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公開日 2016/03/22 11:32

【レポート】最新ハイレゾ事情を各界識者が語る。JEITA主催「ハイレゾオーディオセミナー」

JEITAと日本オーディオ協会の関係にも言及
編集部:杉浦 みな子
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一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)が運営するオーディオ・ビジュアル事業委員会とネットワークオーディオ専門委員会は、両者共同によるハイレゾ関連イベント「ハイレゾオーディオセミナー」を3月18日に開催した。業界関係者だけではなく一般参加も可能なイベントで、当日は会場となったJEITAの会議室を多くの参加者が埋めた。

ハイレゾロゴ

セミナーの実施スケジュール

JEITAでは、2014年3月に「ハイレゾオーディオの呼称定義」を発表したことに始まり(関連ニュース)、ハイレゾの魅力や再生スタイルを周知させるための取り組みを行ってきた。今回の「ハイレゾオーディオセミナー」もその活動の一貫で、現時点でのハイレゾ最新動向が語られる場となった。

なお、JEITAが上述の「ハイレゾオーディオの呼称定義」を発表した3ヶ月後には、一般社団法人 日本オーディオ協会が「ハイレゾ対応機器の定義」を発表している(関連ニュース)。つまり“ハイレゾに関する定義”をそれぞれに策定している関係のJEITAとオーディオ協会だが、今回のイベントには両者とも出席し、それぞれの活動と取り組み・違いが説明された。

さらに大きな特徴は、その二者だけで終わらず、音楽ソフト業界、配信業界、放送業界、音楽制作業界からもゲストスピーカーが登場し、それぞれの立場からハイレゾに関する現時点の課題と展望が語られたことだ。本記事では、トータル4時間半に及ぶスピーチで語られた内容を簡単にお伝えしていきたい。

■変化する音楽リスナーの生活意識に、ハイレゾはどう寄り添うか

イベントの冒頭では、JEITAのオーディオ・ビジュアル事業委員会 委員長 嶋宮英昭氏が挨拶を行った。嶋宮氏は“ハイレゾオーディオ”について「業界として久しぶりのトレンドであり、市場活性化の追い風である」と述べた。

嶋宮英昭氏

JEITAの組織について簡単に紹介

オーディオ機器市場は、最盛期の1990〜2000年代にホームステレオ製品で300万台が出荷されていたものの、2010年代にはそれが約39万台まで落ち込み、以降は2020年まで横ばいに推移していくと見られている。嶋宮氏はその理由を、「決して音楽を聴くユーザーが減ったからというわけではない。むしろ音楽愛好家は昔と変わらず多く存在するが、音楽を聴くためのスタイルが変化し、趣味性が多様化したことが大きい。その結果として、ポータブルデバイスやヘッドホンが市場のメインになってきている。音楽の傍らにある“ユーザーの生活意識”そのものが変化したことが大きなポイントだ」と分析した。

ステレオセットの国内出荷台数推移

若年層ほどポータブルデバイスで音楽を楽しんでいる

また「ネット通販の浸透により、製品だけでなく音楽コンテンツの流通も変化しており、音楽愛好家が音楽を聴くまでに辿るプロセスが多様化している。今回はそんな最新のオーディオ市場に対する各業界の取り組みと課題を紹介していく」とした。

■「JEITAとオーディオ協会は友好な関係」。それぞれの違いと“ハイレゾ定義”

はじめに登場したJEITAのネットワークオーディオ専門委員会 委員長 前垣宏親氏は、これまでに同委員会が行ってきた活動を報告した。なお、前垣氏はヤマハ(株)の楽器・音響開発本部に所属する人物で、普段は音響機器の開発に従事している。

前垣宏親氏

ネットワークオーディオ専門委員会はJEITA内で2007年からスタートした組織で、ネットワークオーディオの市場活性化を目的に、技術動向の検討と情報共有を行っている。現在の参加会社は、オンキヨー&パイオニア、JVCケンウッド、シャープ、ソニー、D&Mホールディングス、東芝ライフスタイル、パナソニック、ヤマハの8社で、2014年からは“ハイレゾ”を主なテーマに掲げて活動してきた。

JEITAネットワークオーディオ専門委員会の説明

前垣氏は、2014年を“ハイレゾ黎明期”、2015年を“ハイレゾ成長期”、そして2016年を“ハイレゾ拡大期”と位置づけて、各段階におけるJEITAの取り組みを紹介した。

2014年はまだハイレゾがそこまで浸透していなかったため、ハイレゾという存在を知ってもらうことを目的に活動したという。「まず3月に“ハイレゾ音源の定義”を発表。10月のCEATECでは、ハイレゾを聴く再生環境の訴求を行った。この活動からは、様々な反応が得られた。特に、ハイレゾと非ハイレゾを聴き比べたいという一般の声がとても多かった。これらの反応から、ハイレゾというものへの興味を引くことができたと思っている」。

