ネットワークオーディオに、新たな扉を開く。オーディオ銘機賞の栄えある“金賞”、エソテリック「Grandioso N1」の実力に迫る
ネットワークオーディオに新たな歴史が生まれた。ESOTERIC(エソテリック)のフラグシップネットワークプレーヤー「Grandioso N1」が、オーディオ銘機賞2026において「金賞」を受賞した。ネットワークオーディオ関連機器が金賞を受賞するのは、史上初のこと。その快挙の理由を、審査員である角田郁雄氏が解説する。
一体型ネットワークプレーヤーの究極を追求
本機は、第4世代のエソテリック・ネットワーク・エンジンG4を搭載、最新のMaster Sound Discrete DAC G2によるDAコンバーター技術を搭載した一体型のネットワークプレーヤーである。
有線LAN(RJ45)とSFPを各1系統(同時使用可能)、USBはtype AおよびCの2系統を装備。もちろん、USBストレージも接続でき、ネットワークサーバーとして再生することもできる。
エソテリック・ネットワーク・エンジンG4のネットワーク基板には、大容量RAMを装備したパワフルなCPUを搭載し、フラグシップにふさわしい超高速処理を誇っている。
デジタル制御基板には、同軸/光、XLRバランス、HDMIによるES-LINK5、10MHzクロック入力を装備。ES-LINK5を使用すれば、SACDトランスポート「Grandioso P1X」と接続した高品位なSACD再生が可能となる。他の同社トランスポートとも、1本のXLRデジタルケーブルで接続できる。
この基板には、ネットワーク・エンジンで処理された信号も伝送される。その基板上にはFPGAが配置され、PCMのアップコンバートやPCMのDSD化を可能にしている。
最新のディスクリートDACで音楽の躍動感を目指す
FPGAで処理されたデジタル信号は、データとクロックが左右に分離され、最新の第2世代のMaster Sound Discrete DAC G2でDA変換される。これは、音質と精度を極めたディスクリート部品で構成したFPGAベースの完全自社設計のマルチレベルΔΣ DAコンバーターである。汎用のDAC ICチップでは実現不可能な音楽の躍動感、エネルギーの完全再現を目指して開発が進められた。
その基板は実に大規模である。1チャンネル当たり32のエレメントで構成され、クロックドライバー、ロジック回路、コンデンサー、抵抗などの主要部品をエレメント毎に全て独立させている。
特に抵抗は精度だけではなく、音質を重視し、チップ抵抗ではなく、メルフ抵抗を採用。今回は、この抵抗エレメントをON/OFFするフリップ・フロップICを変更し回路を最適化。ICの直近にコンデンサーを追加することで電流供給能力を向上させ、ノイズの低減を図り、FPGAとフリップ・フロップ回路の電源回路も分離。
スルーレート:2000V/μsという驚異的なハイスピードを誇るアナログ出力バッファーアンプ、ESOTERIC-HCLDの電源もホット・コールド分離し、個別の電源レギュレーターから給電する方式を採用。
このHCLD自体にもさらなる物量を投入し、D1X SEと同じデュアル・バッファー回路(4回路/1ch)とすることで、電流出力をさらに強化し、立ち上がりが速く、パワフルかつ豊かな音質を獲得している。
アナログフィルター部には、独自のディスクリート構成のIDM-01増幅素子も使用されている。もちろん、同社の電流伝送であるES-LINK Analogに対応することは当然であり、本シリーズのプリアンプとパワーアンプで統一し、完全電流伝送が完結する。
本機には、最新のクロック回路Master Sound Discrete Clock For Digtal Playerを搭載する他、システム合計で4基のトロイダル・トランスとEIトランス1基搭載のリニア電源を搭載。外部電源強化ユニット、Grandioso PS1も接続可能であり、10MHzクロック・ジェネレーターGrandioso G1Xとともに3筐体システムにアップグレードできるのである。
ハイエンドらしい透明感やフレッシュさがある
ハイレゾダウンロードを再生しようが、Qobuzを再生しようが、音質に違いを感じさせない。まさに生の音楽を聴いているかのような臨場感を鮮明にする。
音色としては、一体化構成であり、最新のDACを搭載したこともあり、良い意味で、ハイエンドらしい音の透明感やフレッシュさがある。
聴感上のオーディオ特性としては、ダイナミックレンジが拡張され、高解像度ワイドレンジ特性を鮮明にするところがある。バッファーアンプの効果により、音楽の躍動を全面に再現してくれる。
音楽に没頭させる、浸透力のある音楽再生にも驚愕するところがあり、オーディオ特性を忘れさせるところがある。まさに唯一無二の独自の技術が音に反映しているのである。
「ハイエンド大賞」を受賞したネットワークトランスポート「Grandioso N1T」とも共通した、洗練の極みまでも漂わせている。
(提供:ティアック)
本記事は『季刊・オーディオアクセサリー 199号』からの転載です。
