• ブランド
    特設サイト
公開日 2011/07/12 10:27

ネットオーディオ時代にひときわ輝く“原音再生” − 「ECLIPSE TDシリーズ」これまでの10年、これからの10年

ECLIPSE TD 10周年特別企画
大橋伸太郎
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
■「ECLIPES TD」10年の軌跡

21世紀が到来してから10年が過ぎ、音とオーディオの世界に大きな転換が訪れている。言うまでもなくPC&ネットワークオーディオである。

ハイサンプリング音源をハイレゾリューションで再生する。新しい酒は新しい革袋に盛るべし、ということで新しいオーディオ機器の技術様式が今盛んに論議されているが、世紀をまたいだばかりの2001年に、既にそれを体現したオーディオ機器が姿を現していた。富士通テン ECLIPSE TDシリーズスピーカーの初号機「512」である。今年はECLIPSE TDシリーズが誕生してから10年という記念すべき年なのだ(記念サイトはこちら)。

ECLIPSE TDは由井啓之氏が提唱するタイムドメイン理論をバックボーンに生まれた。

そのコンセプトを一言で分かりやすく要約すると、従来のスピーカーシステムは周波数特性(低域から高域までの波形)を重視して作られているが、ECLIPSE TDは空気の波動をいかに正確に再現するかという人間の聴覚メカニズムに基づいて作られている。

■「ECLIPES TD」を支える「タイムドメイン理論」とは

まず、タイムドメイン理論についてもう少し踏み込んでみよう。

電気式蓄音器やラジオの出現を契機に発展が始まったオーディオは、周波数帯域の拡張に主眼を置いてきた。多種多様な楽器が発する幅広い音域を再現できれば、音楽演奏の再現に近づけるからである。

電気信号からの最終変換器であるスピーカーシステムは、低音から高音までいかにフラットに歪みなく再生するかという命題に応えるべく、ウーファー、スコーカー、トゥイーターとドライバーの数を増やし、振動板の材質の吟味が行われてきた。最低共振周波数を下げるためにエンクロージャーを大型化したり、形式と構造を変えてみたり、様々な工夫が行われ、進化を繰り返してきたのはご承知の通りだ。

その結果スピーカーシステムは、それ自体が一つの固有の音色を持つ<擬似楽器>のような存在になり、長きに渡り音作りとして論評の対象としてきたのである。

この考え方に一石を投じたのがタイムドメイン理論である。その着想の核心は、周波数領域より時間領域(タイムドメイン)に着目し、楽器などの音源が生み出す空気の波動(波形)を徹底してオリジナルのまま再現することにある。

具体的には入力信号(インパルス・原波形)と出力信号(インパルス応答)を可能な限り同じにするというのが、タイムドメイン理論の考え方だ。この状態に近づけるには、スピーカーシステム内で音の遅れを生み出さないことが肝要だ。

インパルスの原理

入力波形と出力波形が近似なほど再生音は原音に正確になり、完全に一致した時、変換器であるスピーカーシステムの存在は消え、そこに音楽だけが現れる。これがタイムドメイン理論の骨子である。

さて、入力後の波形を歪める最大の要因がインパルス収束後の余波、つまり残響成分で、これにはエンクロージャー(スピーカーシステムのキャビネット)固有の響きが大半を占める。その原因となる不要振動や回析効果、共振をことごとく取り去ることを目標に、ECLIPSE TDシリーズは生まれたのである。

ここには、オーディオのパラダイムシフトがある。それまでのオーディオの醍醐味であった、スピーカーシステムの音の個性(表現性)を否定してしまったのだから。しかし、この手法の有効性は、音楽とオーディオを愛する人たちにとっては、とっくに分かっていたことである。ECLIPSE TDシリーズの出現までは、それを実現する技術の手段が揃わなかったのだ。

■「ECLIPES TD」を完成させた6つの技術

富士通テンが最初の製品「512」を完成させるその鍵となった技術は大きく6つある。

第1に、応答速度が高く内部損失の大きい専用設計のスピーカー振動板を開発する。第2に、マグネットを強化しボイスコイルを最適化し、両者をショートギャップ化し磁束密度を強化した磁気回路を開発する。第3に、スピーカーユニットが素早く動いて止まるための足場となる機構として円錐形の錨(グランド・アンカー)を考案、スピーカーユニット後部に接続した。

第4が、スピーカーユニットの振動がエンクロージャーに伝わらないように機械的にインシュレートする構造で、ディフュージョン・ステー(仮想フローティング構造)を考案し採用した。第5に、各パーツの接点毎に振動を排除するために特殊素材を使用、これはエンクロージャー内の気密確保にも効果を発揮するものである。

ECLIPSE TDシリーズスピーカーの内部構造

最後がECLIPSE TDシリーズの大きな特徴である卵型のエンクロージャーであった。一般的なレクタンギュラー(箱型)の場合、内部対向面で定在波が発生しやすく、外側の前面バッフルの角で回折効果(音は光と異なり、反射し位相を反転させて複雑に回り込む)が発生し、位相を乱す要因となる。

卵型の「エッグシェル・コンストラクション」は、剛性に優れるだけでなく、同一半径面が存在しないために定在波を極限まで排除できる。

ECLIPSE TDシリーズスピーカーを上から見たところ。卵型の形状も音質を高めるための工夫の一つだ

2001年3月に「512」と「508」が発売されて一大センセーションを起こしてから、すでに十年が経過し、数世代のモデルチェンジがあったが、これらの技術のコンセプトは、いささかも揺るぎがないことに注目したい。真に創造的な製品は、どれだけ時間が経過しても、技術の本質が古びることはないのである。

次ページ「ECLIPES TD」歴代の名機を振り返る

1 2 3 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク

クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 女子プロゴルフ「パナソニックオープンレディースゴルフトーナメント」、4/26からの放送・配信予定
2 売価アップも品薄も問題にしないアキュフェーズの強さに感服 <販売店の声・売れ筋ランキング3月>
3 ソナスの新製品スピーカー「Lumina II Amator」が鋭い立ち上がり <ハイファイオーディオ売れ筋ランキング3月>
4 Prime Video、『ゴジラ-1.0』ほかゴジラ邦画実写全30作品や、Prime独占EP配信の『岸辺露伴は動かない』第4期など5月配信
5 ゲオ、43V型で4万円を切る狭額縁デザインの4K液晶テレビ
6 Anker、最大半額セールを楽天で実施中。完全ワイヤレスイヤホンは割引でさらにポイントアップも
7 『鬼滅テレビ -柱稽古編放送直前SP-』5/4 13時25分から無料配信。公開生放送の観覧受付開始
8 KEF、「LS60 Wireless」など一部スピーカー製品を値下げ。4月25日より
9 スカパー!、スティック型ストリーミング端末「スカパー!+(プラス)ネットスティック」を新開発
10 Netflixで「ご利用世帯の登録」画面が表示された場合の対処法は?
4/26 10:36 更新
MAGAZINE
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー192号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.192
オーディオアクセサリー大全2024~2025
別冊・ケーブル大全
別冊・オーディオアクセサリー大全
最新号
2024~2025
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.21 2023 WINTER
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.21
プレミアムヘッドホンガイド Vol.31 2024 SPRING
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.31(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2024年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2024年冬版(電子版)
DGPイメージングアワード2023受賞製品お買い物ガイド(2023年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2023年冬版(電子版)
音元出版の雑誌 電子版 読み放題サービス
「マガジンプレミアム」お試し無料!

雑誌販売に関するお問合せ

WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX