公開日 2012/03/07 10:46

日立「P50-GP08」で3Dの良作『サンクタム』を観る

話題のソフトをWoooで見る
この連載「話題のソフトを“Wooo”で観る」では、AV評論家・大橋伸太郎氏が旬のソフトの見どころや内容をご紹介するとともに、“Wooo”薄型テレビで視聴した際の映像調整のコツなどについてもお伝えします。

■映画に向かない題材も3Dだったら面白い映画になる

映画の冒頭、ゴーグルを付けずに水中に静止した主人公の姿が、背後から射す一筋の光芒で浮かび上がる。光は画面奥から手前へ飛び出し、主人公が奥まった空間にぽっかり浮かぶ。

これだけで観客は、この映画が3D立体表現によって狙うものが単なる奥行き表現というより、<無方向感覚、無重力空間>であることを直感的に理解する。観客の心をたちどころに掴んで映画とシンクロさせる、見事な導入である。




『サンクタム』
『サンクタム』はジェームズ・キャメロンが『アバター』の次のプロジェクトとして手掛けた3D映画である。監督はアリスター・グリアソン。

映画の筋立てをざっと紹介しておこう。パプアニューギニアのジャングル奥に陥没で出来た人類未踏の洞窟がありずっと<サンクタム>(聖域)と呼ばれてきた。

洞窟がソロモン海域に通じていることを証明するために探検隊がやって来る。探検隊のリーダーは経験豊富な冒険家のフランクで、その息子でロッククライマーのジョシュアもチームの一員だが、家庭を顧みない父とはずっと折り合いが悪い。他に富豪の冒険家カールとそのガールフレンド、現地のガイドらで構成された探検隊が洞窟に降下、奥深くに通じる水路を探し当てるが、時あたかもサイクロンが到来、鉄砲水が洞窟へと流れ込み岩盤が落下して地上への退路を絶たれてしまう。かくなる上は洞窟の奥へ奥へと進むしか、彼らに生還の道はない…。

一般的に考えて「洞窟探検」は映画のテーマにならない。暗闇が延々と続くのではビジュアルとして魅力がないからである。しかし2Dだったら成立しない企画も、3Dなら面白い映画になる。この逆転の発想から『サンクタム』は生まれた。

この発想を具体的な映画にするためには、ドラマと3D立体効果が一体でなければならない。ポスプロ作業で立体効果を後から付加していく、並の3D製作では説得力ある映像は生まれない。

幸いジェームズ・キャメロンには『アバター』で得た3D制作のノウハウがあった。それをいわばベースにさらに進化した3D映像を目指した作品が『サンクタム』である。裏返すと、2Dで見ても価値がない。映画そのものがいわば<3D世界の冒険>なのである。

撮影に先立って3Dプロセスに配慮し十分な奥行きと高さのセットをスタジオに組み(合計16セット)、2種類の3D撮影機材を持ち込んで撮影を行った。一つは視差の設定が出来る複眼方式、もう一つは最新式のフュージョンビームスプリッターである。撮影現場に大きなコンテナの3D編集室が設置され、撮影監督がカット毎に観客の負担にならない視差の設定を心掛けたという。

純粋に劇映画として見た場合、チームにダイビング経験のない女性初心者が混じっていたり、後方部隊がいてもさっぱり役に立たなかったり、お定まりの仲間割れが起きたり、すいぶん杜撰な探検隊というほかない。ドラマ部分はリアリティに欠けるが、野暮を言うのは止めて2時間弱、3D映像の<無方向感覚、無重力空間>に身を委ねるべきだ。

しかし、それには、最新最先端の3D映像に密着出来るだけの表現力を備えた3Dテレビが必要。今回『サンクタム』を見るために導入したのが、日立の最新のプラズマ方式テレビP50-GP08。日立の3Dテレビを心待ちにするユーザーの声に答え、昨秋に日立が満を持して発売した初の大画面3Dテレビである。視聴記に先立ち、P50-GP08のプロフィールを紹介しておこう。

次ページ闇と光を描き出すテレビ、「P50-GP08」

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