PR 公開日 2025/12/11 06:40

HARBETHの魅力は“声”にあり!色褪せぬエバーグリーンなサウンドを、あえてのアニソンで斬りまくる!

ドライバーユニットの素材が「XD2」に進化した「HL-Compact7ES-3 XD2」

イギリス・BBCのモニタースピーカーの流れを組むHARBETH(ハーベス)。昨年より国内代理店がサエクコマースに移管、そのエバーグリーンなサウンドには根強いファンも多い。“伝統のサウンド”と呼ばれることの多いハーベスだが、果たしてそれはどのような音なのだろうか? HARBETHの魅力は「声」にあり、と喝破する秋山 真氏が、最新の「HL-Compact7ES-3 XD2」を、あえての“アニソン”で語り尽くす!

HARBETH 2ウェイ・フロア型スピーカー「HL-Compact7ES-3 XD2」(1,078,000円/ペア・税込)

伝統的の音色と現代的な性能を見事に融合

私は長年、英国スピーカーを愛用してきた人間だ。とりわけ「ハーベス」というブランドには思い入れがあって、自宅のリビングで四半世紀近く使い続けているのだが、そんな話を若いオーディオ仲間にすると、必ず返ってくるのが、「ハーベスってどういう音なんですか?」という質問だ。

なるほど、古くから「黄金のバランス」と評されるハーベスサウンドではあるが、実際の音を聴いたことがない若者にしてみれば、あまりに漠然とした表現でピンと来ないのかもしれない。

ハーベスは1977年に、かつてBBC技術研究所主任だったH・ダッドリー・ハーウッド氏によって設立された。ブランド名の「ハーベス(HARBETH)」は、そのラストネームと、彼の妻エリザベスの名前を合わせたものだというのは、ベテランのオーディオファンにとってはお馴染みのエピソードだ。

同年、1号機の「Monitor HL」を発表し、続いて小型の2号機「Monitor ML」を開発。しばらくはこの2機種のみを、小改良しながら地道に作り続けていたが、1987年にハーウッドが、弟子のアラン・ショー氏に会社の経営を託して引退。そこからショーは、コンピューターによる設計を積極的に取り入れ、次々と新製品を発表していった。

なんていう書き方をすると、なんだかよくある“会社がダメになっていくパターン”みたいに思われるかも知れないが、実際はさにあらず。若く才能あふれる設計者だったショーは、伝統的なBBCモニターの音色と、現代的なオーディオ性能を見事に融合させ、世界中に新生ハーベスサウンドのファンを獲得していった。

なかでも、我が国におけるハーベス人気は一際高く、特に1988年に発売された「HL-Compact」は、「Monitor HL」よりひと回り小さい絶妙なサイズ感が日本の住宅事情とマッチして大ヒットモデルとなり、その後は1989年に「Monitor HL」の系譜を受け継ぐ「HL5」が、1990年には「Monitor ML」よりもさらに小さい「HL-P3」がライナップに加わり、現在まで続くこの3本柱がハーベスの人気を不動のものとしていく。

我が家でも、主にリビングの映像システム用として、HL-P3、ハーベス版LS3/5A(1988年発売)、HL-Compactという順に3つのモデルを愛用してきたが、特にHL-Compactについては、55型のテレビと組み合わせるのに丁度いいサイズで、インテリアと調和するトラディショナルなデザインが家族にも好評だった。過去にPHILE WEBで書いたレビュー記事のなかで度々写真に写っていたので、覚えておられる読者もいるかもしれない。

秋山氏のリビングルームで長く愛用されていた「HL-Compact」

ドライバーユニットの素材が進化

本稿で紹介する「HL-Compact7ES-3 XD2」は、その名の通りHL-Compactの直系にあたるスピーカーで、ポリマー系200mmコーン型ウーファーとアルミニウム25mmドーム型トゥイーターによる2ウェイ2スピーカー・フロントバスレフ型という基本スタイルは不変。エンクロージャーのサイズもほぼ同じだ。

アルミニウムによるコーン型トゥイーターを搭載

ただし、型番・外観・内容的にはHL-Compactの次世代モデルである「HL-Compact7(1994年)」の後継機という解釈が正しく、そこから約30年かけて、「HL Compact7ES-2」→「HL Compact7ES-3」→「HL-Compact7ES-3 XD」とバージョンアップを経た最新モデルが本機ということになる。なお、末尾のXDは「eXtended Definition」の略で、分解能・解像度の拡充を意味している。

毎回、様々な改良が加えられているが、今回の一番の変更点は「RADIAL 4」と名付けられたコンポジット素材の中・低域ドライバーユニット用ダイアフラムだ。「RADIAL」は、ハーウッドがBBC在職中に開発したポリプロピレン振動板に、ショーがアルミニウムを混合させて完成させた、いわばハーベスの要のような技術で、HL-Compact7が初搭載。4という数字は4世代目を表す(3はスキップした模様)。

ウーファー用ダイヤフラムの素材が進化

本機の100万円を超えるプライスタグには私を含め、多くのオールドファンが驚かされたと思うが、RADIAL 4の研究開発には、昨今の原材料費の高騰もあって多額の費用がかかったようだ。

しかし、初代HL-Compact7が30万円だったことを考えると、やはり隔世の感を禁じ得ない。もちろん、これはハーベスに限った話ではないのだが……。

スピーカーターミナルはシンプルはシングル方式

 

「人の声」を大切にするDNAを継承

では、肝心のサウンドはどう変わったのか?

