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公開日 2010/02/26 19:38

発売間近に迫る「torne」は果たして“買い”なのか!? − SCE開発陣にケースイが直撃インタビュー

torneに関するギモンをぶつけてみた
鈴木桂水
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いよいよPlayStation 3専用のテレビチューナーユニット“torne(トルネ)”の発売日が3月18日に決定した。録画好きの筆者としてはすでにtorneの魅力について妄想と物欲をふくらましている(関連ニュース)。


torneの地デジチューナボックス
既に各所で本機の体験会などイベントが行われているので、実機を操作された読者も多いことだろう。筆者もプレス向けの発表会以降、池袋の家電量販店で数回操作を体験してチェックを行い、高速インターフェースの操作感に改めて驚いたものだ。

ただ、一方でこのtorneに触れるたびに、「これって、結局、番組表の表示が速いだけなんじゃないの?」という“もやっ”とした気分が芽生えてくるのも正直なところだ。発売日決定後のネットでの反響は絶好調なようで、大手量販店のショッピングサイトでの先行予約販売は、受付を終了している所も多い。発売日当日に入手したいのであればショップで開店前から並ぶことになるかもしれない。筆者もうっかりしていたら予約しそびれた口だ。予約ができなかったからというわけでもないが、筆者は今さらながらだが、「torneって買いなのか?予約してもいいのか?」を迷いはじめてきた。

筆者がいまtorneを購入するにあたって迷っているのは、主に以下のような事柄だ。

・地デジの2番組同時録画ができない
・リアルタイムでMPEG-4 AVC動画への変換ができない
・追っかけ再生(タイムシフト再生)ができない
・録画中にゲームをするとコマ落ちする可能性がある

上記の“torne”に感じている疑問を解消すべく、今回は(株)ソニー・コンピュータエンタテインメントの“torne”開発陣へのインタビューを行った。インタビューに応えていただいたのは、商品企画担当の商品企画部 2課 課長 渋谷清人氏、アプリケーション開発担当のソフトウェアプラットフォーム開発部 2課 1グループ 石塚健作氏、ユーザーインターフェースのデザインを担当したJAPANスタジオ インターナルプロダクション部 シニアゲームデザイナー 西沢学氏の三方だ。


写真左より西沢学氏、石塚健作氏、渋谷清人氏
━━いよいよ発売日が近づいて来ましたが、開発を振り返って苦労された部分などを教えてください。

渋谷氏:通常のゲーム機の開発では考えられないぐらい数多くの検証を行いました。AV機器と言うよりはゲームソフトのバグ取りに近い作業でしたね。

石塚氏:ゲームソフトの開発と同様に厳しいテストを繰り返しています。バグチェックの段階では、一般からもコントローラーの操作に長けた、指の動きの速い方々を大勢集めて検証していただきました(笑)。チューナーの受信テストもひじょうに苦労しました。日本全国で安定した感度で放送が受信できるか、PS3とtorneの実機を携えて全国を回ってテストしたのですが、これがとても辛く苦しい作業でした。2泊3日で名古屋から佐賀まで、途中下車をしながら13都市の受信状況をチェックしたこともありました。

━━昨今では5万円台で手に入る低価格のBDレコーダーもでてきましたが、あえてこの時期に「PS3用の“地デジレコーダーキット”」を商品化された理由を今一度うかがいたいと思います。


商品企画担当の渋谷清人氏
渋谷氏:そもそもPS3の開発段階から、いずれは何らかのかたちでテレビ録画機能を持たせたいという構想はありました。私たち開発スタッフはPS3の発売後も、そこに新たなエンタテインメントを加えて行くにはどうすれば良いのか日々考えています。その一つの方向性がテレビ録画機能でした。2008年には日本に先がけて、ヨーロッパでPS3専用の録画対応チューナーユニット「PlayTV」を発売しています。日本では2008年4月に外付け地デジチューナーユニットの認可が下りたことがきっかけとなり、国内向けのPS3用の地デジチューナーユニットの開発がスタートしました。

石塚氏:正式に開発がスタートした時期は2009年3月でしたが、その約1年前から基礎研究は始めていました。ただ、私たちとしては「PS3に地デジチューナーが付きます、録画もできます」というだけの製品にはしたくなかった。PS3だからこそできることは何か?従来のレコーダーには無かった付加価値とは何か?ということを念頭に置いて、開発を進めました。私は以前からPS3の卓越したグラフィック機能を使って、これまでにない操作感を持ったレコーダーが作れないか、模索してきました。そこでまず、番組表のプロトタイプを作ることから始めました。1週間分のデータを並べて、PS3のグラフィック機能で番組表を動かしてみたところ、そのあまりの速さにプロジェクトに係わるスタッフからも驚きの声があがりました。この高速な番組表の操作感を商品で実現できれば、PS3で地デジを視聴・録画する意味があると感じました。


メインメニューの画面。高速操作に対応するGUIが注目を浴びている

高速で快適な操作感を実現したtorneのEPG
━━“番組表の表示が速い”ということのほかに、PS3&torneをBDレコーダーと比べた場合の優位性としては、他にどんな要素がありますか。

渋谷氏:10万円台で販売されているBD単体レコーダーには、価格相応の多種多様な機能が搭載されています。一方でPS3とtorneで、レコーダー専用機と同じことを実現するには無理がありますし、元々同じ土俵で競い合うような製品ではありません。2番組同時録画、大容量HDDによる長時間録画を機能の中軸に据えるのであれば、レコーダー専用機にはかないません。PS3とtorneの組み合わせは最高のグラフィックス能力を備えるゲーム機が、その得意とする機能をフルに活用したら「テレビの新しい楽しみ方」が見つけられる、ということをユーザーに提案したいというコンセプトをベースにしています。

