公開日 2009/08/17 11:59

「中身は別物」の新“ブルーレイDIGA”「DMR-BW970」をBW950と比較視聴

山之内 正が徹底レビュー
パナソニックのBDレコーダーは各世代ごとに着実な性能向上を実現してきた。最近は約半年という短い期間でのモデルチェンジが続いているが、それでも前作に対して確実な画質・音質の改善を積み上げ、熟成度を高めている。

しかし、新規購入なら別だが、この2年の間にDIGAを購入したユーザーは新機種の存在をそれほど意識してこなかったのではないだろうか。性能はたしかに上がっているが、あくまでマイナーチェンジ、買い替えを急ぐほどのことはない、というわけだ。

■「中身は別物」の新DIGAフラグシップモデル

2009年秋のトップモデル「DMR-BW970」(関連ニュース)もこれまでの「積み上げ型」のモデルチェンジと考えがちだが、実は今回、下位機種との違いが回路構成にも及んでおり、これまでとは根本的に成り立ちが異なる。従来通りシリーズ共通の筐体を採用しているので外見からその違いをうかがい知ることはできないのだが、「中身は別物」というメーカーの主張に誇張はなさそうだ。HDD容量の拡大や機能の新設も大きなニュースだが、特にDMR-BW970の場合は画質・音質に関わる進化が大きい。

上がDMR-BW950、下がDMR-BW970。同一条件で比較視聴した

外観はほとんど違いがないが、天板の色や光沢は異なる。左がBW970、右がBW950

世代ごとに進化してきたクロマアップサンプリングは今回さらに完成度を高めた。I/P変換後の処理に変更することで、インターレース素材において色の垂直解像度を大幅に向上させることに成功したのだ。I/P変換後だと補間精度は2倍相当に上がるため、映像の変化は誰が見ても気付くほど大きなものになる。

「リアルクロマプロセッサ」の設定は再生設定で切替が可能。「オート」にすると「リアルクロマプロセッサplus」が働く。ちなみに「ノーマル」設定にするとBW950の処理相当となる

垂直方向の色解像度向上に加えて、水平方向についてもオーバーシュートを徹底して抑え、輪郭描写をすっきりさせる方向で新たな改善を導入した。「リアルクロマプロセッサplus」と命名されたこの2つの画質改善はDMR-BW970だけに投入された新技術だ。ちなみに水平方向のシュート低減はインターレース以外の信号にも効果を発揮する。

もう1つの本機専用技術である「階調ロスレスシステム」も注目すべき内容だ。従来のプロセスに存在していた「ビット丸め」処理を排し、階調精度の劣化を回避するために、DMR-BW900以降、DIGAの核となってきた「ユニフィエ」のアルゴリズムを一部変更している。デコード、I/P変換、アップサンプリングなど各回路ブロック間の信号伝送でビット精度をキープし、きめ細かい階調再現を狙う。

■BW970と前機種BW950を同一条件で比較

筆者が予備知識なしにDMR-BW970で最初にBD-ROMを再生したとき、まず気付いた画質の変化が、まさにその階調表現であった。

DMR-BW950とDMR-BW970を同一条件でパイオニアの「KURO」に接続して見比べたのだが、まず気付いたのが本機の階調表現の緻密さである(なお視聴に使用したDMR-BW970は試作モデルで、画質や音質は最終段階ではない)。

視聴を行う山之内氏

若干の形状の差はあるものの、BW970とBW950のリモコンはほぼ同じ

《007/慰めの報酬》中盤のブレゲンツ音楽祭を舞台にした場面(チャプター13)、周囲が暗くなり始めた湖上の舞台を俯瞰するシーンの遠近感に、DMR-BW950とは明らかに異なる深さを実感した。

舞台までの距離感を描き出すのは暗闇のなかでディテールがほとんどつぶれかかった客席や舞台の存在なのだが、DMR-BW970で見ると同じシーンの僅かな陰影がなめらかな階調で浮かび上がり、奥行きの深さが伝わってくるのだ。その直後の場面では巨大で不気味な舞台装置の陰影をリアルに再現し、舞台を挟んだ客席側と舞台裏の視点の対比が説得力を増す。物理的に離れた位置の距離感、舞台装置の目が眩むような高さを再現するためには、明暗のなめらかな描写が不可欠なのだ。その階調差をていねいに描き出すことによって、わざわざブレゲンツ音楽祭の会場を借り切って敢行した撮影の意味が実感できるというわけだ。

ボンドとドミニク・グリーンが初めて顔を合わせるシーンや、Mと本部のやり取りに移ると人物のクローズアップがしばらく続くが、そこで気付くのはディテール描写のきめの細かさだ。レンズのフォーカスが主要人物の眼を正確にとらえ、周囲の人物や背景との対比を見事に際立たせる。そのフォーカス精度がDMR-BW970ではひときわ高く感じるのは、水平方向のオーバーシュートを抑えた「リアルクロマプロセッサplus」の効果によるものだろう。

次ページ気になる音質の進化はどれほどのものか?

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