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【特別企画】VM760SLC/VM750SH/VM740MLを聴く

一斉試聴!オーディオテクニカの新VMカートリッジ上位モデル「700シリーズ」

公開日 2016/12/09 10:00 山之内 正
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VM740ML(無垢マイクロリニア針)

VM740MLは700シリーズのスタンダードモデルとなる使いやすいカートリッジで、スタイラスには無垢マイクロリニア針を採用している。針先形状をなめらかに仕上げたスタイラスならではのバランスの良い再生音を実現しており、ジャズやロックなどパルシブな低音の再生も得意とする。オールラウンドに対応するという意味では700シリーズ3機種のなかでは最右翼に位置する製品と言えそうだ。VM760SLCのようなワイドレンジ感やVM750SHが聴かせる力強さはないが、VM型ならではのセパレーションの高さ、付帯音の少ないニュートラルな音調に好感を持つ。

VM740ML(無垢マイクロリニア針使用)

幻想交響曲は一体感のあるオーケストラのなかからオーボエやクラリネットの旋律が素直に浮かび上がり、立体的なサウンドステージが展開。ティンパニやコントラバスの低音には十分な量感がそなわり、ピアニシモでも音が痩せることがない。レンジの広がりはそれなりだが、空間情報の再現性は上位機種に迫るものがある。

VM740MLをSL-1200Gと組み合わせたところ

ヴォーカルは発音が鮮明で歌詞を聴き取りやすく、ギターと声のセパレーションも高い水準にある。左右のセパレーションも上位2機種とほぼ同等の水準を確保していて、VM型の長所を素直に聴き取ることができた。ピアノは楽器の音像が広がりすぎず、ステレオ音場の密度の高さ、低音部の重量感のる響きを忠実に再現。過剰な表現に傾くことなく豊かな情感を引き出す辻井伸行の巧みなコントロール能力をうかがうことができた。



700シリーズの3機種はそれぞれ個性豊かな音調を実現しているが、同じボディを共有するだけに共通点も少なくない。複数の楽器を精密に描き分ける優れたセパレーション、重心が低く安定した周波数バランスなどはその代表的な例で、いずれも音楽を聴くうえで重要な要素である。本格的にレコード再生に取り組むことを目指す音楽ファンに安心してお薦めできる。



企画協力:オーディオテクニカ

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