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本日配信開始、6月7日まで限定15%OFF

DSD/PCM計9種類も作った井筒香奈江のハイレゾ新作、制作過程を聞いた

構成:ファイルウェブオーディオ編集部・筑井真奈

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2020年05月27日
本日5月27日より、井筒香奈江が昨年「キング関口台スタジオ」で収録したダイレクトカッティングの音源が、e-onkyo musicでハイレゾ配信開始する

レコードのA面(スパルタカス 愛のテーマ〜Superstar)、B面(カナリア〜500マイル)それぞれを1曲とした2曲構成で、PCM5パターン、DSD4パターンの合計9種類の音源が配信される。

本日よりe-onkyo musicにて「Direct Cutting at KING SEKIGUCHIDAI STUDIO」配信開始

いったいどれを買えばよいのだろう、と迷ってしまうところだが、これら複数のフォーマットでの配信することになったのは、制作者サイドのさまざまなこだわりが背景にあるという。

今回は井筒香奈江本人に加え、レコーディングを担当した高田英男、そしてキング関口台スタジオで技術サポートを行なった高橋邦明、上田佳子の各氏を迎え、このハイレゾ音源はどのようにして制作されたのか、その裏話を聞くことができた。

なお、この取材はコロナウイルス蔓延の状況を鑑み、zoomを使ってのオンライン取材という形で行われた。

zoomを使ってオンライン取材が行われた


■「Direct Cutting at KING SEKIGUCHIDAI STUDIO」について

昨年9月と10月に、キング関口台スタジオにて国内では40年ぶりとなるダイレクトカッティングが実現した。ダイレクトカッティングとは、収録した音楽データを、一切のデジタル化の工程を経ず、そのままラッカー盤に刻む「究極の一発録り」のことである。


キング関口台スタジオでの収録に挑む井筒香奈江(photo by Kumi Watanabe)
歌手の井筒香奈江を中心に、気心の知れたミュージシャンたちが織りなす緊張感溢れるプレイがレコード盤に刻まれ、昨年11月より発売開始し、大ヒットを記録した。

本日配信される音源は、この日同時にProtoolsならびにPyramixで収録されていたデジタル音源が元になっている。

■配信されるハイレゾ音源について
今回配信されるハイレゾ音源は、以下の9パターンになる。
DSD系(4種類):価格は全て4,400円(税込)
(1)DFF 11.2MHz
(2)DSF 11.2MHz
(3)DFF 5.6MHz
(4)DSF 5.6MHz

PCM系(5種類):価格は全て3,080円(税込)
(5)WAV 192kHz/32bit 整数
(6)WAV/FLAC 192kHz/24bit
(7)WAV/FLAC 96kHz/24bit

なお、本日から6月7日までの期間限定で、全音源が15%オフのキャンペーンが開催される。2種類以上購入して聴き比べをしたい! という方にとって非常に魅力的なキャンペーンとなっている。


【登場メンバー】
井筒香奈江


シンガー/オーディオクイーン。2011年に発売したカバー曲集『時のまにまに』が、オーディオファンの間で人気を博す。2018年、高田英男とタッグを組み『Laidback2018』をリリース。2019年、キング関口台スタジオの「ダイレクトカッティング」プロジェクトに、第一弾アーティストとして選ばれた。

高田英男


録音エンジニア。日本音楽スタジオ協会会長。ビクタースタジオにて小泉今日子などのアイドルからジャズ、フュージョンまで幅広くレコーディングを手がける。鬼太鼓座や芸能山城組など、高音質録音の第一人者としても知られ、ハイレゾの推進にも力を入れており、苫米地義久など日本プロ音楽録音賞も多数受賞。

高橋邦明


キングレコードのみならず、多くのミュージシャンのレコーディング・マスタリングを手がけるキング関口台スタジオの技術部長。Pyramixの導入やノイマンのカッティングマシンの導入など、スタジオの新しい試みに力を入れる。趣味はマラソン。

上田佳子


Bunkamuraスタジオやメモリーテックのマスタリングスタジオでマスタリングの経験を積んだのち、キング関口台スタジオに移籍。以前からカッティングに関心を持っていたこともあり、40年ぶりとなるダイレクトカッティングにカッティングエンジニアとして初参加。趣味は写真。

■ダイナミックオーディオ4FでDSD 11.2MHzの音を聴き、配信スタートを決断

ーーそもそも、なぜダイレクトカッティングの音源をハイレゾ配信することになったのですか?

