PR 公開日 2025/09/02 06:30

CDの音質、侮りがたし。“素顔の美”、ラックスマン哲学が光るCDプレーヤー「D-03R」レビュー

MQA-CDやハイレゾ音源の再生にも対応

ラックスマンより、ディスクプレーヤー3兄弟の最後を飾るCD専用機「D-03R」が登場した。ロームの最新DACチップを搭載、ラックスマンの最新技術をスタンダード機に落とし込んだ意欲作である。そのサウンドを、大橋伸太郎氏の自宅にて検証した。

ラックスマンのスタンダード機となるCD専用プレーヤー「D-03R」(385,000円/税込)を大橋伸太郎氏の自宅にてテスト!

CD専用機ならではのメリットを徹底追求

この春、「D-03R」が発売され、ラックスマンのデジタルプレーヤーの新ラインアップが完成した。2世代前の「D-05u」まではSACD対応だったが、1世代前の「D-03X」以降はCD専用機である。世界的にみれば少数派の上位フォーマットへの対応を上位機種に任せ、スタンダードなプレーヤーとしてハイレゾ音楽配信からファイル再生、MQAディスクまで幅広い対応を重視しての変更だった。

CD専用機には、単一回転数のメカニズムであること、後段の処理回路をシンプル化できることを始め数々の音質上の利点がある。ラックスマン技術陣はD-03Xの開発にあたり、専用機ならではのメリットを徹底して追求した。そうして誕生したD-03Xは、海外はもちろん国内でも好評裡に迎えられた。D-05u比で低廉に設定された価格によってではない。音の良さによってである。

そのD-03Xの後継がD-03Rである。最大の変更点は、上位機にならいDACデバイスをTIからロームに換装したことである。フラグシップ「D-10X」の開発時、TIの32bitハイエンドオーディオ用DACの開発が滞り、AKMあるいはESSから選択せざるをえないという折、ローム社からハイエンドオーディオ用DACを開発中の報せが届いた。

取り寄せて試聴したところ、素直な特性と低域のエネルギー感に優れており、初採用メーカーの栄に浴した。D-10X、D-07Xは、ローム最上位の “MUS-IC”「BD34301EKV」をデュアルモノラルモード(2基)で使用するが、D-03Rは、さらに世代が新しくなった「BD34352EKV」のデュアルモノ使用である。

2つのデバイスは主に電流出力値が異なり、BD34352EKVはBD34301EKVの半分程度となるが、前者のデュアル使用は後者のシングル構成に勝り、性能対コストを勘案して採用に至った。DACの差動出力を受けるI/V変換回路とLPF回路は完全バランス構成である。

左側にCDスロットを搭載、右に表示部と各種設定ボタンを持つ体裁は「D-03X」と同じ。ロームのDACチップを採用した点や、電源部のアップデートなど細部を練り上げさらに音質を追い込んでいる

メカ部にも改良がほどこされた。D-03Xでは、D-380に搭載実績のあるCD専用メカにスチール製トッププレートを追加し読み取り精度と静粛性を高めて搭載したが、D-03Rでは、このメカのアルミ製メカベースを3.2mm厚の鋼板マウントベースに変更。メカ全体を囲うボックス構造として、読み取り精度と静粛性をさらに高めている。

 

しなやかな表情をみせる自然体の表現

D-03Rを自宅試聴室に預かり一週間聴き続けた。もっと早く返す約束だったが、次々にCDを聴いているうちに別れがたくなりずるずる伸びたのである。自宅にはSACDプレーヤー2台、ユニバーサルプレーヤー1台を常備するが、D-03Rにはそれらで埋めあわせられない音の世界があった。

大橋伸太郎氏の自宅試聴室に持ち込み、ロングランで試聴を行った。メインスピーカーはBowers&Wilkinsの「802 Diamond」

おそろしく静粛なプレーヤーである。メカの動作音が外に伝わらず、曲間の無音部分や演奏の休止部分でノイズフロアが極小、演奏中も弱音の存在感がきわだつ。ロームの32bit DACの音質上の特長がストレートに現れたプレーヤーである。その点で上位機に優る。ソリッドでダイレクト、飾り気のない素直な再現のプレーヤーである。

