PR 公開日 2025/03/07 06:30

いま何を措いても聴くべきスピーカー。北欧の名匠DALI、KOREのエッセンスを集約した「EPIKORE」を聴く

ユニットとキャビネット、両面からの飽くなき挑戦

フラグシップKOREに迫る、DALIの本命スピーカー

「EPIKORE 11」の発売から中一年、「EPIKORE 3/7/9」が登場して、“エピコアシリーズ”が完成した。近年のDALIはフラグシップ・KOREの技術を下ろすことでラインナップの進化をはかっている。

DALIの“EPIKOREシリーズ”。KOREのひとつ下、RUBIKOREのひとつ上のグレードとなる。左から「EPIKORE 9」(5,500,000円/以下ペア・税込)、「EPIKORE 7」(3,520,000円)、「EPIKORE 3」(2,200,000円)。「EPIKORE 3」は専用スタンド(528,000円に装備)

最上位機のEPIKORE 11を出しながら、EPIKOREをいったん後回しにしてRUBIKOREを先行させた理由に、内外の要請で販売の中心となるRUBIKOREを先にテコ入れすることにしたと聞く。しかし、今回の3、7、9をみるとそればかりでない気がする。

DALIはコアテクノロジーにたいへんな自信をもっている。中間グレードのRUBIKOREでコスト上できなかったことが高級機のEPIKOREならできる。あわてずじっくり時間をかけてKOREに迫るスピーカーを作ろうとしたのではないか。

それを象徴するのが、EVO-Kハイブリッドトゥイーターである。驚くことに、KOREのそれと寸部違わないものをそろって搭載している。KOREで達成した技術成果はじつに多岐にわたり、そのほとんどをEPIKOREは取り入れている。1,650万円のKOREはおいそれと手が出ないが、高価になったといえEPIKOREは家庭用の範疇にある。EPIKOREが、コアテクノロジー搭載スピーカーの本命である。

KOREにて搭載されたハイブリッド・トゥイーター(プレーナー型&ソフトドーム型)をほぼそのままEPIKOREにも搭載している

自社でユニット設計できるDALIの強み

今回発売の3、7、9に共通して搭載のコアテクノロジーについて詳述しよう。EVO-Kハイブリッドトゥイーターとは、KOREで開発したコア・エヴォリューションの意味である。昨年のRUBIKORE 2でプレーナー型(ダリは形式名称をリボンでなくプレーナー型に変更した)を搭載しなかったのは、リビングに設置されることの多いスタンドマウントタイプでエンクロージャーサイズが縦に伸びることを避けたためである。

ソフトドーム(左)とプレーナー型(右・以前はリボン型と呼ばれていた)で構成

ドームトゥイーターで30kHzまでf特をカバーできるために、あえて点音源に近いシンプルな2ウェイを狙ったこともある。しかしプレーナー型を求める声が多く、今回のEPIKORE 3は上級機と共通のユニットを搭載した。

シルクドームの径は35mm(前モデルのEPICONは29mm)、f0は350Hzと、デスクトップスピーカーならフルレンジで使えるくらい低く、その分上は18kHz近辺で頭打ちになるのでプレーナー型とのハイブリッド構成が必須になる。ドームはシルクに樹脂を塗布した大口径で大きなバックチャンバーをもつユニットだが、粘性を嫌って従来の磁性流体は使わないためトランジェントがひじょうにいい。

ソフトドーム・トゥイーターのバックチャンバーはかなり大型に作られている

ミッドレンジは、高い周波数でウーファーに発生する分割共振をコントロールする目的で幾何学模様のパターンを作り、クラリティコーンテクノロジーと名付けている。全機種通じてひじょうに大型の磁気回路が使われ、ショートリングはアルミが2つに銅が1つの凝った構成、ボイスコイルも従来のEPICONは25mmだがEPIKOREは38mmになった。DALIで初めてのエッジワイズ巻き、角形断面の線で隙間ができないようにびっしり巻いている。

中央に僅かに「凹み」があるのが“クラリティコーン”の特徴。分割振動を低減している

ボイスコイルボビンはチタン。磁気回路のボイスコイルに隣接する個所に、鉄粉の表面を絶縁処理して固めた絶縁性2.5倍の第二世代SMCを使っている。渦電流が減ればそのぶん歪みが減る。去年のRUBIKOREは高いSMCをふんだんに使うわけにいかず、内側だけがSMCで外側は普通の鉄だったが、今回はコストをかけられるのでボイスコイルの内外にSMCを使っている。3本構成のショートリングとあいまって高調波歪みがひじょうに少ない。