JEITAが発表したハイレゾの定義

CEATEC 2014でもハイレゾ訴求展示を実施

続いて2015年は、実際にハイレゾを体験できる場の提供を目標にした。「2014年に得られたフィードバックを元に、CEATECではハイレゾと非ハイレゾの聴き比べを実施した。また、スピーカー環境による再生デモや、ハイレゾ音源を購入するための手順説明なども展示した。結果、CEATECの4日間とも整列入場してもらわなくてはならないほどブースは盛況だった。ハイレゾの良さをよく知ってもらえたと思う」と語った。

2015年のCEATEC展示コンセプト

整列入場するほどブースは大入り満員に

そして2016年に関しては、新規ユーザーの掘り起こしを行っていくという。「今年1月に行ったユーザー調査では、若年層ほどパーソナルデバイスで音楽を楽しんでおり、音楽をダウンロード購入する割合が多い。つまり若年層はハイレゾ再生環境を元から持っていて、ダウンロードするための環境も整っているということ。これはハイレゾを浸透させるチャンスだと思うので、ここから新規ユーザーを掘り起こしていきたい」とした。

JEITAが行ったハイレゾ使用実施調査の結果。若年層ほどポータブルデバイスで音楽を聴き、ダウンロード購入の比率が高い

そして「ハード、ソフト、サービスに至るまで、ハイレゾを取り巻く環境は多様化しているので、各業界が手をつないでもっと有用に活動していけばもっとハイレゾが広がる。ハイレゾの大きな1つの輪を作り、ハイレゾのハーモニーを奏でたい」と結んだ。

続いて登場したのは(社)日本オーディオ協会の安島浩輔氏。日本オーディオ協会は、その活動の中で最も大きな「オーディオ・ホームシアター展(音展)」のイベントで、ハイレゾ対応機器の展示やハイレゾにまつわるセミナーを開催するなど、積極的な訴求活動を行っている。

安島浩輔氏

日本オーディオ協会の活動内容について

上述の通り、ハイレゾ音源の定義を策定したJEITAに対して、日本オーディオ協会ではハイレゾ対応機器の定義を発表している。安島氏は両者の違いを、「日本オーディオ協会は文化的事業を中心に活動し、オーディオ・ホームシアター展を運営している。JEITAは産業的事業を中心に活動し、CEATECを運営している」と説明。そんな両者の関係について、「JEITAとオーディオ協会は友好な関係を築いている」と述べた。

日本オーディオ協会とJEITAの違い

JEITAが発表したハイレゾ音源の定義では、サンプリング周波数44.1/48kHz、量子化ビット数16bitをCDスペックとし、それを上回る仕様の音源をハイレゾと呼称する(関連ニュース)。一方で、オーディオ協会がハイレゾ再生機器(民生用)に求めるスペックは、デジタル系は96kHz/24bit以上への対応、アナログ系は基本的に40kHz以上の高域再生への対応が定義されている(関連ニュース)。

JEITAによるハイレゾ音源の定義

日本オーディオ協会によるハイレゾ対応機器(民生用)の定義


日本オーディオ協会では、上述のハイレゾ対応機器の定義に準拠する製品にハイレゾロゴを付与するなどの取り組みを行っている

JEITAと日本オーディオ協会の定義を図式化するとこのようになる
日本オーディオ協会では、上述のスペックを満たすハイレゾ対応機器に付与する公式ロゴを定め、普及に努めている。昨年は米国CTAとのパートナーシップ契約も結び、CTAの会員企業がこのハイレゾロゴを使用できるようになった。安島氏は「このようにハイレゾロゴは国際的に認知されて使われている。また対応機器への付与だけではなく、moraなどのハイレゾ配信配信業者とも協力してロゴの普及に取り組んでいる」と紹介。他にもイギリスのMeridianや、三菱のカーオーディオDIATONEの公式サイト等、国内外を問わず幅広い製品分野で積極的にハイレゾロゴが使用されていることをアピールした。

米国CTAとのパートナーシップ契約

moraなどのハイレゾ配信配信業者とも協力してロゴの普及に取り組んでいる


イギリスのMeridianオーディオや、三菱のカーオーディオDIATONEの公式サイト等、国内外を問わず幅広い製品分野でハイレゾロゴは使用されている
安島氏によれば、オーディオ協会の定めるハイレゾロゴを使用しているのは現時点で合計67社。対象機種は520機種にのぼり、一番増えているのはヘッドホン/イヤホン製品とのことだ。

ハイレゾロゴを使用しているのは現時点で合計67社。対象機種は520機種

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