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公開日 2022/08/01 06:35

音楽の海に惑溺する楽しみ。ファイル再生を進化させるDELAのミュージックライブラリー「N50」を聴く

【特別企画】USB-DAC再生とネットワーク再生で音質を検証
石原 俊
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初代モデル「N1A」の筐体を踏襲しながら、内実は大幅にアップデート



DELAが新型のミュージックライブラリー「N50」をリリースした。N50は同社が2014年に発売して以来改善を重ねてきた「N1A」をリニューアルしたものである。「N1A」が画期的であったのは、それまでPC周辺機器という扱いだったNASを、オーディオ機器との親和性が高い「ミュージックライブラリー」と再定義し、外観もオーディオグレードにふさわしく横型フルサイズとしたことにある。N50はこの筐体を受け継いでいる。

DELA ミュージックライブラリー「N50」(価格:275,000円/税込) photo by 大原朋美(彩虹舎)

N1A/Zが、アップデートによってUSB-DACとのUSB接続を実現したのは画期的なことであった。NASはネットワークプレーヤーと併用しなければならなかった。CDリッピングを含む数々のアップデートによってファイル再生のハードルはずいぶん低くなった。筆者も市場に出たばかりのN1Aを手に入れ、USB-DACとダイレクトに結線して楽しませてもらった。

アップデートで追加された優れた特徴のひとつが、「フロントパネルでのPCレス・アプリレス操作」だ。フロントパネル右側に4つ並んでいるボタンの左から2番目の決定ボタンを押して、メニュー画面を呼び出し「USB-DAC再生」を選択する。もう一度決定して「フォルダー」を選択し、さらに決定して音楽ファイルを選択する。もう一度決定を押すと楽曲のタイトルの下に「再生」というアイコンが現れ、さらに決定を押すと音楽が始まる。文字だと複雑な手順のように受け取られるかもしれないが、一連の作業は続けてボタンを押していくだけで直感的に行える。操作の要諦は最初のメニューで「USB-DAC再生」を選択することだ。

アップデートでは音質面でも「再生エンジンのアップデート」「マーカーレスDSD再生」などの向上が図られてきた。

本体ボタンで操作することで、アプリやPCを使わなくても楽曲の選択、再生ができるのもDELAの特徴

筐体こそ踏襲したものの、N50の内容はN1Aとは別物といっても過言ではない。この種のエレクトロニクスの心臓部ともいえるメインボードはクロックが上位品に変更されており、電源はN1Aシリーズからさらに25%高出力品にパワーアップされている。記録媒体は最近の「N1A/3」でも選択できた2TBのSSD(ソリッドステートドライブ)がN50では標準搭載となった。ただしN1A/3ではシリコンブッシュでフロートされていたSSDが、N50では 1.6mm厚の鋼板にリジッドに取り付けられている。

「N50」の内部。SSDは本体右に搭載、シャーシから浮かせた状態でマウントしており、万全の振動対策がなされている

初代「N1A」の内部。HDDが左右に2基搭載されていた

DACと接続するためのUSB出力端子は「N1A/2」以降と同様のノイトリック社製。その他、近年のDELAが身に着けたピュアオーディオ的設計思想が随所に盛り込まれている。

USB-DACへの接続専用のUSB出力端子は、ノイトリック製の高品位なものを採用。N1Aからの外観上の大きなアップデートとなる

今回、比較試聴のために第一世代の「N1A」(2014年モデル)も借用したのだが、フロント側から見る限り両者の違いはほとんどないが、当初のN1Aにはノイトリック端子は無く、脚部がウッド。N50では脚部がシルバー色になっていることが見て取れる。

「N50」の背面端子。バックアップや増設ドライブ用のUSB typeA端子を搭載。RJ-45のネットワーク端子も2系統装備する

USB-DAC再生で試聴。ワイドレンジでSN良好、オーケストラの姿が堅固なものに



まずは「N1A」(第一世代)から聴いてみた。DAC変換はアキュフェーズのディスクプレーヤー「DP-750」のUSB-DAC部で行った。

アキュフェーズの一体型SACD/CDプレーヤーの最上位機「DP-750」のDAC部を活用し、USB-DAC接続における音質をチェック

楽曲は、カルロス・クライバー指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によるベートーヴェンの交響曲第5番ハ短調・通称「運命」(1974年3〜4月にウィーン、ムジークフェラインザールでドイツグラモフォンが録音)を呼び出した。冒頭、タタタターンというリズムのいわゆる「運命の動機」が鳴り響く。なかなかの解像度である。

このファイルはMQA-CDからリッピングされたものである。DP-750はMQAデコード機能を有していないのだが、それでも現代最高峰の再生音の一つがそこにある。あら捜し的な聴き方をすると、自宅で使用しているトップモデルのN10よりも少し音が緩いように感じられなくもない。だが、これはしなやかな筐体と回転媒体であるHDDがもたらすスイング感とも受け取れる。

