公開日 2013/01/29 11:07

2012年のベストBDをエプソン「EH-TW8100」で堪能する!

三者三様の映画作品を徹底チューニング
取材・執筆/大橋伸太郎
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現代の多様な映画作品をTW8100はどう描くか

EH-TW8100/TW8100W(以下TW8100)は、液晶デバイスのリーディングメーカーであるセイコーエプソンのD9パネルを使って構成された3LCD方式のプロジェクターだ。プリンターのトップメーカーでもある同社の光学、化学技術と色彩研究が注ぎ込まれ、AVメーカーが手掛けた他機と一線を画した、技術密度の高い尖鋭な製品に仕上がっている。

家庭で見る映画、と一口で言っても、モノクロからフィルム作品、ハイビジョンや4Kで撮影された映像、アナログアニメから3DCGアニメまで多種多様だ。こうした今日の映画の多様性に最も密着するプロジェクターの最右翼が本機である。今回は、2012年に発売されたBDの優秀作品の中から、画質の趣を異にした3作品をTW8100で視聴し、この優れたプロジェクターが現代の映画の多様さに対し、いかに寄り添っていくかをチェックした。


なだらかな階調の描写と艶と透明感に溢れる発色

TW8100の映像で最初に感銘を受けるのは、階調のアナログ的な素直な変化である。穏やかに溶暗する、なだらかなグラデーションが映画にぴったりと寄り添うのを見るのは、快感を覚えるほどだ。単純に黒の締まりという点ならDLPやLCOSという選択肢もあるが、現代のデジタル上映まで含め、私たちが映画館で馴染んだ〈黒〉は決して硬く締まった黒ではない。

前述の3作品ではないが、アカデミー作品賞受賞のフランス映画『アーティスト』のBDも素晴らしい出来だった。監督のミシェル・アザナヴィシウスは「この映画はブラック&ホワイトでなく、グレーの映画」と語る。あえて字幕の付かないシーンがあるように、色彩を想像力で感じ取ってほしいというのが本作のコンセプトだ。

TW8100が描く『アーティスト』は濡れたような味がある。モノクロームの階調に段差と強調がなく自然だからである。まさに生命感の息づく映像。主演女優ベレニス・ベジョが憧れのスターの服に腕を通し自らを抱擁するシーンも、より一段と際立ってくる。だからといってTW8100が黒の表現を疎かにしているわけではない。若干の調整で艶のある黒が出て、映画をシックに輝かせる。

TW8100のもう一つの魅力が透過型3LCDらしい艶と透明感のある色彩だ。滑らかな階調との和でテクニカラーからデジタル3DCGアニメまで、劇場投写の質感に近い自然で柔らかい発色が楽しめる。


2012年のベストBDをTW8100でチェック

今回視聴した3作品の印象をざっと紹介してみよう。『ドライヴ』は、2011年の近作であり『ブロンソン』のニコラス・ウィンディング・レフンがハリウッドに進出し手がけたアクション作だ。孤独なスタントドライバーが愛する女とその息子のため危険な賭けに出る物語。典型的な現代のハイコントラスト映画で、冒頭で描かれる夜景の艶やかな黒と煌く灯火の対比が美しい。オートアイリスとガンマのカスタムを調整することで深々とした黒を表現。EPSON Super Whiteをオンにすると、灯火の冴えた輝きが現われ、作品の身上のスタイリッシュな映像美が楽しめる。もう1つのポイントは、荒涼とした現代の地獄にあって人間の温もりを感じさせるキャリー・マリガンのスキントーン表現だが、これについては別枠を確認願いたい。


2作目は、1988年の名作『ラストエンペラー』。ベルナルド・ベルトルッチの代表作だが、彼が「私の色彩の守護天使」と呼ぶ撮影監督ヴィットリオ・ストラーロの手腕が遺憾なく発揮された映画でもある。フィルム撮影の本作は、階調重視のどっしりとした柔らかい黒でTW8100との相性が良い。しかし、撮影時のノイズが多い作品でもある。明るさを下げると見た目のノイズは減るが、単純に映像を暗くすると衣装や美術の輝きも沈んでしまう。本作の醍醐味は光と影の美しい描写である。階調のボトムを寝かすだけでなく、ガンマのカスタムからポインターを表示し光線の当たっている部分を同時に上げると幻想的な美しさが現れる。

3作目は『ファインディング・ニモ 3D』である。これについては、最低限の調整で最大限の効果が現れる。TW8100の場合、RGBCMY(6軸カラー調整)の存在とガンマのカスタム調整の存在が大きい。両者を積極的に調整することで今回併用した業務用マスターモニターの映像にみるみる近づいていき溜飲が下がる。別枠に記載した調整値を参考に、一度試みてほしい。


TW8100は、打てば響く、柔軟性を備えた映像機器である。そして、多種多様な現代映画に寄り添っていくことの出来る、稀有なプロジェクターといえよう。

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