい思いをしたことがある。筆者ならずとも、もし数万円もする高級イヤホンが断線してしまい修理ができずイヤホンそのものを買い替えねばならなくなってしまったら大きな痛手だろう。しかしこの着脱式機構が用意されていれば、断線時の出費も最小限で抑えられ、お気に入りのモデルをより長く使うことができるというわけである。

そしてもちろん、オーディオで言うところのケーブル交換と同義なので、導体のクオリティによって音質の向上も可能だ。昨今サードパーティーから高純度で導電率の高い導体を用いたリケーブル製品が数多く登場している。ヘッドホンは専用プラグからミニXLR、ミニジャックなど様々なものが存在するが、イヤホンの世界ではMMCXコネクターを使うモデルが増えつつある。ちなみにIMシリーズはオーディオテクニカ専用のコネクター形状となっており、今のところサードパーティーのリケーブル製品は見当たらない。

コネクターは独自形状のものを採用。装着も簡単で、カチッと音がするまで押し込めばOK。


音質検証!IMシリーズ人気モデル×「AT-HDC5/1.2」

では実際に高音質モデル「AT-HDC5/1.2」をIMシリーズの人気モデル「ATH-IM70」「ATH-IM02」「ATH-IM04」に繋ぎ換え、そのサウンドの違いを体験してみることにしよう。


ATH-IM70と「AT-HDC5/1.2」を組み合わせ。
まずリーズナブルな価格で人気の「ATH-IM70」であるが、ダイナミック型ならではのスムーズで音像の厚い描写を軸としたサウンドが、「AT-HDC5/1.2」に交換することで全体的にすっきりとした音色に変化し、中低域のダンピングも向上して歯切れ良いものとなった。付帯感もなくなり、シンバルやボーカルの口元のエッジがくっきりと浮き上がり、細やかな楽器の粒立ちも分離良く感じられる。

「ATH-IM70」の場合、イヤホン本体がリケーブルの価格と近いため、あまり現実的な比較ではないかもしれない。とはいえ本来のサウンドの質が気に入っている場合、その音色の本質を変えることなくサウンド品位が向上する「AT-HDC5/1.2」の効果はグレードアップの手段としては有効な一手と言えるだろう。



ATH-IM02と「AT-HDC5/1.2」を組み合わせ。
続いて、売れ線モデルであるバランスド・アーマチュア型2ウェイ「ATH-IM02」のケーブルを「AT-HDC5/1.2」へ交換。元々音ヌケも良く、どのレンジ帯域もバランス良くまとめ、オーケストラの旋律も解像感高く爽やかに描いてくれる音色を持つが、リケーブルにより、中域成分が引き締まりギターやボーカルの質感がより引き立ち、ディティールの滑らかさが増す。管弦楽器のハーモニーは消え際の階調が一際細かくなり、全体的にS/Nが向上。リズム隊の密度も高く、中低域の音運びがスムーズに感じられるようになった。音像のアタック&リリースも自然で、高級リケーブルに顕著な高域のシャリつくような誇張感がない。



ATH-IM04と「AT-HDC5/1.2」を組み合わせ。
そして最後に、全帯域でエナジーに満ちた音像感を持ち、自然な解像感と落ち着きのあるサウンドが魅力の最上位モデル「ATH-IM04」で「AT-HDC5/1.2」への交換を試してみた。

標準的な状態のままでも完成度の高いサウンドであるが、リケーブルによって質感の滑らかさが増し、中低域の密度感がよりしっかりと見えてくるようになった。高域のシンバルやピアノのアタックは粒が細かくなり、付帯感もない鮮やかでクリアな余韻が奥まで通る。スネアもシャープに抜け、ボーカルは肉付きもしっかりと安定し、口元のハリや艶もリアルにトレース。リヴァーブの余韻やオーケストラのホールトーンも涼やかで、低域のダンピングもキレ良く弾む。アタック&リリースの階調が細やかで、音場の状況がよりつかみやすくなっているようだ。


AT-HDC5/1.2は癖のない理想的な改善効果を実現してくれる


試聴を行った岩井氏
「AT-HDC5/1.2」に交換した場合のサウンド変化の全般的な傾向であるが、特定の帯域にピークがあるような感じではなく、付帯感が取れ、音像の輪郭がよりはっきりとして、質感も滑らかに感じられるようになる。S/Nも向上するが、高域の際立ちも控えめなため、大幅に音質傾向が変わるというものでもない。しかしリケーブルとしては癖のない理想的な改善効果である。

付属ケーブルのポテンシャルも高いが、「AT-HDC5/1.2」の持つ正確性はまさにモニター用途に最適なチョイスとなる。IMユーザーにとってはリファレンス用リケーブルとして持っておきたい製品と言えるだろう。

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