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公開日 2007/10/31 19:04

ケースイが斬る!東芝「RD-A301」 − 開発者・片岡氏に聞く「HD Rec」のメリット

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鈴木桂水氏が「RD-A301」の詳細について緊急インタビューを行った

HD DVDレコーダー「RD-A301」
先日CEATEC JAPAN 2007会場でレポートした(関連ニュース)、東芝のHD DVDレコーダー“VARDIA”シリーズより、スタンダードモデルの一台がベールを脱いだ。筆者も製品発表後、シリーズの開発におけるキーマンである東芝の片岡氏にいち早くコンタクトをとり、本機の詳細についてお話を伺った。詳しいインタビューの内容は後日お伝えするとして、まずは本日発表になった“VARDIA”「RD-A301」について、筆者のインプレッションをお伝えしようと思う。


(株)東芝 デジタルメディアネットワーク社 デジタルAV事業部 DAV商品企画部 片岡秀夫氏
本日東芝が開催した新製品発表会では、残念ながらフラグシップモデル「RD-X7」の発表は“今回は”見送られたが、片岡氏によると「“Xシリーズ”を冠するにふさわしいスペックになるまで、じっくりとブラッシュアップしている」とのこと。現在、着々と開発が行われているようだ。ご存じの通り、“RDシリーズ”は奇数ナンバーに名機が揃っており、それだけにRD-X7に関しては東芝技術陣の並々ならぬ労力が注ぎ込まれているようだ。発売時期については明言を避けた片岡氏だが、年末商戦を控えたこのタイミングで発表がないということは、年明けの北京五輪近辺での発表になるのでは?と筆者は予想している。


東芝の発表会資料より「HD Rec」の説明

HD DVDレコーダーのフラッグシップモデルRD-X7の登場はいつになるのだろうか?
本日発表された「RD-A301」の諸機能については既報の通りなので参照していただきたい。ここではRD-A301の目玉機能の1つである「HD Rec」を中心に分析してみたい。

「HD Rec」はデジタル放送をMPEG4 AVC/H.264(以下H.264)という方式で圧縮して記録する方式だ。H.264は、ハイビジョンの1920×1080ドットの解像度を維持しながら、データの記録量を左右するビットレートを調節することで、低容量でのハイビジョン記録を実現している。

「TS(デジタル放送の無劣化録画モード)」から、「H.264」への変換はRD-A301が搭載する「HDトランスコーダー」を利用する。変換はリアルタイムではなく、一度TS画質で録画し、ダビング時にHD Rec画質に変換する方式だ。そのためダビングには実時間がかかる。ツーパスエンコードのようで使いづらいが、将来はファームウェアのバージョンアップによって、HDDやディスクメディアへのリアルタイムでのH.264記録に対応するという。


CEATEC 2007でデモが行われていたHDトランスコーダー。当初はTSでの録画後にHD Rec画質に変換してダビングするが、将来はリアルタイム録画に対応する。
「HD Rec」は、CPRMに対応するDVD-R、DVD-RW、DVD-RAMに対応する。記録速度に対しての制限はないが、再生には3倍速以上の読み出しドライブが必要。ちなみにRD-A301は3倍速の読み出しに対応していないので、DVD-RW、DVD-RAMにBSハイビジョンなどを、24Mbpsで記録した場合に限り再生できない。

「HD Rec」はHD DVDだけでなく、従来のDVDメディア(DVD-R、DVD-RW、DVD-RAM)にも対応している点がポイントだ。「HD Rec」を使えば、最高レートで30分、最長で2時間15分のハイビジョン番組を4.7GBのDVDメディアに記録できる。HD Recの画質について片岡氏に伺ったところ「DVDへのハイビジョン記録のおすすめは8.2Mbpsです。ハイビジョン画質の解像感を残しつつ、1枚のDVDに約1時間録画できます。ドラマなら1本、アニメなら2本、ハイビジョン画質で保存できるので使いやすいのではないでしょうか」とのこと。1枚のDVDに1タイトルで保存というのは、ライブラリを作る上で重宝する場面もある。例えばNHK特集のような1時間のスペシャル番組を保存するなら、タイトルごとにディスクを管理できて便利だ。また8.5GBの2層記録DVDを使えば、このモードで2時間記録が可能だが、ディスクの価格を考えると出番は少なそうだ。

