公開日 2021/07/30 16:03
アリス=紗良・オットが語る、空間オーディオ対応作品「Echoes of Life」の魅力
アーティストの創造力も刺激する技術
7月30日にリリースされたアリス=紗良・オットの新譜『Echoes of Life』の、デジタル配信が始まった。Apple Musicではドルビーアトモスによる空間オーディオ、ならびに96kHz/24bitのハイレゾロスレス再生が楽しめる。
Apple Musicの空間オーディオとハイレゾロスレス、ならびにロスレス音質による再生はiPhoneにiPad、Mac、Apple TV 4Kなど、HomePod miniを除くアップルのデバイスが対応している。それぞれ「ミュージック」アプリから必要な「オーディオ設定」の項目をオンにすることで利用できる。Android版「Apple Music」アプリでも今月下旬から空間オーディオとロスレス再生が楽しめるようになった。
■ショパンと7つのコンテンポラリーが紡ぎ出す『Echoes of Life』の世界観とは
『Echoes of Life(エコーズ・オブ・ライフ)』は、クラシックピアニストであるアリス=紗良・オットが、ドイツ・グラモフォンからリリースする記念すべき10作目のアルバムだ。フレデリック・ショパン「24の前奏曲 作品28」の合間をゴンザレス、武満徹、アルヴォ・ペルト、ジョルジ・リゲティらによるコンテンポラリークラシックの作品が紡ぎ、深遠な音楽の世界を浮かび上がらせる。全31曲・1時間5分の力作。アルバムを飾るラストの楽曲、オット自身の作曲による『Lullaby to Eternity』も必聴だ。
オットは最新作品に込めた思いを次のように語っている。
「このアルバムは私の人生に影響を与えた瞬間と、その時に感じた思いを振り返った集大成であり、今日にアーティストとして在る自分の姿そのものを描いています」
ショパンの前奏曲の合間を個性的な楽曲がつなぐ。ユニークなアルバムの構成は「私たちの人生がまた、予期せぬ出会いと経験の連続により成り立っていること」を象徴するものであるとオットは説いている。
オットが選曲した7つの現代曲は、自身の最も繊細な経験と結び付いているという。ショパンの「24の前奏曲」により太い中心線を描き、その周辺に作曲スタイルが異なる7つの作品を巧みに配置した。オットは音楽の持つ流動的で多様性に富む体験、様々な視点と文脈によって異なる表情をオーディエンスに突きつける。そして同時に、一人ひとりのオーディエンスに最も近い距離で語りかけることにも本作で挑戦しているのだ。
■アーティストとオーディエンスの距離を縮める空間オーディオの魅力
Apple Musicに代表されるデジタル音楽配信が変える「人と音楽との関係性」を、オットも日々強く意識しているという。
「音楽ストリーミングというツールを得たことで、私たちは様々なアルバムやアーティストの楽曲を組み合わせてみたり、その瞬間の気分に合わせて聴くことが簡単にできます。音楽を聴くシーンもまたキッチンに立って料理をしたり、瞑想や勉強に集中しながら、あるいは友だちとの華やかなパーティなど多様性に富んでいます。音楽に関連する最先端のデジタルテクノロジーが、私たちにパーソナルでインタラクティブなリスニングを体験することを日常の喜びとしてくれました」
ドルビーアトモスによる空間オーディオで聴けるオットの作品は、筆者が本稿を執筆している7月30日時点で、ほかにも2018年にリリースした3人のフランス人作曲家の代表作を集めた『ナイトフォール』がある。オットは自身の「空間オーディオ体験」、あるいはそのテクノロジーが持つ可能性についても次のようにコメントしている。
