公開日 2012/01/20 12:00

東芝REGZA「55X3」の衝撃 ー やはり「4K」は凄かった

唯一無二のTVを徹底レビュー
取材・執筆:大橋伸太郎/折原一也/鴻池賢三/林 正儀/村瀬孝矢/山之内 正
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唯一無二の4Kテレビ55X3 その全貌を読み解く
取材・執筆:林正儀

レグザの最上位モデルに位置づけられるXシリーズが、昨年また歴史を塗り替えた。それが世界初の4Kテレビ「55X3」だ。ここでは、改めて55X3の特徴を見ていこう。


55X3は現行モデルで最強の仕様を備える

昨年12月10日、液晶テレビ・レグザの最上位モデル55X3が世界に先駆けて発売された。CEATEC JAPANでのデビューから約2ヵ月。史上初めて、4K解像度を持った民生用のテレビが満を持して投入されたわけだ。

55X3は、フルHDパネル4枚分の画素をもつQFHD(クアッドフルHD)パネルと、画像エンジンに「レグザエンジンCEVO Duo」を搭載する、まさに現行機種における最強の仕様を備える。加えて、前面のレンチキュラーシートにより裸眼3D表示も実現している。果たしてどのような映像世界に誘ってくれるのか興味深々だが、次世代の規範となる超高精細画質という側面だけでなく、音質や機能面でも意欲的なチャレンジがみられる。

「レグザエンジンCEVO Duo」40nmCMOSロジック半導体を採用したCEVO Duo。4K化に伴う超解像処理やローカルディミング、3D関連機能など、全ての処理を掌る55X3の司令塔


4K化には最大5つの超解像処理を経由する

まずは55X3の画質面を見ていこう。4K×2K、すなわち総画素数829万(3840×2160)のQFHDパネル(VA液晶)は55V型のテレビサイズにおいて、圧倒的なハイレゾ映像を可能とする。バックライトは240分割の直下型LEDで、5000対1の高コントラストと緻密なグラデーション、動画応答性を確保している。

DVDなどのSDコンテンツや地デジ番組など、フルHD解像度に満たない信号が入力された場合は、2度の超解像処理を経て55X3の4Kパネルに表示されている(BDなどのフルHDコンテンツは1度のみ)

基幹となる映像処理技術は、東芝のお家芸ともいえる超解像だ。歴代のレグザシリーズでも他社に先行して超解像をアピールしてきたが、超解像技術は来るべき4K時代を見据えたものでもあった。55X3では、DVDなどのSDコンテンツに限らず、HDコンテンツでもアップスケーリング+超解像によりリアル4Kに迫る映像クオリティを実現する。4Kのネイティブコンテンツが無い現状では、超解像技術は欠かせないのだ。

55X3に、4Kカメラで撮影した4Kコンテンツを入力した(注:業務用のレコーダーから4K信号を入力)。写真上は一部を拡大したものだが、肌や瞳、まつ毛の様子まで克明に映し出されている。なお、4K信号の入力には、別売のアダプター「THD-MBA1」(今年春発売予定)が必要となる

東芝が行っている超解像の手法は、リアルタイムで信号解析を行って最適な映像をつくりだす「再構成型」と呼ばれるものだが、4K化の処理プロセスは2段構えとなっている。1度目の超解像処理では、DVDや地デジ素材などをフルHD解像度に整える。そして2度目の超解像処理でフルHDから4K2Kに拡大する。これらの処理には、再構成型超解像、自己合同性型超解像、3次元フレーム超解像、色超解像、さらに新しくカラーテクスチャー復元超解像(圧縮映像から元画像の4:4:4を復元する)を加えた、合計5種類もの超解像技術(QFHD超解像技術)が使われている。

SDカード、もしくはUSB経由で静止画データの再生にも対応する。静止画データに対しても、再構成型超解像とカラーテクスチャー復元超解像技術で精細感を向上。魔法陣アルゴリズムを使った滑らかな階調表現も行っている

こうした入念な超解像技術やバックライト制御、さらにはグラスレス3D映像の処理を一手に引き受けているのが「レグザエンジンCEVO Duo」である(旧レグザエンジン比で約6.8倍もの高速演算処理性能)。Duoの名前の通り、CEVO(Cell Evolution)のメインLSIを2基搭載しており、CELLレグザ55X1/55X2ではソフトウェア処理されていた各種機能がこのCEVO Duoによるハードウェア処理に切り替えられている。

画質以外でも、USBハードディスク対応した長時間録画機能や多彩なエンターテインメント関連機能など、新エンジンの役割は膨大である。DTCP-IP対応のコンテンツサーバー機能を有し、USBハードディスクに録画した番組は「レグザタブレット」や別の部屋にあるレグザなどと組み合わせて視聴できる「レグザリンク・シェア」機能も備える。

55X3の映像設定メニュー(HDMI入力時)

55X3の詳細調整メニュー(HDMI入力時)

9視差の映像を作り出し、裸眼での3D視聴を実現

55X3のメインフィーチャーは4Kだが、裸眼で3Dが楽しめるグラスレス3D機能も読者の気になるところだろう。何と言っても、55型という巨大クラスでの裸眼3Dテレビは未だかつてこの世に存在したことはないのだ。

3Dの表示にはインテグラルイメージング(光線再生)方式を採用し、ディスプレイ前面に貼られたかまぼこ型のレンチキュラーシートを通して、9つの視点に映像を生成。左右の目にアングルの異なる映像を見せることで、視聴者の脳内で3D映像を作り出す。

2D、3Dコンテンツを「9視差モード」で3D表示する際に限り、映像設定から「3Dシーン」が選択可能。風景、スポーツ、ステージ、テロップなどの全4パターンがあり、コンテンツの種類に応じて立体感や滑らかさが最適になるように微調整されている

