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山之内 正が徹底レビュー

「中身は別物」の新“ブルーレイDIGA”「DMR-BW970」をBW950と比較視聴

公開日 2009/08/17 11:59 山之内 正
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インターレース記録のビデオ素材では人物描写以外の要素も含め、映像の立体感にさらに大きな差が出る。余分な強調を抑えることによる精細感の向上に加え、肌色も含む色の切れの良さが生む鮮鋭感が少なからぬ違いを引き出す。

小澤征爾指揮サイトウ・キネンオーケストラの《幻想》やモーツァルトのオペラ《後宮からの逃走》など、ステージのライヴ映像の質感を丹念に描き出すのは、輝度信号の輪郭と色信号の境界が細部まできれいに揃っていることに理由がありそうだ。見慣れたディスプレイでおなじみのソフトを再生して、画質にこれだけ明確な差が現れるケースは、これまで歴代のDIGA同士の比較で初めての体験だ。白飛びを巧みに抑えた自然なコントラスト感が素直な立体感を引き出していることも特筆しておきたい。

■予想以上に大きい「シアターモード」による音質向上効果

本機は音質面でも、「HDMI低クロックジッタシステム」の採用、192kHz/32ビットDAC「AK4390」や低ノイズオペアンプ、セラミックインシュレーターなどの高音質デバイス/パーツの搭載など数々の進化を図っている。中でもAVファンにとって注目に値するのが「シアターモード」の新設だろう。

左がBW970のセラミックインシュレーター。右はBW950のインシュレーター

ユニークな機能として、Uniphierで真空管の出力特性をエミュレートする「真空管サウンド」も搭載。モードは3つ用意している

「シアターモード」は、ディスクメディアの再生時に内蔵HDDとチューナー回路を完全に停止し、さらにファンを低回転モードに切り替え、静音動作にするというもの。このモードに入ることで再生専用機に近い構成になり、音質改善が期待できるのだという。なお、同モードにするためには、あらかじめ初期設定でシアターモードを「入」にしておかなければならない。



実際の効果は予想以上に大きく、再生装置のグレードによっては、目を見張るような違いが生まれることがある。変化はあらゆる要素に及び、強弱の変化、音のインパクト(アタックの鋭さと瞬発力)、レンジ感などが、オーケストラ、オペラ、ジャズなどあらゆるソースで向上することを確認した。

前述の小澤&SKOのディスクではマーラーの交響曲(終楽章)の圧倒的なスケール感に驚かされた。そのダイナミックな再生音を聴いた段階で、DIGAの現行モデルよりもパイオニアやデノンの高級BDプレーヤーの方が比較対照としてふさわしいのではないかと感じたほどである。

上がBW950、下がBW970の背面端子部

■高級プレーヤーの開発にも期待したい

実際に、ノイズや振動源の排除がここまで大きな効果を生むことが明らかになったわけだから、パナソニックはぜひとも本機の開発で得たノウハウを生かし、フラグシップ級の再生専用機の開発にもチャレンジするべきだろう。

DMR-BW970が録画機の旗艦モデルにふさわしい性能を獲得したことは疑う余地がないが、その技術を生かせば、プレーヤーにおいても頂点を狙うことができるのではないか。そこまでの期待を抱かせるBDレコーダーがパナソニックから登場したことを歓迎したい。

(山之内 正)

筆者プロフィール
神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。

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