「私は今の時代を生きるひとりの音楽家として、音楽という文化を次の世代に責任を持ってバトンを渡したいと考えるようになりました。そのためには新たに開発されたテクノロジーも活用して、過去の演奏や録音から得られる経験を高めることも大事だと考えます。私が最初にドルビーアトモスによる空間オーディオ版としてミックスされた『Echoes of Life』をベルリンのスタジオで聴いた時に、その透明感と豊かな空間の広がりに圧倒されました。すべての音楽ファンが自宅に高価なハイファイオーディオを持っている訳ではありません。だからこそ、一般的なヘッドホンやイヤホンで、空間オーディオがこの臨場感あふれるサウンドを再現できることに大きな可能性を感じています」
自身が演奏したピアノの音像が目の前に広がり、あたかも手に触れることさえできそうな距離感で聴く感覚も斬新だったとオットは振り返る。そして、空間オーディオはアーティストの創造力も刺激する技術になるという思いを強くしたそうだ。
「クラシックコンサートはホールの座席よりも、あるいはオーケストラの中心に座って音楽を聴いてみたいと考える音楽ファンの方が大勢いらっしゃると思います。現実にそれは難しいことだとしても、空間オーディオならばできるかもしれません。オーディエンスと私たちアーティストが互いに創造を膨らませることにより、あらたな音楽の楽しみ方を探求できるのです」と、息を弾ませながら語るオットの視線は、新たな形の音楽体験をしっかりと捉えているようだった。
■クラシック系・空間オーディオ作品数は年末までには倍に増える
筆者も7月30日の深夜、Apple Musicのカタログに加わったばかりの『Echoes of Life』をiPhone 12 Pro MaxとAirPods Maxの組み合わせで聴いた。空間オーディオの醍醐味である、360度周囲を音楽に包まれるような感覚がとても自然に再現される。ピアノの繊細なタッチ、躍動感あふれる演奏の描き分けが、豊かな空間の中でますます鮮明に見えてくる。演奏者の言葉を借りるならば「まるで手に触れられそうなほど近い距離」に、音の実体感が迫ってくるのだ。空間オーディオのテクノロジーと見事にマッチする名作がまたひとつ誕生したと思う。
Apple Musicでは現在、空間オーディオに対応する約150のクラシック音楽ジャンルのアルバム作品を揃えている。年末までには空間オーディオ対応のクラシック系アルバム作品数を約300に増やし、またハイレゾロスレスを含む、ロスレス品質以上のアルバム作品は50万以上を目指す。
アリス=紗良・オットは『Echoes of Life』のワールドコンサートツアーに向けて始動している。本年11月7日に予定しているロンドン公演ではビデオプロジェクションなど音楽分野以外のアーティストとのコラボレーションにも挑戦するという。見どころあふれるツアーの続報に期待したい。
Apple Musicの空間オーディオとハイレゾロスレス、ならびにロスレス音質による再生はiPhoneにiPad、Mac、Apple TV 4Kなど、HomePod miniを除くアップルのデバイスが対応している。それぞれ「ミュージック」アプリから必要な「オーディオ設定」の項目をオンにすることで利用できる。Android版「Apple Music」アプリでも今月下旬から空間オーディオとロスレス再生が楽しめるようになった。
■ショパンと7つのコンテンポラリーが紡ぎ出す『Echoes of Life』の世界観とは
『Echoes of Life(エコーズ・オブ・ライフ)』は、クラシックピアニストであるアリス=紗良・オットが、ドイツ・グラモフォンからリリースする記念すべき10作目のアルバムだ。フレデリック・ショパン「24の前奏曲 作品28」の合間をゴンザレス、武満徹、アルヴォ・ペルト、ジョルジ・リゲティらによるコンテンポラリークラシックの作品が紡ぎ、深遠な音楽の世界を浮かび上がらせる。全31曲・1時間5分の力作。アルバムを飾るラストの楽曲、オット自身の作曲による『Lullaby to Eternity』も必聴だ。
オットは最新作品に込めた思いを次のように語っている。
「このアルバムは私の人生に影響を与えた瞬間と、その時に感じた思いを振り返った集大成であり、今日にアーティストとして在る自分の姿そのものを描いています」
