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年末はHD DVDレコーダーのラインナップ拡大で勝負 − 東芝DM社藤井社長 単独インタビュー【中編】

公開日 2007/08/06 16:02
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次世代のハイビジョン記録メディアとして注目されているHD DVD。その真価と将来性を探るべく(株)東芝 執行役上席常務 デジタルメディアネットワーク社 社長の藤井美英氏にインタビューを行った。今回から、いよいよインタビューの核心へと迫る後半戦に突入する。

(インタビュー/鈴木桂水)

藤井氏へのインタビュー前半戦から、キーワードとなるポイントを総括すると以下のようになる。

■HDDやフラッシュメモリーの低価格化により、ビットパフォーマンス(容量あたりの単価)に優れるのは光ディスクではなくなった。東芝は用途や容量に合わせて、HDD/HD DVD/DVD/フラッシュメモリーを使い分けることを提案してゆく。

■次世代ディスク規格は従来のDVD規格を継承しつつ、他の機器との連携にも優れていなければならない。またスタンド・アローンでの使用よりも、インターネットを介した新しい情報発信にも柔軟に対応できなければならない。それを実現できるのはHD DVDだけだと考えている。

HD DVDはインターネットに接続することでさらにその利用範囲が広がるメディアである、というところまでお伝えした。後編ではまず最初に、今後のHD DVDの普及戦略について伺ってみた。


■東芝が“ゲーム機一体型HD DVDプレーヤー”を開発する可能性はあるのか?

━BD規格は累計出荷台数が約550万台という、ゲーム機の「PLAYSTATION3」がセルタイトルを牽引しそうです。HD DVDにとっても、普及の起爆剤になるような、例えばXbox 360としても使えるゲーム機能付HD DVD再生機器などの開発は予定されていないのでしょうか。

(株)東芝 執行役上席常務 デジタルメディアネットワーク社 社長 藤井美英氏

藤井氏:それはあり得ません。かつてあるメーカーからゲーム機とビデオレコーダーを融合させた製品が発売されたこともありましたが、その後継機が出なかったところを見ると、市場のニーズが無かったのだと思います。基本的にゲームを楽しむことと、テレビや映画を楽しむことは別だと思います。ただゲームがきっかけで、ハイビジョンの映像やHD DVDのクオリティに興味を持つ方も多くいらっしゃることも確かです。Xbox 360はオプションとしてXbox 360 HD DVDプレーヤーを追加できます。このマイクロソフトの戦略は正しいと思っています。


Xbox 360はオプション機器として「Xbox 360 HD DVDプレーヤー」(市場実売価格2万円前後)を揃え、手軽にHD DVDの再生環境が手に入れられる点も大きな魅力だ。
━セルタイトルもHD DVDとBDでは容量に違いがあります。これはフォーマットの普及に影響を及ぼすものと考えられますが、いかがでしょうか。

藤井氏:むしろHD DVDの容量の方が有利だと思います。セルタイトルは容量が多ければ良いというわけでありません。そもそも、セルタイトルの容量についてはワーナーやディズニーなど、主要なコンテンツホルダーと話し合って決定しました。もしコンテンツホルダーが50GBが必要だと言うのであれば、HD DVDもその容量を開発することは可能ですし、製品の発売に照準を合わせて用意もできました。しかし容量が大きくなるだけだと、ソフトの開発費は膨大に膨らみます。例えばゲームソフトに話を置き換えればわかりやすいと思います。50GBの容量を満たすゲームソフトを開発できたとして、それにかかる費用を回収するには、売価を上げるか本数を多く売るしかない。それよりもHD DVDのように適正な容量を用意し、必要ならばインターネットを利用することでアップデート可能なコンテンツを提供する方が魅力的なのは明らかではないかと考えます。


■年末はレコーダーのラインアップを拡大し、BD陣営との決戦に望む

━なぜHD DVDのソフトタイトルは安くならないのでしょうか。

藤井氏:様々な理由が考えられますが、一つにはプレーヤーの普及率が高まればコンテンツタイトルの低価格化も進むと思っています。目安として100万台が普及すれば、自ずと結果は出るでしょう。一口に100万台と言っても、ハードの生産台数とすればかなりの数字なので、これは日本市場だけで早急に達成できるものではないと考えています。

東芝は国や地域に合わせて、HD DVDの普及戦略を整えながら製品をリリースしています。プレーヤーへの感心が高い北米や欧州では、低価格な普及機からハイスペックの高級機までニーズに合わせたラインアップを積極的に揃えました。海外ではHD DVDタイトルの売れ行きが好調です。これからは日本市場を充実させる段階にあると思っています。録画文化が成熟している日本では、圧倒的にレコーダーへのニーズが高い傾向があります。そのためには、まず「RD-A600/A300」という普及価格帯の製品を市場に投入しました。しかし北京五輪を翌年に控えた2007年の年末商戦は、次世代録画機の普及に一層拍車がかかる重要な時期だと考えています。東芝としても、さらにHD DVDのレコーダーのラインアップを充実させて勝負に出るつもりです。ご期待いただきたいと思います。日本市場では録画機能を備えながら、セルタイトルも再生できるレコーダーで一気にHD DVDを普及させます。

東芝のHD DVDプレーヤー「HD-XA2」。HDMI ver.1.3の出力端子を搭載し、映像の1080p出力や色再現性を高めるDeep Colorに対応している

海外ではHD DVDプレーヤーが人気と言うこともあり、開発しやすい再生専用機が優先的に製品化されていたが、年末には日本市場へ向けた録画機のラインアップも充実されるという。もしかするとRD-A600の上位モデルとして、久々にRDシリーズのXシリーズのようなフラッグシップのシングルナンバーモデルが復活するかもしれないと筆者は期待している。それが「RD-X7」になるのか、「RD-A7」になるのか…、きっと開発コードは“EXIA(エクシア)”なんじゃないのか?などとあらぬ妄想をしてしまう。このあたりのAVファンの期待を膨らませてしまうのも、東芝レコーダーが持つ魅力なのだろう。年末商戦が楽しみだ。

次回はいよいよインタビューの最終回。藤井氏の口から思わず明かされた“土下座発言の真相”に迫る。ご期待いただきたい。

鈴木桂水(Keisui Suzuki)

元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、日経BP社デジタルARENAにて「使って元取れ!ケースイのAV機器<極限>酷使生活」などで使いこなし系のコラムを連載。そのほかAV機器の情報雑誌などで執筆中。
>>鈴木桂水氏のブログはこちら

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