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公開日 2007/12/21 20:56

【詳報】東芝、シャープが液晶と半導体分野での提携を発表 − 両社長が会見「鬼に金棒の関係に」

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シャープと東芝が、液晶および半導体分野における提携を発表
シャープ(株)と(株)東芝は、液晶パネルの調達に関する業務提携を行うと発表した。本日、東京都内で記者会見が行われ、シャープ 代表取締役社長の片山幹雄氏、東芝 代表執行役社長の西田厚聰氏が出席した。

会見の主旨は、2010年度を目標に、シャープは東芝から液晶テレビ用システムLSIを約50%、東芝はシャープから32型以上のテレビ用液晶モジュールを約40%購入するべく、来年度から相互供給の拡大、および両社提携を開始していくというもの。

液晶、および半導体というそれぞれの分野で世界をリードする両社が提携関係を築き、相互のコアテクノロジーを活用することで、液晶テレビにおいて他社との差異化を図ることが今回の業務提携の大きなねらいだ。

記者会見では、最初に東芝の西田社長が今回の業務提携についてコメントした。


(株)東芝 西田社長
今回の提携により、当面2010年度を目標に定めた両社のプロジェクトが始動する。西田氏は「これを速やかに進めたい」と宣言するとともに、「当初は液晶テレビのパネルとLSIという分野での合意であるが、提携領域が拡大することも視野に入れている」とした。提携の合意に至った決め手について西田氏は「何よりの理由は、シャープが堺の新工場で計画している第10世代パネルへの大きな期待にある」と説明。「シャープは世界で初めて液晶を実用化した後、約30年の技術の蓄積を持っているし、液晶を一つの事業から産業へ発展させた功績は多大なものがある」と付け加えた。両社の提携による効果については「パネルの画質、低消費電力による寿命性能、その他の環境性能など、シャープのパネルが東芝が思い描く、これからの商品像に見事に合致した。一方で東芝のLSI技術は、シャープの液晶テレビの高機能・高性能化に貢献できるだろう。まさに“鬼に金棒”の関係が築けると思う」とコメント。とりわけテレビ関連の事業については、デジタル商品の主役として、今後も多くのメーカーが社運をかけて参入してくるだろうとも述べ、「グローバルな競争を勝ち残っていくためには、液晶パネルとLSIの両方を強化していくことが不可欠。従来のように一社で競争力のある“全て”を持ち続けることは困難な時代だ。今回のように強者どうしの協力を実現できたことで、両社がWin Winの関係を築けると確信している」と意気込みを語った。

西田氏のコメントは、東芝の次世代ディスプレイ戦略にも及んだ。西田氏は「以前、当社は大型有機ELテレビを2009年度に商品化すると発表したが、先頃、技術的な課題、量産化の課題から2009年のタイミングを見送ることを決定した。その一方で、シャープの液晶技術をベースとした次世代ディスプレイの“薄型化・軽量化・高画質化”の提案は、長寿命・低消費電力の観点も加わり、現時点で有機ELのものを遙かに凌駕しており、液晶の優位性は今後もしばらく続くと判断した。今後、有機ELは中・小型に注力し、大型の次世代ディスプレイについてはシャープの液晶を中心に進めていきたい」と明言した。


シャープ(株)片山社長
続いてシャープの片山社長が登壇し、業務提供の内容を説明した。片山氏のコメントは、自社の液晶事業の見通しから始まり「現在、液晶事業だけで1兆円を超える事業規模を実現した。中でも亀山の第一工場がフルキャパシティに達しており、2008年度中には第二工場も強化する予定だ。2009年に稼働を計画している大阪堺市の新工場(関連ニュース)では、世界初の第10世代のパネルを中心、大型パネルの開発・生産を進める。今後も世界的に旺盛な需要が見込まれる市場だが、自社用パネルを増産し、外販にも力を入れたい」と抱負を語った。

東芝との業務提携に対する期待については、「液晶テレビにとってLSIはまさにコアデバイスである。今後デジタル家電に搭載されるシステムLSIは微細化が進むため、莫大な投資が必要になってしまうことが当社の課題になってきていた。東芝は本分野において、積極的な設備投資と最先端プロセスの開発で業界をリードしている企業だ。一方で、東芝はテレビメーカーの雄であり、画質へのこだわりとノウハウに多大な蓄積がある。デジタルコンバージョンの時代に適応できる、様々な技術を持つ東芝とパートナーシップを組み、LSIを安定供給してもらえることで、シャープのテレビがより高品位になり、安定した供給が可能になるだろう。一方で、当社は大型テレビ用液晶を供給することで、東芝の事業に貢献できるだろう」と述べた。また、両社の商品事業の中核である液晶テレビを軸に、「海外メーカーには真似のできない、日本最高レベルの商品をつくり企業価値を高めていきたい」とした。

また業務提携がもたらす堺工場への効果について片山氏は、「長期契約の締結ができたことにより、堺の安定稼働ができる」と期待を示した。さらに今後の業務提携の詳細については「これから内容を詰めて行くつもりだ。今日はこの場で両社が基本合意に達したことを皆様に報告したい」と語った。


以下に本日の記者会見で執り行われた質疑応答の内容を掲載する。

<質疑応答>
※回答者の敬称略

Q:現在、東芝はどこからパネルを調達しているのか。また、これまでにもシャープから調達したことはあるのか。
A:本件のデータは公表していない。(西田)

Q:ISPアルファからの出資は引き上げるのか。また引き上げ以降も調達はつづけるのか。
A:同社への出資については、現在の当社出資ぶんを売却する方向で検討しているが、現時点ではまだ何も決まっていない。(西田)

