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話題のソフトを“Wooo"で観る

『ココ・アヴァン・シャネル』の<黒>をWoooで引き出す

2010/03/18 ファイル・ウェブ編集部
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この連載「話題のソフトを“Wooo"で観る」では、AV評論家・大橋伸太郎氏が旬のソフトの見どころや内容をご紹介するとともに、“Wooo"薄型テレビで視聴した際の映像調整のコツなどについてもお伝えします。

■我々にとって一番身近な芸術がファッション


今回視聴したのは映画『ココ・アヴァン・シャネル』
「ファッション」は映画界が近年発見した好題材の一つである。イタリアの男性/女性ファッションの帝王を描いたドキュメント『アルマーニ』、メリル・ストリープがモード誌の鬼編集長を演じた『プラダを着た悪魔』、その派生作品的意味合いの強いTVシリーズ『アグリー・ベティ』…、どれもヒット作になった。

ファッションは、人間の肉体とフュージョンする唯一の芸術である。肉体を隠すと同時に際立たせる。性(差)というものを時には逆説的にクローズアップする。文明的だが同時に野生的(動物的)である。肉体とフュージョンするだけでなく、それを纏うことで自我の一部となり社会に出て行動することでアイデンティティとなる。建築、美術、音楽、演劇、文芸、インテリアデザイン、数ある中で最も私達にとって一番身近な芸術がファッションなのである。

ファッションやモードは以前なら限られた一部の人たちの関心事だったが、グローバルな大衆化社会が到来した今はそうでない。映画がファッションの世界を描くのも当然の成り行きである。

裾野が広がれば峰はますます高く神秘的になる。20世紀の後半、メディアの普及という現象もありファッションの創造者たちは現代のカリスマになっていったが、その中で一際光り輝く存在がガブリエル(ココ)・シャネルだった。

彼女は孤児院育ち。お針子から身を起こしパリで起業、シンプルなデザインと意外な素材を起用して、女性ファッションを有閑階級のパーティから解放し都会の風景の一部に変え、シャネルスーツの創案で「ファッションは動きの中にある」という大転換を成し遂げた革命家である。

ストラヴィンスキーやピカソ、ジャン・コクトーら著名芸術家との交際でファッションデザイナーという職業を文化人の域に押し上げたのもシャネル。生涯独身を貫いたのも、女性が社会進出した20世紀の偶像として象徴的である。

彼女は明暗のくっきり深いドラマティックな人生を送った。他人の何倍も生きた。何よりココ・シャネルは絵になるオンナである。仕事中は薄い唇に咥え煙草、マニッシュなベレー帽やサングラスが似合ってどこかミステリアス。近現代の実在の女性中、これほど映画や舞台にもってこいの人はいない。

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