公開日 2009/03/13 19:50

話題のソフトを“Wooo"で観る − 第19回『猿の惑星』(BD-BOX)

「猿」と「HAL」の違い
この連載「話題のソフトを“Wooo”で観る」では、AV評論家・大橋伸太郎氏が旬のソフトの見どころや内容をご紹介するとともに、“Wooo”薄型テレビで視聴した際の映像調整のコツなどについてもお伝えします。

最近目にする新造語に「ネタバレ」がある。小説や映画のオチがわかってしまうことだが、私が一人で映画を見るようになった頃にこんな言葉はなく、よくいえば大らかだった。

1960年代、『少年サンデー』より少し上の読者層を狙った『ボーイズライフ』(小学館)という月刊誌があり、マンガより読み物中心の誌面構成に特徴があった。1968年のある日、学校帰りに本屋でこの雑誌を開いてみると、新着映画紹介が『猿の惑星』だった。『ベン・ハー』の史劇スター、チャールトン・ヘストンが主演のSF大作ということで当時大変な前評判を呼んでいた。当時SF映画はいわゆる「色物」で、一流俳優が出演するなどということは前例がなかったのである。

■ラストシーンのネタバレに立ちすくんだ

そうしたら、である。この記事は新着映画紹介などではなく映画のサマライズ(抄訳)で、ラストシーンまでちゃーんと書かれてしまっていたのである! 小学6年生の私は本屋の店先で金縛りになったように立ち竦んで、しばらく動けなかった。結末を見る前に知らされてしまったショックが2割、残りの8割はその結末があまりにショッキングだったからだ。「この映画のラストは決して誰にも話さないでください」がアメリカで公開された時の宣伝文句で、多分ヒッチコックの『サイコ』が最初、『猿の惑星』が二番目だろう。日本の映画配給会社のプレス担当は一体、何をやっていたのかと思う。

よしなしことを書いたが、私の年代にとって『猿の惑星』はSF映画の面白さを教えてくれた思い出深い一本なのである。本作は日本で公開されるや大ヒットし、日本SF作家協会(当時の会長は星新一)から1968年の最優秀SF映画に選ばれた。こう書くと「いや、待てよ」とお思いの方がおられるだろう。1968年はあの映画史上不滅の傑作、スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』が公開された年ではないか、それなのにどうして? と。

■『2001年宇宙の旅』と『猿の惑星』の決定的な違い

『2001年…』の公開当時の評価は、日本では決して高いものではなかった。朝日新聞の夕刊の映画評なぞは、「コンピューターの反乱なぞを描いた陳腐な映画」と決め付ける始末。『猿の惑星』は、いかにもロッド・サーリングらしい意外性に富んだ(原作とまったく違う)シャープな脚本、精巧な特殊メイクの視覚的サプライズ、そしてヘストンが主演することで確立される冒険アクション性と、大衆にわかりやすく、成功の条件がきちんと取り揃えられている。ジャーナリズムも観客もこっちに飛びついた。

一方の『2001年…』が理解されるのには時間が必要だった。私が考える名画の条件とは、俳優の名演技、脚本の巧さと演出の見事さ、実写撮影の美しさ、そして映画としての技法の開拓あるいは確立、志の高さ、等々である。一例を挙げれば、最近デジタル復元されてブルーレイディスクで発売された黒澤明の『羅生門』は、これらの全てを併せ持つ傑作である。しかし、『2001年…』は、こうした名画の条件からはみ出しているのである。アナログSFXの一つの原点ではあるが、それは数年後に他の作品に追い越されている。

先に述べた「名画の条件」は、映画が誕生して以来自己形成を続けていく過程で、後追い的に形成されたものだが、『2001年…』は、なぜ人間は映画を生み出したか、なぜ映画を見るのかという根源的な問いと一体の、他に比較するもののない特異な作品である。「年間の一本」に収まるような近視眼的作品でなかったのである。『2001年…』はその後の世代をも魅了し続ける底知れない映画なのだ。

一方の『猿の惑星』は、企画、脚本、メイクアップ、ある意味プロのテクニックの産物である。『2001年…』を熱く語る人はゴマンといるが、今時『猿の惑星』を熱く語るオタクはあまり多くないだろう。しかし、私にとって、忘れられないSFの傑作であることに変わりはない。なぜなら、この奇想天外な一作こそが、私たちの世代に映画の面白さ、SFの自由奔放さを教えてくれたからである。

次ページ第1作を中心に全5作をWoooで視聴

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