Q:東芝松下ディスプレイの出資比率には影響があるのか。
A:今のところ変わることはないと考えている。(西田)

Q:東芝は今後、有機ELの大型テレビはつくらないという決断なのか。(西田)
A:現時点で大型テレビについては有機ELよりもシャープの提案する液晶に魅力がある。特に消費電力の面では太刀打ちできないだろう。当面は見送るつもりだ。(西田)

Q:今回の長期間での提携ということだが、その年数はどれくらいを見込んでいる。
A:期間についてはこれから両社で話し合いを進めていく。具体的な年数は現時点で決まっていない。(片山)

Q:将来的にレグザとアクオスのブランド統一は有り得るのか。
A:それは有り得ない。互いに立派なブランドを持っているので、それを育てていく考えだ。(片山)

Q:今後次世代DVDでの協業はあるのか。
A:今回の内容には関係のないことだ。(片山)

Q:今回の提携はいつ頃から交渉が始まったのか。
A:今年の夏頃から交渉を始めた。お互いの話し合いの中で方向性が決まった。(西田)
この夏ぐらいから互いの課題面を話し合うところからスタートした。(片山)

Q:今回の提携の中で「東芝からはテレビ用のLSIを提供する」とあるが、実際にLSIのフィールドは非常に広範だが、具体的にどの分野で提供していくのか。
A:シャープは現在、東芝のLSIをテレビ製品に採用している。LSIの分野は多岐に渡るが、今回の提携は「広い範囲のもの」と考えて欲しい。簡単なものから複雑なもの、ハイエンドからローエンドまで全てを含むということだ。当社は既にLSIの微細化技術に対する投資を行っていないので、今後は東芝のLSIに全面的に切り替えていく考えだ。ただし画づくりに関する技術はシャープも持っているので、その活かし方は今後社内で検討していきたい。(片山)

Q:今回の協業は2010年度でどのくらいの金額規模になる。
A:金額については今日のところはノーコメントだ。(片山)
東芝とシャープの取引額は現時点で700億から800億円レベルにあると考えて欲しい。将来的にはその3倍以上にして行きたいと考えている。(西田)

Q:東芝のテレビについて、今後パネルは全面的にIPSからVAに切り替えていくのか。
A:当面IPSからも供給は受けるので、両方やっていく。2010年の段階では多くをシャープの方式でと検討もしている。(西田)

Q:パネルの外販は現段階でも注力しているということだが、現在の売上げ規模はどのくらいか。目標設定も含めて教えて欲しい。
A:個々の金額についてはコメントを控えさせて欲しい。今年度でだいたい大型液晶の20%ほどが外販になると見ている。今後は液晶事業の拡大と、パートナーである東芝の液晶事業の拡大によって外販の比率が変化するものと思うが、比率そのものを目標としていくつもりはない。それぞれの事業規模により判断していきたい。(片山)

Q:今回発表された互いの購入比率について、なぜこの数値となったのかを教えて欲しい。今後はこの比率が変わって行くのか。
A:それぞれの現在の事業規模を考慮して仮に設定した目標値だ。私たちの今後のテレビ事業の成長にかかっているのだが、その比率が変わることも当然考えられるだろう。(西田)

Q:連携の結果として、今後シャープの半導体の開発体制はどのように変化していくとみている。
A:シャープはいま半導体を幾つかのセグメントに絞り込んで行こうとしている。具体的には携帯電話、デジタルカメラのイメージャー、液晶の駆動用ドライバLSIに開発体制をシフトさせている。システムLSIの開発体制については「選択と集中」を今回の協業により進めていきたい。(片山)

Q:業務提携により、シャープの従業員が東芝に出向するようなこともあるのか。
A:開発体制の変化により、人員がシフトすることはない。どちらかといえば共同で開発していく体制になるだろう。(片山)

Q:同じデバイスを使うことで、互いの商品が似通うことにはならないのか。
A:実際にはカスタマイズを行い、互いの特徴を活かした差異化をともなった製品作りを進めていくことになるだろう。(西田)
明らかにレグザとアクオスは異なる特徴を持つブランド。それぞれの企業が持っている画づくりの思想も違う。最終的な商品づくりという意味では、それぞれの個性が十分に出せるだろう。両社ともに切磋琢磨していきたい。(片山)

Q:最近報道されている「松下電器産業の液晶事業拡大」についてはどう思う。
A:確かに松下が液晶事業を強くしていくとすれば、強力なライバル出現ということになるだろう。しかしながら、一方でそれが本当ならば、液晶というデバイスが今日これだけ認知されてきたことを意味しているのだと思うし、歓迎するべきことではないだろうか。(片山)

Q:今後SEDはどうなるのか。今回の提携に関係しているのか。
A:SEDはキヤノンにお任せしているので、私からは一切コメントできない。(西田)

Q:東芝以外にも戦略的パートナーが出てきたらどうする。
A:今後当社のパネルを供給して欲しいというお客様が現れることは大歓迎だ。当社の液晶が世界に広げて行きたいと考えている。(片山)

Q:東芝は液晶の生産に主体的に関わらず、全て外部調達というかたちになるものと思うが、生産から身を引いてしまうことにリスクはないのか。
A:液晶と同様に、半導体事業にも大変な投資が必要だ。今回の提携により、それぞれが強いところに投資しながら、互いを強くしていくことが大事だと考えている。(西田)

Q:液晶テレビ以外の領域でも提携を検討したいということだが、他にはどんな分野が想定できるか。
A:現時点で具体的なものはない。今後の検討の中で可能性が追求できればフレキシブル、かつオープンに対応していきたい。将来的には色々と出てくると思う。(西田)
当社も同じ考え方だ。(片山)


(Phile-web編集部)

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