最長録画ができる3.6Mbpsでの画質については「画質よりも記録時間を優先したモードなので、記録する内容に合わせて使っていただきたい」(片岡氏)とのことだった。高画質で残したい番組の録画には向かないが、情報番組などの記録用には使えそうだ。

■HD DVD-VRフォーマット時の録画方式ごとの記録時間
 
ディスクの種類
DVD-R
HD DVD-R
録画方式
容量
4.7GB
8.5GB
15GB
30GB
TS
MPEG2(HD/SD)
e2 by スカパー! 約5Mbps時(SD)
1:50
3:30
6:21
12:51

BSデジタル 約7Mbps時(SD)

1:18
2:30
4:33
9:13
地上デジタル/e2 by スカパー! 約17Mbps時(HD)
0:31
1:01
1:52
3:48
BSデジタル 約24Mbps時(HD)
0:21
0:42
1:19
2:41
H.264 [TSE]
MPEG4 AVC(HD/SD)
最長記録時 3.6Mbps(HD)
2:15
4:18
7:48
15:46
TSE推奨 8.2Mbps(HD)
1:03
2:01
3:41
7:28
SPモード 15Mbps(HD)
0:34
1:07
2:03
4:11
最高レート 17Mbps(HD)
0:30
0:59
1:49
3:42
VR
MPEG2(SD)
最長記録時 1.0Mbps(SD)
7:38
14:30
26:12
52:54
LPモード 2.2Mbps(SD)
3:47
7:12
13:02
26:20
SPモード 4.6Mbps(SD)
1:54
3:39
6:37
13:24
最高レート 9.2Mbps(SD)
0:58
1:52
3:23
6:53

※記録時間は入力映像の画質やその他の条件によって表記の時間を下回る場合もある
※TSの場合はチャンネルや番組によってビットレートが異なる。e2 by スカパー!の約5MbpsやBSデジタルの約7Mbpsは東芝調べの参考値
※H.264[TSE]の場合、音声のストリーム数やチャンネル数によって記録時間は短くなる。表はAAC5.1ch 1ストリーム記録時
※VRの場合、音声モードM1時

RD-A301が採用した「HD Rec」により、もう一つユニークな機能として、DVDへのTS画質での記録が可能になった。TS画質とはハイビジョン放送を無劣化で保存する画質のことで、従来機はこのモードでHD DVDにしか記録できなかった。

上記の表を見ていただきたい。TS画質はデータ容量が大きいので、BSハイビジョンやe2 byスカパー!などのHD放送を録画しようとすると20分から30分程度の短時間の記録しかできない。放送のビットレートが17Mbpsで固定されている地デジの録画時間も同じく短い。

しかしBSデジタルのSD放送は5Mbpsから7Mbpsでの放送になるので、4.7GBのDVDにでも1時間から2時間程度の録画が可能。デジタルWOWOWで同時刻に3本の番組を放送する場合も同様にDVDへの長時間録画が可能だ。従来はこれらのSD放送でもDVDに記録するにはDVD画質(DVD VRモード)への再変換が必要だったことを考えると、高速書き込みが可能なTS画質の無劣化録画に対応したことは意義がある。


パナソニックはBDレコーダーだけでなくDVDレコーダーにも「AVC REC」に対応する製品を揃える。対応機の数ではパナソニックの方が1枚上手だ
これらDVDへのTS録画を含む、「HD Rec」に対応したRD-A301の登場はユーザーサイドからすると、利便性が高く、歓迎すべき点が多い。しかし、気になる部分もある。この秋冬モデルでは東芝の「HD Rec」とはべつにパナソニックもDVDにハイビジョン画質で録画できる「AVCREC」を搭載したレコーダーを発表している。「HD Rec」はDVDフォーラムの規格で、「AVCREC」はBDフォーラムの規格だ。従来の「HD DVD VS BD」という対決の図式に加え、「HD Rec VS AVCREC」という新たな対決の火種ができた。