井筒 せっかくレコーディングをするんだから、デジタルでも アーカイブしておきましょうというアイデアは当初からありました。キングさんのスタジオで、PyramixのDSD 11.2MHzと、PCMの192kHz/32bit floatで収録しました。

高田 自分が録音した音を再生した時に、あまり音が変わらないのが理想のレコーダーです。長い間アナログの1インチ幅 76センチ/秒のテープが私の理想でしたが、ハイレゾ時代になり、PCMの384kHz/32bitやDSD 11.2MHzまで実現できるようになると、今まで体験したことがないデジタルの音世界があるように感じるようになりました。どちらかというとPCMの384kHzの方が、録った音とプレイバックが変わらないのですが、DSDには独特の音の深みがあり、それが非常に心地よいのです。

Pyramixによる11.2MHzDSDと、Protoolsによる192kHz/32bitを同時に録音

井筒 今年の2月に、ダイナミックオーディオさんの4Fをお借りして、最高級のオーディオ装置で収録した11.2MHzの音源を聴いたんです。本当にすごかったです。こんな風に録れていたんだ! こんな現場にいたんだ! って改めてびっくりしました。キングさんのスタジオ感というか、スタジオの広さ、天井の高さ、響きなどがぎゅうっと入っていて、非常に面白いなと思いました。前作「Laidback2018」はソニーの乃木坂スタジオで収録したものですが、こちらと比べても全然違って、それぞれのスタジオの雰囲気が出ているのです。これはぜひみなさまにも聴いていただきたい! と思い、配信を決定しました。

■マスターの「DSDIFF」と「DSF」を聴き比べ、限りなくマスター音質に近い方式を採用

ーーこの配信では、DSDだけでも4パターン配信されていますが、一体何が異なるのでしょうか?

高田 Pyramixで収録したDSDというのは、「DSDIFF」11.2MHzという形式(拡張子は.dff)で保存されています。この形式は、いまのハイレゾ再生では必須のメタデータやジャケット画像を反映することができないため、同じDSDでもタグ情報を持つことができる「DSF」というファイル形式(拡張子は.dsf)に変換しなければなりません。そのため、Pyramixで一旦DXDに変換し、曲の最初と最後を編集して「DSF」で書き出す、というのがこれまでのやり方です。ですがこの時に、やっぱりオリジナルマスターの音と、DSFの音の違いがすごく気になったんです。もうちょっとオリジナルマスターの音に近づけないかと考えて、高橋さん、上田さんに相談しました。

高橋 そこで実験的に、民生用のコルグ「Audio Gate」、それにタスカムの「Hi-Res Editor」を使って、「DSDIFF」から「DSF」に書き出してみました。しかし、これもやはり音が違うのです。bitのレベルでは一致していることを確認したのですが、やはり再生音が違う。「Audio Gate」と「Hi-Res Editor」でも異なります。複数人で試聴しましたが、最初にPyramixで作ったものの方が、音質的に好ましく考えられました。とても不思議な現象です。

そこで、今度はPyramixで、「DSDIFF」のオリジナルマスター音源の最初と最後を、カットインカットアウトして、新たに「DSDIFF」の音源を作りました。この処理は、DSDのまま行われています。試聴の結果、この音源が音質的にも元のマスターに限りなく近い。ということで、これを(1)「DFF 11.2MHz」として配信することにしました。しかし、DFFというのは再生において扱いづらいところがありますので、このマスターから、Pyramixで(2)「DSF 11.2MHz」データを作ったのです。


オリジナルのDFFデータから、一度もPCM過程を経ずに、PyramixでDFFデータを作成
ーー(1)と(2)については、録ったそのままの音源から、一度もPCMには変換されていないデータ、つまり「DSD Native」ということになりますね。

高田 そうです。5.6MHz DSDのデータについては、(1)のデータからPyramixでダウンコンバートして、(3)「DFF 5.6MHz」と(4)「DSF 5.6MHz」の2パターンを作成しています。

井筒 元々の「ダイレクトカッティング」のプロジェクト自体が、オーディオファン、音にこだわる音楽ファン向けの尖ったアイテムでしたので、ハイレゾ配信も思い切って尖ったことをやろう! と考えたのです。

PCM音源へのこだわりは?

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