PR 公開日 2025/06/10 06:30

デンマーク伝統、オーディオベクターの誇り。最新AMTトゥイーター搭載「QR SEシリーズ」を聴く

独自開発のユニットと高い木工技術を融合

新たなAMTドライバーの潮流を切り開いたブランド

数多ある世界のスピーカーブランドの中で、デンマークに本拠地を置くブランドは、独自性溢れるドライバーユニットを自ら開発し、北欧ならではの卓越した木工技術を生かしたキャビネットと組み合わせ、実に豊潤で音楽性豊かなサウンドを生み出してくれる印象が強い。今回取り上げるAUDIOVECTOR(オーディオベクター)もそうしたデンマークのブランドの一つであり、創業は1979年と40年以上の歴史を持つ老舗である。

AUDIOVECTORが開発、改良した技術で、後のスピーカー産業全体に与えた影響の大きなものも複数あるというが、中でも注目したいのが1998年に生み出したハイルドライバー型のAvantgarde AMT(Air Motion Transducer)トゥイーターだ。

オーディオベクターの特徴のひとつ、AMTトゥイーター

今日ではいくつものブランドが採用するハイルドライバー型のAMTトゥイーターであるが、80〜90年代では廃れた技術となっていた。しかし、発明者であるオスカー・ハイル博士が製品化した時代よりも、強い磁力を持つ小型のネオジウム磁石が市場に流通するようになったことで状況が変わったのである。AUDIOVECTOR以外にエラックも同時期に製品化を実現しているが、AUDIOVECTORは新たなAMTの時代、潮流を切り拓いたブランドのひとつといえるだろう。

オーディオベクター創業者のオレ・クリフォート氏と、現在のブランドを率いる息子のマッツ・クリフォート氏

この現代的なAMTトゥイーターは、弾力あるフィルム素材の振動板に音声信号が流れる導電コイルパターンを貼り付け、ひだ状に折り畳んで磁界のなかに置いたものだ。振動板に音声信号が流れると、折り畳まれたことで隣り合うプリーツにローレンス力が働き、吸引・反発作用を起こして空気を動かし、音波が発生。このプリーツによって圧縮された空気は一般的なドーム状の振動板と比較して面積も数倍以上となり、外気を3倍以上の比率でドライブできるという。そのため、空気の動作スピードが何倍にも加速し、立ち上がり・立下り時間を大幅に短縮できるという特徴を持つ。

上位モデルRシリーズに搭載されるAMTトゥイーターの分解モデル

スタンダードな「QRシリーズ」の細部をアップデート

この度PROSTOが輸入販売を開始する「QR SEシリーズ」もAvantgarde AMTの技術を継承した、ゴールドリーフAMTトゥイーターが搭載されている。QR SEシリーズはAUDIOVECTORの現行ラインナップでスタンダードなものとなる「QRシリーズ」のネットワーク素子や内部配線、ダンピング材の改良に加え、バスレフポートをより精度の高いものに改めた、特別仕様 “SPECIAL EDITION” のレギュラーモデルだ。

AUDIOVECTORのエントリーラインとなる「QR SEシリーズ」。センタースピーカーやサブウーファーなども加えて7モデルを展開している

まずはQRシリーズから継続となる基本的な概要を解説していこう。高域を担うゴールドリーフAMTトゥイーターは、薄く軽量なマイラーフィルムを採用しており、ユニットそのものも自社で製造されている。周波数特性は2kHz〜40kHz。高域の再生限界は102kHzという、ハイレゾ音源も余裕で対応できるスペックを持つ。

AMTトゥイーターは、金色のメッシュガード “S-Stopフィルター” を装備。磁気プレートはグレードによって2種類が用意されており、写真は7音孔スリット仕様で「QR 5 SE」と「QR 7 SE」に搭載される

折り畳んだ振動板が窺えるスリット加工された磁気プレートの手前には、ローズゴールドメッキが施された拡散メッシュガード “S-Stopフィルター” を配置。これはボーカル録音の際、歌い手の口元に置くポップガードの着想を得たものだという。ポップガードは吹かれの抑制と共に、サ行やタ行など、歯擦音の強調を和らげる効果を持つ。S-Stopフィルターもこの耳障りな歯擦音の帯域のピーク感を抑え、拡散性とミッドレンジ/ウーファーとの一体性を高めている。