ショパンの前奏曲の合間を個性的な楽曲がつなぐ。ユニークなアルバムの構成は「私たちの人生がまた、予期せぬ出会いと経験の連続により成り立っていること」を象徴するものであるとオットは説いている。
オットが選曲した7つの現代曲は、自身の最も繊細な経験と結び付いているという。ショパンの「24の前奏曲」により太い中心線を描き、その周辺に作曲スタイルが異なる7つの作品を巧みに配置した。オットは音楽の持つ流動的で多様性に富む体験、様々な視点と文脈によって異なる表情をオーディエンスに突きつける。そして同時に、一人ひとりのオーディエンスに最も近い距離で語りかけることにも本作で挑戦しているのだ。
■アーティストとオーディエンスの距離を縮める空間オーディオの魅力
Apple Musicに代表されるデジタル音楽配信が変える「人と音楽との関係性」を、オットも日々強く意識しているという。
「音楽ストリーミングというツールを得たことで、私たちは様々なアルバムやアーティストの楽曲を組み合わせてみたり、その瞬間の気分に合わせて聴くことが簡単にできます。音楽を聴くシーンもまたキッチンに立って料理をしたり、瞑想や勉強に集中しながら、あるいは友だちとの華やかなパーティなど多様性に富んでいます。音楽に関連する最先端のデジタルテクノロジーが、私たちにパーソナルでインタラクティブなリスニングを体験することを日常の喜びとしてくれました」
ドルビーアトモスによる空間オーディオで聴けるオットの作品は、筆者が本稿を執筆している7月30日時点で、ほかにも2018年にリリースした3人のフランス人作曲家の代表作を集めた『ナイトフォール』がある。オットは自身の「空間オーディオ体験」、あるいはそのテクノロジーが持つ可能性についても次のようにコメントしている。
「私は今の時代を生きるひとりの音楽家として、音楽という文化を次の世代に責任を持ってバトンを渡したいと考えるようになりました。そのためには新たに開発されたテクノロジーも活用して、過去の演奏や録音から得られる経験を高めることも大事だと考えます。私が最初にドルビーアトモスによる空間オーディオ版としてミックスされた『Echoes of Life』をベルリンのスタジオで聴いた時に、その透明感と豊かな空間の広がりに圧倒されました。すべての音楽ファンが自宅に高価なハイファイオーディオを持っている訳ではありません。だからこそ、一般的なヘッドホンやイヤホンで、空間オーディオがこの臨場感あふれるサウンドを再現できることに大きな可能性を感じています」
自身が演奏したピアノの音像が目の前に広がり、あたかも手に触れることさえできそうな距離感で聴く感覚も斬新だったとオットは振り返る。そして、空間オーディオはアーティストの創造力も刺激する技術になるという思いを強くしたそうだ。
「クラシックコンサートはホールの座席よりも、あるいはオーケストラの中心に座って音楽を聴いてみたいと考える音楽ファンの方が大勢いらっしゃると思います。現実にそれは難しいことだとしても、空間オーディオならばできるかもしれません。オーディエンスと私たちアーティストが互いに創造を膨らませることにより、あらたな音楽の楽しみ方を探求できるのです」と、息を弾ませながら語るオットの視線は、新たな形の音楽体験をしっかりと捉えているようだった。
■クラシック系・空間オーディオ作品数は年末までには倍に増える
筆者も7月30日の深夜、Apple Musicのカタログに加わったばかりの『Echoes of Life』をiPhone 12 Pro MaxとAirPods Maxの組み合わせで聴いた。空間オーディオの醍醐味である、360度周囲を音楽に包まれるような感覚がとても自然に再現される。ピアノの繊細なタッチ、躍動感あふれる演奏の描き分けが、豊かな空間の中でますます鮮明に見えてくる。演奏者の言葉を借りるならば「まるで手に触れられそうなほど近い距離」に、音の実体感が迫ってくるのだ。空間オーディオのテクノロジーと見事にマッチする名作がまたひとつ誕生したと思う。
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