次いでN50を聴いた。一聴、こちらのほうがオーディオ的に優れていると思った。よりワイドレンジで聴感上のSN比が高く、音場に広がりがある。最も違いの大きいのがオーケストラの描写だ。N1Aでは若干ふわふわとしていたオケの姿が、ビシッと地に足の着いた堅固なものになっている。情報量も多い。おそらくは記録媒体をSSD化してフロートさせたこと、また電源やクロックの強化などが奏功したのだろう。

「音楽の海」にダイブ。集中しながら音楽を内側から満喫できる



ところで、ローカルなファイル再生は音楽の海に潜りやすい。音楽を外から眺めるのではなく、作曲者や演奏者になり代わったつもりで、その内側に入って鑑賞できるのだ。「運命の動機」がさまざまに形を変えていくさまが見えるかのよう。

その聴き味は音楽という海に生息する海洋生物と会話を交わすのにも似ている。ストリーミング再生だと、これはまず無理である。CD再生では海に潜るのに予算がかかりすぎる憾みがある。その点、ファイル再生では比較的安価なミュージックライブラリーでも音楽の海の中を満喫できる。

N1Aでも音楽の海には潜れる。だが、それには集中力を要する。集中が途切れると聴覚は海上に浮かんできてしまう。潜水にたとえると息が続きにくいスキンダイビングといったところか。N50は集中を保つのが非常に楽だ。「運命の動機」を構成するタタタターンのバリエーションをいくつも見つけることができて楽しい。これは潜水でいえばスキューバダイビングのようなものだろう。

ここからは筆者が持ち込んだ音源のインプレッションをお届けする。ジャズは演奏の滑らかさとエネルギー感が絶妙に両立した音響世界を描く。音量を上げても演奏の細部が混濁することはなく、快適なリスニングタイムが保証される。小音量時でもエネルギー感が後退することはない。SSDを記録媒体とするモデルには、この種の音楽で迫力不足が生じがちなものもあるようだが、本機においてその心配は無用だ。

ヴォーカルはN1Aに比べて無色透明感が強い。おそらくはHDDの回転によって生じるカラーレーションのようなものがないからであろう。清潔な音場に歌手の音像だけが浮かんでいて、それ以外のものが何もないような印象だ。発音・音程とも聴き取りやすい。

クラシックはDSD2.8MHzの音楽ファイルを聴いた。CDクオリティとは次元が異なっている。金管楽器や弦楽器を補強するための木管楽器の動きが明確に聴き取れる。ちなみに「運命」冒頭のタタタターンは主に弦楽器で演奏されるのだが、なぜかクラリネットが加えられている。しかしながらCDクオリティはそれを聴き取ることができなかった。それに近い木管楽器の動きがDSDでは確実に聴き分けられる。音楽の海へのダイブはハイレゾのほうがはるかにしやすい。アクアラングが高性能になるとともに、海水の透明度が上昇したかのようだ。海の生物たちとの対話もスムーズで、彼らのほうからいろいろなことを話しかけてくる。

マランツのネットワークプレーヤーと組み合わせ。エンターテイメント性の高い表現が特徴



ここで、オーディオエレクトロニクスをマランツの「MODEL 40n」に交換し、そのネットワークプレーヤー機能を用いて、N50のサーバーとしての性能を探った。まずはMODEL 40nのアンプ部の性能を褒めよう。スピーカーはB&W「803 D4」を使ったのだが、このモデルの手強いダブルウーファーを正しくグリップしている。マランツを展開するディーアンドエムホールディングスはB&Wの輸入代理店も務めているので、同社のスピーカーに精通していることも影響しているのだろう。

マランツのネットワークプレーヤー内蔵プリメインアンプ「MODEL 40n」。N50のサーバーとしての実力を検証した

さて、その聴き味だが、DP-750とのUSB接続とは方向性が異なるように思った。DP-750でDA変換をするとアカデミズム色が強くなるのに対して、MODEL 40nとの組み合わせではエンターテイメント的な色合いが濃いように感じられたのだ。あちらでは音楽の海にダイブして海洋生物を学術調査しているかのようだったのに対して、こちらでは船底がガラス張りのプレジャーボートに乗ってガイドさんにお魚のことを説明してもらっているような気分。これはこれで楽しい。

アキュフェーズにおける分析的な聴き味に対して、MODEL 40nでは音楽に身を任せるような聴き方ができた。このことから、よりエンターテイメント性が生じたのではなかろうか。

ネットワーク再生、USB-DAC再生のいずれにおいても、N50は高性能ミュージックライブラリーとして多くのリスナーのファイル再生を支えてくれるはずである。

(提供:メルコシンクレッツ)

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