水滴形状のキャビネットは3機種とも板材は同じもの、バッフル板は40mm厚のMDFをゆるくラウンド加工して使い、湾曲部は18mm MDFにプレスをかけてこの形状を作っている。3分割構成だが箱に組んでから突き板を手貼りで貼っている、木目を追いかけていくと切れ目がない。この木工技術はみごと。家庭で使うスピーカーは美しくなければならない…北の名匠DALIのこだわりである。 

ラウンド型のキャビネット形状も、定在波を避ける性能面に加えて、デザイン的な美しさも追求されている。北欧家具の伝統を継ぐ高度な木工技術もDALIの特徴

KORE以前とはまったく別物。息遣いと潤いを感じる

試聴は川崎市日進町のD&M本社マランツ試聴室で行った。DALIのスピーカーはヨーロッパ製ながら音像が引っ込まず太い描線でくっきり前に現れる音像主体の描写が特徴。背後の透明感豊かな音場表現も特徴だ。

その結果、遠近感に富んだ立体的な音楽を描き出すが、のびやかな音調、すがすがしい響き、自然素材重用が生む素朴でオーガニックな質感は認めるものの、例えばB&Wのいい意味での厳しさにくらべ、おおらかなスピーカーだった。コアテクノロジー導入でワイドレンジ化を果たし、ノイズと夾雑音の抑制に成功、音場表現はじめトータルな精度を上げた。KORE以前と以後は別である。

マランツ試聴室にてEPIKOREの最新3モデルを試聴。送り出しにはマランツ「SACD10」と「MODEL 10」を2台使用

スタンドマウントのEPIKORE 3は、18cmバス/ミッドドライバー中心の3ウェイ。音場空間の作り方がひじょうに美しい。演奏のダイレクト感でこのあとに聴いたフロアスタンディング型にまさる。透明感のなかに艶っぽさがある。音が前に出て力強く聴き手に迫るのは承前だが、磁性流体をやめてトランジェントが向上、鋭利さと緻密さが加わった。

スタンドも込みで設計されたEPIKORE 3(マルーン仕上げ)。ブックシェルフ型としては大型サイズ

システムのS/Nが高くソースから引き出す情報量が多い。シューベルトのピアノソナタは、こんな音が入っていたか!と、フォルテピアノの動作音を細大漏らさず音場に描きだす。ボイスコイル巻き線の量は半分になるがEPIKORE 9の20cmウーファーと基本的に同じ磁気回路を使う。それが反映され低音の厚みも十分だ。

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EPIKORE 3の背面。バスレフポートは後壁の影響を避けるために斜めに配置されていることも大きな特徴。またターミナルも特注で、縦一列に配置される
フロアスタンディング型のEPIKORE 7は、18cmバス/ミッドドライバー2発をスタガー駆動で動かす3.5ウェイ。ワーグナーの管弦楽集は、EPIKORE 3で聴いた時にEVO-Kハイブリッドトゥィーターの存在感が金管群の表現等でやや勝っていた。EPIKORE 7ではオケの全セクションが目覚めて、アンサンブルが解れ生き生きと雄大に鳴る。
EPIKORE 7のウォルナット仕上げ。ミッドとバスをスタガー駆動する

オンマイク録音の極致のようなホリー・コールのヴォーカルは、マイクをなめるような生々しさに溜飲。バックの演奏との距離感やアルコ奏法のベースの厚み、響きにはっとさせられる。デヴィッド・ギルモアのロックは空間がEPIKORE 3と比較して二回り大きくなり、ギターの音色のディストーション(電気的歪み)が美しく艶と情感が増す。

フロアスタンディング型上位のEPIKORE 9は、20cmバスドライバー2発をパラレル駆動、18cmミッドドライバーを独立させた4ウェイ。能率はEPIKORE 7と同じだがエネルギーが違う、部屋の空気を支配するパワーが違う。ワーグナーは楽音が磨かれ色彩を放ち、樹木の匂いの立ちこめ木漏れ日の降り注ぐ奥深い森に脚を踏み入れたようである。

EPOKORE 9のブラック仕上げ。ウーファーユニットが上下に分割されている

ホリー・コールは、ヴォーカルの再現自体はEPIKORE 7とそれほど変わらないが、試聴室に現れる空間の大きさや奥行きがけた違いである。ギルモアのバスドラの打撃の音圧、スネアの量感、切れ味、立ち上がり立ち下がりに本機のウーファーが試聴室の空気に浸透し支配している実感。

現時点でEPIKOREにセンタースピーカーとサテライトの発売予定はない。DALIの自信(挑戦?)の表れとみた。EPIKOREでDALIはモニターグレードに階級を上げ名乗りを上げた。ここには同価格帯のB&Wにない息づかいと潤い、JBLにないすがすがしい静寂がある。EPIKOREの登場で世界のスピーカーの勢力図は変化した。いま何を措いても聴くべきスピーカーである。

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