トゥイーターブロックを固定するフレームは航空グレードアルミ製。精密切削加工の上、ガラス・ブラスト/ブラッシングを経てアノダイズ処理を施し、タングステン・チタン・グレー色に仕上げ、引き締まった印象を高めている。なお、シリーズの上位モデルとなる「QR 5 SE」と「QR 7 SE」には、7音孔スリット仕様のゴールドリーフAMT 2を搭載。通常は5音孔スリット仕様であり、振動板を縦方向に拡張して駆動面積を2倍に増やし、高域のプレゼンスを強化したものとなっている。

中域/低域を担うピュアピストン・デュアルマグネット・ミッドレンジ/ウーファーも自社設計のオリジナル品だ。上位機種となる「Rシリーズ」で開発された技術をベースに、3層サンドイッチ構造の振動板を開発。表面と裏、2層の航空グレード・アルミコーンの間に柔軟なダンピング材を挟み込むことで、アルミの剛性を生かしながら、固有音のない低歪な特性を獲得したという。

さらにデュアルマグネット磁気回路によって歪みも大幅に低減。低ヒステリシス・コイル・テクノロジーや、乱流を抑えるリジッドなバスケット構造も相まって、高域側との滑らかな音の繋がりと、音楽性豊かな音調を両立している。

2層のアルミコーンの間に柔軟なダンピング材を挟み込んだウーファーユニット

キャビネットは高密度ハードウッドHDFを用いた剛性の高い設計で、内部にはブレーシングを実施。ユニットのマウントは特殊なシャーシを用いた3点固定のNES(No Energy Storage)テクノロジーを取り入れている。

クロスオーバーネットワークは2004年に開発されたAUDIOVECTOR独自のダイナミック・フィードフォワード・クロスオーバーを採用。コイル・レジスタンスを減少させ、回路の損失を半分に低減。誤差0.8%以下という高精度な自社製コンデンサーによって、ドライバーユニットの位相特性を直線的に保ち、ダイナミクスを改善しているという。

そしてQR SEシリーズではどのような改善が行われているかであるが、主に前述したクロスオーバーネットワーク周辺での変更点が中心となっている。まず一点目は電極に錫メッキ銅を用い、超低温のダブルクライオ処理を施した、自社製ポリプロピレン・コンデンサーを新開発し、回路に導入。より透明度の高い高域とディテールの再現性を改善させている。

二点目は抵抗に金属ケースを取り付け、放熱効果を改善し、高出力時での安定した精度を保証。三点目は内部配線材にクライオ処理を施した銅線を用い、ディテールの再現性を高め、ダイナミクスを拡大させているという。

さらに四点目としてはキャビネット内にナノポア制振材を的確な場所へ配置し、中域の開放感を向上。五点目はバスレフダクト・Qポートの内部ダンピングを一般的な数値よりも高めに設定し、低域の精度と再現性を向上させたとのこと。最後の六点目は底部に取り付ける、高さ調整が容易なステンレス製ハイエンド・スパイクの採用だ。

フロア型スピーカーでは、バスレフポートを底面に設置。インシュレーターを挟んで底板が設置され、スパイクで高さ調整が可能となっている

QR SEシリーズはメインスピーカーとして活用できるブックシェルフ型の「QR 1 SE」、フロアスタンディング型の「QR 3 SE」、QR 5 SE、QR 7 SEの他、センタースピーカー「QR C SE」、オンウォール型「QR WALL SE」、サブウーファー「QR SUB SE」の7モデルがラインナップされており、同一シリーズで揃え、音色の繋がりも整えたイマーシブオーディオ対応のシステムやホームシアターを構築することも可能だ。カラーは3色構成で、天然突板仕上げのダーク・ウォールナット、マットなホワイト・シルク、鏡面仕上げのピアノ・ブラックが用意されている。

次ページQR SEシリーズ3モデルを徹底レビュー!

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