━━ゲーム機ならではの、PS3とtorneが実現した新しい魅力とはどのような部分ですか。

渋谷氏:シンプルに楽しめることだと思います。快適なユーザーインターフェースで気軽、かつシンプルに録画が楽しめることが大きな魅力です。そして、ストレスのない操作感で地デジのテレビ番組の視聴・録画が楽しめることを多くのユーザーに実感して欲しいですね。その上で、発売後に必要な機能などの要望をいただいた場合は、できることから検討しながら新たな機能を追加できればいいなと思っています。ファームウェアのアップデートによる進化はこれまでにもPS3が実現してきた大きな魅力の一つだと考えています。


アプリケーション開発担当の石塚健作氏
石塚氏:本製品を報道発表して以降、メディア体験会や一般向けの体験会を各所で実施したところ、実際にタッチしていただいた方々が、torneの実力に触れて、非常に驚かれていることが私たちにも実感として伝わっています。まずはtorneによる高速インターフェースの感動を一刻も早く、多くの皆様に体験してもらいたいという気持ちが開発陣にはありますので、取り急ぎシンプルなかたちで世に送り出すことを優先しました。これからのtorneの進化については、今はまだお話しできる段階にありませんが、もっと“色んなこと”ができるんじゃないかと検討をしています。

━━torneではゲームをしながらテレビ録画はできるが、小画面などを使ったテレビの同時視聴に対応しなかったのはなぜでしょうか。

石塚氏:PS3では、まずゲーム機としてのスペックをフルに発揮できることが前提になります。また個別のゲームによって、プレイ時にどの程度PS3のリソースが必要になるかは未知数です。テレビを同時に視聴することによって与えられる負荷が原因で、ゲームのプレイに影響を及ぼしてはならないと考えて、今回はテレビの同時視聴はできない仕様としました。


ゲームをプレイしながら地デジの録画が行える
━━ゲームをしながらテレビ録画をしている時にはコマ落ちが発生することもあるのでしょうか。

渋谷氏:そうですね、やはりどうしてもゲーム操作のタイミングや、接続している機器の状態などによってコマ落ちが発生する場合もあります。

━━タイムシフト再生についてはいかがでしょうか。

石塚氏:これについては詳細をお話しできないのですが、タイムシフト再生を機能として盛り込めないことはなかったのですが、現段階では開発内容の取捨選択により採用していません。もし発売後にタイムシフト機能を求めるユーザーの声が大きければ、検討することも必要だとは考えています。

━━チャンネル切り替え時の画面表示については、単体レコーダーとさほど操作性やスピード感が変わらないように感じます。

石塚氏:多くの方々から「CELLを搭載しているんだから、チャンネル切り替えも速いはずでは?」とご指摘を受けることがありますが、これについては実際のところ、デジタル放送の仕様に大きく関係してくる部分であり、PS3とtorneだけではどうにもならない所があります。一般的にデジタル放送を視聴する際には、受信時に暗号化された信号を機器が瞬時に解読して表示しています。torneはPS3とUSBで接続していますので、そのプロセスはさらに複雑になります。地デジの放送を受信し、一度解読された信号がtorneに入ります。そこから再度独自の暗号化処理を行ってPS3に伝送し、PS3で暗号を解読してからようやく画面に表示できるようになります。このような処理を高速に行いながらも、チャンネル切り替えにはどうしてもある程度の時間が必要になります。PS3とtorneの場合は、USB接続ながらソフトウェアプログラムの効率化を徹底するなどして、チャンネル切り替えの速度は一般的な地デジ対応のテレビと同レベルになっています。


デザイン担当の西沢学氏
西沢氏:チャンネル切替えの操作については、ゲームソフトのノウハウも採り入れて、ユーザーにとってストレスに感じられる部分を可能な限り軽減しています。torneのGUIでは、番組を切替える際に画面をブラックアウトさせてしまうのではなく、番組名など文字情報をクロスフェード表示させています。切り替え時に視覚的な演出を楽しんでいただくことによって、ユーザーにとってのストレスを軽減したいと考えました。元々ゲームの場合には、場面展開時などの“ロード時間”にグラフィカルな演出を挿入して、いかにユーザーにストレスを感じさせずに、ゲームの世界に没頭してもらえるかが大事な要素になります。torneの場合も、チャンネル切替えについては早くから課題として挙げられていましたので、このGUIにたどり着くまで開発陣も試行錯誤を重ねてきました。


そのほか、機能面についても色々とお話しを伺ってみたが、発表当初からの仕様に変更はないという。「番組の最大予約数は50まで」「1番組あたりの録画時間制限なし」という仕様なので、例えば大容量のHDDを接続していれば24時間連続録画も行える。

インタビューを終えて、筆者にとっての“torne”の印象がまた変わった。当初の不安点については、それぞれの理由が明らかになって納得できたということもある。それよりも、お話しをうかがったSCEの開発陣の方々に、揺るぎない新製品への自信がみなぎっているのを感じた。バージョンアップにより進化する余地があることもわかったので、やはり「torneにはなんかある!」と期待せざるを得ない。注目の新製品が、これからどう化けるのか、楽しみに見届けたいと思う。筆者も発売日にはショップに並んでみようかと考えている。

◆筆者プロフィール 鈴木桂水
元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、使いこなし系のコラムを得意とする。そのほかAV機器の情報雑誌などで執筆中。

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