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公開日 2020/10/12 16:18

オーディオ哲学宗教談義 Season3の第3回、テーマは「私たちは何を聴いてきたか」『音楽における宗教性』

黒崎政男氏と島田裕巳氏が語る
季刊analog編集部
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哲学者・黒崎政男氏と宗教学者・島田裕巳氏が、音楽・オーディオについて対談をする「オーディオ哲学宗教談義」。2017年のSeason1では「オーディオは本当に進歩したのか」、2018年のSeason2では「存在とはメンテナンスである」、2019年はSeason3として「私たちは何を聴いてきたのか」を論じた。Seasonごとに3回に日を分けて論じており、それぞれの小テーマも掲げている。今回はそのSeason3の第3回目「私たちは何を聴いてきたのか」『音楽における宗教性』の全編をお届けしたい。

宗教学者・島田裕巳氏(左)と哲学者・黒崎政男氏(右)

音楽における宗教性

サウンドクリエイトスタッフ オーディオ哲学宗教談義Season3も最終回となりました。「私たちは何を聴いてきたのか」のテーマのもと、今シーズンもさまざまな考察を伺って参りました。

今日は「音楽における宗教性」ということを通して大テーマを考えます。キリスト教と関わりの薄い日本においても、マタイ受難曲やワグナーがよく聴かれます。そうした音楽を、私たちはどのように聴いているのかについて、お話しを伺って参ります。

今日使用するシステムは、先生方から「神がそこにいるようなシステムを」というリクエストがあり、リンKLIMAX EXAKT 350と、ヴィンテージ・スピーカーのタンノイのオートグラフをご用意いたしました。タンノイは英国製のキャビネットに、モニターゴールドのユニットが搭載されているもの。これをオクターブの真空管アンプV80SEでドライブします。

黒崎 せっかく宗教学者がいるからということでもあるのですが、音楽を聴く時に私たちは何を聴いているのかと考えた時、西欧音楽はキリスト教的伝統のうちから生い育ってくるわけで、音楽を聴くこと自体がある意味聖なるものではないかと漠然と思っているわけです。そういうわけで、今日はまさに宗教的な音楽から再生してみたいと思います。

島田 Seasonで3回やって、夏休みに1回だから、今日は通算10回目です。よく続いているなあと思います。それはそうと、それぞれの音楽が持つ音楽性というものを考えるんですが、音楽を聴くときはまずやはりオーディオありきなので、オーディオと音楽の関係性について考えてみてみたいと思います。今日はこのKLIMAX EXAKT 350という、リンの売りであるEXAKTシステムで聴いていきます。

私が初めて350を聴いたのは2013年の11月23日、サウンドクリエイトの移転前の店での試聴会でした。LINN PRODUCTSのギラード社長が来ていて、LP12でポール・サイモンの「グレイスランド」をかけました。まずはこれを聴いてください。ストリーミング再生、TIDALで。

〜ポール・サイモン「グレイスランド」〜KLIMAX EXAKT 350でTIDAL再生


ポール・サイモン「グレイスランド」
島田 ギラードのイベントで聴いた時からはシステムが大きく2段階進化していて、KLIMAX EXAKT 350に搭載されるDACがKatalystという新型に変わったのと、今はストリーミングだったけれど、レコードの場合ならデジタルのフォノイコライザーのURIKAUでEXAKT伝送できるので、それを聴けたらと思ったのですが、レコードを用意できず申し訳ない! おそらくもっとすごい音がするんじゃないかな。ギラードのデモンストレーションの時に本当にすごいなと思って、ギラードに「すごいですね。でも、なかなか高いですね」と話をしたら、彼が「頑張って買ってください」と(笑)。まあ、これは買えませんでしたが、後に出たEXAKT AKUDORIKを買ったわけです。


宗教学者・島田裕己氏
さて、これからサイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」をかけます。ポール・サイモンの曲は、読み取ろうと思うと非常に複雑で難しいです。「グレイスランド」は女房に逃げられた時の話で、残された小さな子供と一緒にグレイスランドに向かおうとする。そこはエルヴィス・プレスリーの住んでいた有名なところですけれど、ポール・サイモンはエルヴィス・プレスリーと直接関係ないみたいなことを言っていたりする。その点でよく分からないのですが、グレイスランドに我々2人は受け入れてもらえるみたいな。そういうお話。深く分析していくと、いろんなものが出てくると思います。

黒崎 プレスリーの意味とか。

島田 グレイスランドの意味とか。

黒崎 小泉元首相も訪れたとか。

島田 そうです、そうです。

黒崎 プレスリーの聖地になっているわけですね?

島田 余計な話ですけど、最近富岡八幡宮で事件があって……宮司が弟に殺されたという。その時の犯行現場が宮司さんの住んでいた家で、事件の後にすぐ見に行きました。その家がグレイスランドのエルビスの家と似ていたんです。

黒崎 『神社崩壊』という本を書いていらっしゃいましたよね。

〜サイモン&ガーファンクル「明日に架ける橋」〜

島田 いまはもう解体されてなくなった。余談でした…。では「明日に架ける橋」。青春の歌ですね。

黒崎 そうですね。知らないという方はいらっしゃいますか?……いないですね。

島田 1970年、日本でリリースされたのが3月でした。当時はジャズに目覚めたころで、マイルスの『ビッチェズ・ブリュー』と『明日に掛ける橋』がほとんど同時期で、両方一緒に聴いていました。1970年と言えば、寺島靖国さんのメグが吉祥寺に開店した年ですね。

〜サイモン&ガーファンクル「明日に架ける橋」〜KLIMAX EXAKT 350でTIDAL再生


サイモン&ガーファンクル「明日に架ける橋」
黒崎 どうですか? また今回もゴスペル入っているかいないか、みたいな(笑)。

島田 ピアノの弾き方からしてゴスペル調だし、ガーファンクルの歌い方もまるで教会音楽のようですね。高校生だった私がこの曲を初めて聴いた時には、ちょっと「上から目線」に感じたところもありました。荒波が寄せるところに架けられた橋のように、自分の身を捧げるみたいな。それまでサイモン&ガーファンクルが歌っていた曲からすると、かなり雰囲気が違った。


宗教学者・島田裕巳氏
黒崎 いまでこそ分かるけど、当時はあんまり歌詞の意味は意識していなくて、単純に気持ちのいい曲だと聴いていたような気がする。だからいま、歌詞まで聴き取れるようになって、あんな困難が歌われている……、それでいて薄っぺらい感じがしないのは不思議ですよね。日本語だと下手すると白々しくなる。

島田 今だと、「グレイスランド」みたいに、女房に逃げられた歌を作る人もいないし。「明日に架ける橋」みたいに神々しい歌を作るシンガーソングライターもいない。

黒崎 最初にヒットしたのは、「サウンド・オブ・サイレンス」だよね。当時小学生で「『卒業』(映画)観に行く〜」とか言ったら、「政男くんにはちょっと早いんじゃないかなー」って。ダスティン・ホフマンが若くてさあ。娘と恋をしていたら、お母さんのミセス・ロビンソンに手を出されて、変な関係になってしまう……という話だもの。ラストシーンで流れるのが「サウンド・オブ・サイレンス」。子どもには早いと言われてもあの時は意味が分からなかったのだろうな。

島田 子供に見せたってどうせ分からないよ。

黒崎 そうだね。どうせ分からないよね! それはそうと「サウンド・オブ・サイレンス」もインパクトのある曲でしたよね。


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