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公開日 2016/12/09 10:00
【特別企画】VM760SLC/VM750SH/VM740MLを聴く

一斉試聴!オーディオテクニカの新VMカートリッジ上位モデル「700シリーズ」

山之内 正

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約50年の歴史を持つ、オーディオテクニカ独自方式のVMカートリッジが新ラインナップで登場した。高出力で使い勝手が良く、音質的にも優れたメリットを持つVMカートリッジ。新モデルは、針交換によって様々な音を楽しめるよう設計されているのも特徴だ。今回、山之内 正氏が700シリーズを試聴。3モデルそれぞれの音をチェックした。

手前から「VM760SLC」「VM750SH」「VM740ML」

音質的メリットも多いオーディオテクニカ独自方式のVMカートリッジが一新

カートリッジを50年以上にわたって作り続けているオーディオテクニカから、2016年は2つの重要な新製品が登場した。まずはフラグシップのMC型カートリッジ「AT-ART1000」(関連ニュース)を今夏に発売、そして12月にはVM型カートリッジの新製品を一気に3シリーズ9モデル投入した(関連ニュース)。ここではそのなかから、VM型の上位シリーズに属する3機種、「VM760SLC」「VM750SH」「VM740ML」に焦点を合わせ、音質を検証することにしよう。

リファレンスプレーヤーにはテクニクス「SL-1200G」を使用した

VM型はオーディオテクニカが1967年に開発した独自の発電方式である。高出力でMM型と同様の優れた使い勝手を実現していることはよく知られているが、独自の構造に由来する音質上のメリットが大きいことにも注目したい。左右を独立させたデュアルマグネットの配置はラッカー原盤に音溝を刻むカッターヘッドの形状と似ており、セパレーションが高く歪みが少ないなどのメリットがある。

オーディオテクニカのVM型カートリッジはすでに約50年の歴史を重ねているだけに、銘機と呼べる製品が多く、信頼性の点でも高い評価を確立している。一度に3シリーズ9機種もの新製品を投入するという今回の快挙も、長い年月をかけて培った経験がなければ実現できなかったに違いない。

オーディオテクニカのヘッドシェル「AT-LH15/OCC」を組み合わせて試聴した

ひとつのボディで針交換し音の違いを楽しむこともできる

さて、今回発売された3つのシリーズは、上位の700シリーズ、スタンダードの500シリーズ、そしてモノラル専用の600シリーズという位置付けで、それぞれに針先形状の異なるバリエーションが用意される。さらに、ステレオ仕様の製品群のなかでは各交換針の間に互換性があるので、複数の交換針を手元に用意し、好みやジャンルによって使い分けることもできる。MC型カートリッジは構造上の理由から針交換の際に本体交換となる例が大半だが、VM型やMM型のカートリッジは簡単に針交換ができるため、1つのボディで針の違いによるサウンドのバリエーションを手軽に楽しむことができるのだ。

針先は簡単に取り外して、オーディオテクニカの別売品と交換可能。好みやジャンルによって使い分けたりするのも楽しい

700シリーズの3機種はいずれもハウジングにダイキャストアルミ合金を使用し、高い剛性によって不要共振を低減する工夫を凝らしている。さらに、アルミテーパー製カンチレバーと高効率のパラトロイダル発電系を組み合わせるなど、VM型カートリッジの開発で培った技術を追い込み、音質改善策を徹底した。

そして今回のラインナップの場合、振動系と磁気回路の基本構造は3機種共通だが、針先形状は最上位のVM760SLCが無垢特殊ラインコンタクト針、VM750SHが無垢シバタ針、VM740MLが無垢マイクロリニア針をそれぞれ採用し、絶妙な音質の違いを引き出している点が新しい。

レコード世代の読者なら、それら針先形状の違いから、ある程度は音質傾向を想像できるかもしれない。実際に聴き比べてみると音の違いは想像以上に大きく、推奨音楽ジャンルもそれぞれ微妙に変わってくる。デジタルオーディオではそこまで手軽に音質傾向の異なる製品を使い分けるのは難しいが、アナログでは手頃な投資で大きな音の違いを引き出すことができる。自分で好みの音に追い込む楽しさはあらためて指摘するまでもない。レコード人気がここまで高まった背景には、自分で音を追い込めるマニアックな面白さがあることは間違いない。

実際にそのサウンドを聴く

ここからは、VM760SLC、VM750SH、VM740MLの3機種を試聴して、具体的な音質の違いを検証していく。なお、シェルは同社の「AT-LH15/OCC」を組み合わせた。アナログプレーヤーはTECHNICSの「SL-1200G」を用いている。

最上位「VM760SLC」をチェック

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