しかし粗雑なのではない。そこにあるのはありのままの音楽、細部をおろそかにせず、時おりラックスマンらしい濃やかでしなやかな表情をみせる自然体の表現である。素顔の美という表現がこのプレーヤーにふさわしい。

ティーレマン指揮、ウィーンフィルのブルックナー交響曲第7番は、オケのクレッシェンドの音圧のなめらかで自然な高まりに溜飲が下がる。弦楽合奏にのりやすい高調波歪によるざわざわした響きがみごとに抑えられている。

アバド指揮、ロンドン交響楽団のペルゴレージ「スターバト・マーテル」は、ロンドン・キングスウェイホールでの収録だが、教会の音場を模してオケを半円形に配置し中央に2人のソリストが立つ。再生システムに不足があるとアルトとソプラノの定位があいまいになるが、ここでは2人がしっかりと寄り添いときに抱擁し音楽を紡いでいく。情報の引き出しが優れることの証左だ。ソプラノが感情の高まりを乗せて高潮しても歪まず清冽な響きを失わない。

庄司紗矢香の「モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ集」は、ガット弦のヴァイオリンをバロック弓で弾き、伴奏はフォルテピアノである。再生システムがプアだとふくらみを欠いた平板で煩い音になりやすいが、高く広々とした音場が出現し、ヴァイオリンが豊かな倍音を得て舞い上がり生の歓喜に満ちたモーツァルトをのびやかに歌い上げる。

クレア・マーティンのハスキーなボーカルの再現は難しいが、肉声の地肌の生々しい質感を伝え温かな包容力がある。バックの演奏がワイドレンジで実在感に富み、音楽の土台の低音がしっかりしているのでスウィング感が豊かにあふれ出す。

出力はシンプルなRCAとXLRの2系統。また各種デジタル入出力を持つことも特徴で、USB入力では最大384kHz/32bitとDSD 22.5MHzに対応する

D-03Rの特長のMQA-CD再生を聴いてみよう。アントニオ・カルロス・ジョビン『イパネマの娘』。ジョビンの音数の少ないピアノが中央定位し孤愁をたたえてくっきりと浮かび上がり、ハイレゾの解像力でうねるような余韻を残して消える。

変幻自在なコード進行を担うクラウス・オーガーマン指揮のストリングスの底光りする暗色系の色彩感もレコード、在来線CDで得られなかったものだ。

MQA-CDの再生時にはフロントディスプレイにMQAの表示が出る

D-03Rの機能にフィルター(PCM/DSD)の選択がある。PCMのデジタルフィルターは、MQA BYPASSとした上で本体スイッチを操作し、NORMAL/LOW LATENCYの2つの設定から選ぶ。BD34352EKVに内蔵されるこのフィルターは、インパルス応答を有限(FIR)にするか無限(IIR)にするかの違い。

FIRにくらべIIRはプリエコーがほとんどない代わりに波形の収束までが長く帯域成分が多くなり特に高域に影響を及ぼす。筆者の場合、クラシック/ジャズ声楽曲を聴くことが多く、IIR(LOW LATENCY)で歌声がなめらかになる好結果が得られた。

USB入力でハイレゾ音源を入れた場合の表示。再生フォーマットが表示される

ここで紹介した4点のディスクはいずれもSACDハイブリッドである。つまりいつもはSACDとして聴いている。今回CDレイヤーを再生していることを忘れて、いつのまにか演奏に身を委ねていた。

D-03Rは、CDのこれまで引き出しきれていなかった情報を音に変えるプレーヤーである。アナログとストリーミングに挟まれやや旗色が悪いが、完璧に確立された再生互換性、通信のトラフィックなど外部環境に左右されない等々、CDは数々の優れた魅力を持つ。CDライブラリを持つオーディオファンが待望していた製品の出現である。

(提供:ラックスマン)

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