片岡氏によると「“AVCREC”は“HD Rec”をベースに開発された規格です。“HD Rec”は我々東芝がDVDフォーラムで認証を得るために、技術的なことを公開しました。DVDフォーラムにはパナソニックをはじめとするBD陣営のほとんどのメーカーが参画しています。“HD Rec”が発表された後に、“AVCREC”の開発が始まったようです。ただ“HD Rec”と“AVCREC”は異なる規格ですが、“AVCREC”を使ってDVDメディアを利用するにはDVDフォーラムのディスクを使うことになります」とのこと。片岡氏の話をそのまま聞いてしまうと、「“AVC Rec”は“HD Rec”の派生技術」ということなのだろうか?“AVCREC”を採用するパナソニックサイドにも、近日取材にうかがって真相を訊ねてみたいと考えている。

■便利なようで不安もある「Rec技術」

「HD Rec」と「AVCREC」にはもう一つ問題がある。「次世代メディアの普及を著しく送らせるのではないか?」という懸念を筆者は抱いている。「Rec技術」の登場で、次世代メディアに比べれば、価格の安いDVDメディアにハイビジョン録画が可能になった。ユーザーとしてはありがたいが、HD DVD、BD陣営ともに、次世代メディアの消費は確実に少なくなる。「メディアが売れないことには、価格も下がらない、更に次世代メディアはさらに売れない」という悪しきスパイラルに次世代目メディアが巻き込まれるのではないだろうか。

これについて片岡氏は「メディアのコストダウンが難しくなるのはBD陣営だけで、HD DVD規格はまったく問題ありません」と強気な反応を示す。片岡氏によるとHD DVDメディアはDVDメディアと生産ラインを共有できるので、新規メーカの参入がしやすく、HD DVD対応機が普及することで、今以上にHD DVDの需要は高まりコストは下がるという。

一方のBDメディアはDVDメディアと異なる生産機器が必要なので、メディアメーカーにすれば新規の参入が難しい、というのが片岡氏の考えだ。ただ、実際に秋葉原などの電気街を歩くとHD DVDメディアよりもBDメディアの方が安く売られている。あるショップでは25GBのBDメディア1枚の価格が800円を切っていた。数ヶ月前まで1枚1,000円が相場だったことを考えると、驚くほどの値下がりぶりだ。

「HD DVDの方が生産コストがかからないので、BDよりも低価格でメディアを提供できる」と、HD DVD陣営は当初からアナウンスしてきた。しかし、筆者が電気街を歩く限り、25GBのBDメディアよりも安く売られている15GBのHD DVDメディアを見たことがなかったのはなぜだろうか? 録画好きの筆者は、容量あたりの単価についてはシビアな方だ。たとえば15GBのHD DVD-Rと25GBのDVD-Rを比べて、HD DVDの方が100円程度安くなったとしても、価格としてHD DVDを評価することはないだろう。HD DVDとBDでは、容量差として約1.6倍の差がある。だとするなら、HD DVDメディアには、それに見合った価格差でBDに勝負を仕掛けてもらいたい。

またそれぞれのフォーマットで対応メーカーに差があることも気になる。HD DVD陣営でレコーダーを発売するのは東芝1社だが、BD陣営はパナソニック、ソニー、シャープなど、すでに3社が新製品を投入している。そのうち片岡氏がBDの普及を阻害するという「AVCREC」に対応するのはパナソニック1社のみだ。全体数を見れば、今後もまだBDメディアの普及率も着実に伸びるはずだ。BD陣営には低価格で生産できる「有機BDメディア」という隠し球もある。このあたりがどう影響するのか目が離せない。とにかく、「HD Rec」、「AVCREC」ともにユーザーにとってのメリットは大きい。当分はどちらかの「Rec技術」でDVDを使いながら、次世代DVDメディアの値下がりを待つということになりそうだ。

(レポート:鈴木桂水)

筆者プロフィール
元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、使いこなし系のコラムを得意とする。そのほかAV機器の情報雑誌などで執筆中。
>>鈴木桂水氏のブログはこちら

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