ポイントは4Kパネルとの間に設けられた偏光切り替えシートによって、3DのON/OFFを可能にしたことだ。リアルタイムで生成された9視差の3D表示を観るのか。それとも偏光シートをスルーにして4K解像度の2D映像を楽しむかが選択できる。但し、グラスレス3D時の解像度は1280×720に落ちる。

液晶パネルと前面のレンチキュラーシートの間にある偏光切替シートを制御することで「4K解像度の2D映像」と「裸眼3D映像」の両立を実現している

9方向へむけて像を結ぶこの方式では、スイートスポットでの視聴が必須だが、それにはフェイストラッキングという視聴位置の補助機能が設けられている。顔検出カメラによって視聴者の顔を検出して位置を認識。あとはリモコンのトラッキングボタンを押せば、それにあわせて3Dの視聴エリアをテレビが調整してくれる。

3Dについては、もちろん精度の高い2D/3Dの変換機能(9視差3D映像生成技術)があり、地デジやBSデジタル、通常のブルーレイソフトであってもグラスレス3D映像として楽しめる。また3Dソフトの場合にはフレームシーケンシャル方式はもちろん、サイド・バイ・サイド放送であっても奥行を推定して裸眼3D化が可能だ。

画面の四隅にSPを配置し画面中央で音を定位させる

音質へのこだわりも見逃せない。薄型ながら画面の四隅にスピーカーを配置してセリフを画面中央に定位させる工夫(センターフォーカススピーカー)や、そのユニットにもオーディオで使われる竹繊維と特殊樹脂による平面振動板や強力なネオジウムマグネットを採用し、中高音域のクリアネスを高めている。と同時に、背面には8cmの大口径ウーファーを搭載し、それぞれを合計出力30Wのマルチアンプで駆動させる。DSPのCONEQも引き続き採用しており、テレビのスピーカーとしては異例のクオリティ志向だ。55X3はまさに、直視型4Kモデルの到来を告げる大注目のモデルなのである。

「フルレンジユニット」画面四隅のフレーム部分に配置することで画面中央に音像を定位させるセンターフォーカスシステムを採用。ユニットの構成は、約2.6mm×約37.8mm×2スリット。竹繊維と特殊樹脂で作った振動板とネオジウムマグネットによる反発対向磁気回路を組み合わせた


「専用ウーファー」ディスプレイ部の背面にあるφ80mmの丸形ウーファー。シンメトリカルダンパーによる低歪み・高リニアリティが特徴。ポート共振を打ち消すバスレフBOXで100Hzのレスポンスも実現している

「顔検出カメラ」パネル前面に備え付けられたフェイストラッキング用のカメラ(画角は上・左右方向に約28度、下方向は約6度)
<SPECIFICATION>
55X3 ¥OPEN(予想実売価格90万円前後)
デジタルチューナー地上×3 / BS・CS110度×2
パネルサイズ/タイプ55型 / VAタイプ
画素数3840×2160
駆動120Hz
表面処理グレア(レンチキュラーシートあり)
光源白色LED
光源構造(分割数)直下配置(240分割)
コントラスト5000対1
ダイナミックコントラスト650万対1
視野角上下左右178度
3D方式裸眼 インテグラルイメージング方式(9視差)
視聴時の画素数1280×720
映像処理回路レグザエンジン CEVO Duo
スピーカーフルレンジ×4(2×10cm)、サブウーファー×1(Φ8cm)
音声出力ステレオLR(10W+10W)、SW(10W)
主な入出力端子映像入力D端子1(D5)
S端子
コンポジット2
音声出力光デジタル1
ヘッドフォン1
その他HDMI4
USB2(汎用、ハブ対応録画専用)
LAN1
SDメモリーカードスロット1(SDXC対応)
内蔵HDD
主な機能超解像○(QFHD超解像技術)
倍速120Hz駆動(アクティブスキャン240)
バックライトスキャン○(12分割)
コマ補間○(60→120)
自動画質調整
レグザコンビネーション高画質
60i-30p変換プログレッシブ処理
ゲームモード(遅延時間)○(約1.7フレーム=約28.3msec)
アニメモード
写真再生○(JPEG準拠、8000×8000ピクセル以内、24MB以内)
ネット動画YouTube
テレビ版Yahoo! JAPAN
アクトビラ ビデオ○(フル対応)
ひかりTV
TSUTAYA TV
T's TV
DLNAサーバー(DMS)○(レングリンク・シェア)
クライアント(DMP)○(レングリンク・シェア)
レンダラー(DMR)○(レングリンク・シェア)
HDMI関連InstaPort
DeepColor/x.v.Color対応○ / ー
ARC対応
3D対応
4K対応○ ※
録画関連USB HDD録画○(同時接続最大4台、登録最大8台、最大2TB HDDまで認識)
AVC録画方式トランスコード方式
AVC録画モードAF(約12Mbps)、AN(約8Mbps)、AS(約6Mbps)
2番組同時録画
学習自動録画
編集/オートチャプター○/○(2番組同時対応)
メディアへのダビング○(レグザリンク・ダビング)
ポータブル機器連携
3D関連2D/3D変換○(モーション3D、ベースライン3D、フェイス3D、ステレオ3D)
自動画質調整○(おまかせドンピシャ高画質3D)
視聴位置調整○(フェイストラッキング)
音声DSPCONEQ
リモコンレグザリモコンll(赤外線)
消費電力410W
年間消費電力385kWH/年
外形寸法(付属スタンド含む)1271W×862H×357Dmm
質量(付属スタンド含む)30.0kg



次ページ55X1から55X3へレグザXシリーズの軌跡

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