デジタル・マスターの高品位なDA変換に活用

最高品質のレコード盤制作のために。ミキサーズ・ラボのカッティングスタジオにエソテリック「Grandioso N1」を導入!

公開日 2026/08/11 07:00 編集部:筑井真奈
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現在発売されている高音質レコードのカッティングのほとんどすべてを手がけている、ミキサーズ・ラボの“名匠”北村勝敏さん。北村さんのスタジオに、新たにエソテリックのネットワークプレーヤー「Grandioso N1」が導入されたということで、取材にお邪魔させてもらった。

ミキサーズ・ラボに導入されたエソテリックの「Grandioso N1」(最上段)

現代のレコードカッティングにおいては、カッティングマスターはデジタルで作成されることがほとんどだ。そのマスターデータを出来る限り“高音質”なまま、カッティングコンソールに送り込みたい。「Grandioso N1」は、そんな思いから2025年末に導入されたものとなる。

現代の高音質録音盤のほぼすべてのカッティングを手掛けている北村勝敏さん 

導入を主導したのは、エソテリック・マスタリング・センターで同社の高音質CDやレコード制作を手がける東野真哉さん。北村さんとは旧知の中であり、過去にも「Grandioso D1X」を2台持ち込み、コンソールの一部改造を行なうなど、カッティングにおけるクオリティを執拗に追求してきた。

Grandioso N1には、Grandioso D1Xより世代の新しいディスクリートDACが搭載されていること、また、(毎回持ち込むのは大変すぎるという思惑もあり……)東野さんたっての願いで、常設機としてミキサーズ・ラボに設置されるということになったそうだ。ちなみにネットワーク機能を活用しているわけではなく、ProTools等からのデジタルマスターデータを再生するDAコンバーターとしての使用である。

ノイマンのカッティングマシンが置かれているミキサーズ・ラボのスタジオ。メインスピーカーはGENELECを使用

ミキサーズ・ラボに設置されているノイマンのカッティングマシン「VMS 80」

Grandioso N1のサウンドを北村さんはどう聴いたか?「品位の高い、緻密で雑味のない音と感じました」と高評価。実はスタジオ用として、一般に発売されているものとは少しだけチューニングも変えているそうだ。

スタジオ機材の基準レベルに合わせて出力を高めているほか、フットもチューニングしている。電源ケーブルは他のものとも聴き比べを行なった結果、「純正が良い」ということで純正ケーブルが活用されているそうだ。

Grandioso N1のディスクリートDACのみを使用するという贅沢な使用方法

北村さんの元には、月に何十件もカッティングの依頼が持ち込まれるが、「いまはGrandioso N1しか使っていません」とのこと。

もうひとつ、アンテロープのDAコンバーターも設置されており、もう1人の若手カッティングエンジニア、加藤拓也さんはそちらを使うこともあるという。ロックなどよりパワー感が欲しいときはアンテロープを使うそうで、狙う音質に合わせてシステムを使い分けているようだ。

エソテリックから5月23日に発売された『ブラームス:交響曲第2番、大学祝典序曲』(バルビローリ、ウィーン・フィル)と、『モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番、同第27番、シューベルト:楽興の時』(カーゾン、ブリテン、イギリス室内管弦楽団)は、Grandioso N1が導入されて最初にカッティングされた盤となっている。

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エソテリックから発売されているレコード『ブラームス:交響曲第2番、大学祝典序曲』と『モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番、同第27番、シューベルト:楽興の時』
仕上がったレコードの音溝をチェックする北村さん

新しく仕上がった盤と、176.4kHz/24bitのマスターデータの聴き比べるという貴重な機会を得た。

システムはかたやGrandioso N1、アナログ再生はテクニクスの約40万円程度のプレーヤー(カートリッジはデノン「DL-103」)なので、そこは割り引いて判断する必要がある、という前提のもとだが、やはりレコードでは高域の伸びに限界を感じる。低域の深みも鈍い。それはカッティングエンジニアの北村さんも「こう仕上がってくるのか……」としばし黙考。

テクニクスのアナログプレーヤー「SL-1300G」にてエソテリック盤の仕上がりをチェック

だが、レコードには間違いなく“旨み”が凝縮されているのも事実。ピアノの芳醇さ、オーケストラの厚み感がもたらすブラームスの楽曲構成力はレコードでこそその味わいを深める。「もしここに、『Grandioso T1』を持ち込んだらどうなるでしょう?」と、東野さんも夢を広げる。

残念ながら、重量級プラッターを磁力で浮かせて再生するGrandioso T1は、スピード感が求められるカッティング現場に導入することは現実的に不可能、という結論がすでに出ているそうだが(スタジオの現場では、ターンテーブルはより早く定速に至ることの重要性が高い)、それでもどこまでマスターデータに迫れるのかとイマジネーションを広げてくれる。 

現代だからこそ追い込める、レコード・カッティングのさらなる追求。デジタルの最先端技術は、アナログレコードの制作にも新しい可能性をもたらしてくれるだろう。

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