ハーベスは「黄金のバランス」であると同時に、「エバーグリーン」な存在とも言われてきたが、結論から書くと、XD化以前のハーベス愛用者の心をざわつかせるには十分なほどの進化を遂げていることが確認できた。

ハーベスサウンドの根幹となっているのは「人の声」である。源流となるBBCモニターはアナウンサーの声を正確に再生することを命題に開発されたモニタースピーカーであり、ハーベスもそのDNAを代々継承してきた。その自然な発声と、絶妙なボディ感、人肌な温度感などは、音楽だけでなく映像作品とのマッチングも極めて良好で、それもあって我が家ではHL-Compactを映像システムと組み合わせていた。

ただ、最近は気になることも。それは、私が毎週楽しみにしている深夜アニメを観ている時によく起きた。本編中は生き生きとしたキャラクターの声に魅了されるばかりなのだが、ひとたびOPやEDで曲がかかると急に音が寸詰まってしまい、一気に現実世界に引き戻されてしまうのだ。

最初のうちは、放送時のラウドネスノーマライゼーションが原因と考えていたが、ある時、別の取材で他社製の最新スピーカーと比較試聴する機会があり、同じアニメを観てビックリ。全然寸詰まらないのである。いくらエバーグリーンな存在とはいえ、最新のアニソンを再生するには、37年前のHL-Compactでは明らかに分解能・解像度が不足していたのだ。必要なのはまさにXD化だった。

 

アニソンにフォーカスを当てて検証!

そこで今回は、今年私がよく聴いた最新アニソンにフォーカスを当ててHL-Compact7ES-3 XD2の試聴を進めることにした。ハーベスファンには馴染みの薄い音源かもしれないが、その方がXD2化の恩恵が分かりやすいと思ったからだ。

組み合わせるプリメインアンプには、マランツ「MODEL 60n」(242,000円)とアキュフェーズ「E-5000」(1,045,000円)を用意。前者は以前、自宅でテストした際にHL-Compactと抜群の相性を見せたこと。後者はどんなスピーカーでも鳴らせる絶対的な信頼性で選んだ。

アキュフェーズ&マランツのプリメインアンプを用意。送り出しにはLUMINのネットワークプレーヤー「T3X」(858,000円/税込)を組み合わせ

まずはhalcaの『ウィークエンドロール』(TVアニメ『mono』エンディングテーマ)を、MODEL 60nとの組み合わせで聴く。

halcaの少し舌足らずで鼻にかかったような甘ったるい歌声(←全部褒め言葉です)と、厚みのあるバンドサウンドが耳に心地よい楽曲で、作品の世界観を見事に表現しているだけでなく、曲自体にもなんとも言えない爽快感と中毒性があり、今年最もヘビロテした1曲かもしれない。録音のクオリティも高く、秋山イチオシのアニソンだ。

ゆったりとしたテンポで音数もそれほど多くなく、極端な海苔波形でもないため、HL-Compact(以下、初代)でもボーカルは過不足なく鳴ってくれるが、HL-Compact7ES-3 XD2(以下、XD2)は、バックバンドの鮮度感が違う。特にバスドラの沈み込みや重量感、アコギのキレの良さや粒立ちに明確な差があって、ピラミッドバランスがより際立つ。なるほど、これが令和のハーベスサウンドか。

続いて、BAND-MAIDの『Ready to Rock』(TVアニメ『ロックは淑女の嗜みでして』オープニングテーマ)を再生してみる。

その見た目からは想像もつかないガチのハードロックバンドBAND-MAID。メンバーがアニメ内の演奏シーンのモーションキャプチャーアクターを務めたことでも話題となったが、その演奏は凄まじいの一言。正直なところ初代では完全にお手上げ状態で、叫ぶようなギターも、唸るようなベースも完全に飽和してしまうし、ドラムに至っては、高速連打やツインペダルの動きにウーファーが全く追従してくれない。

しかし、これがXD2になると、混濁感と腰砕けな印象が一掃。聴感上のダイナミックレンジが飛躍的に向上して、彼女たちが繰り広げる演奏バトルの様子がビシビシと伝わってくるようになった。

ただし、ドラムのツインペダルだけはもう少しスピード感が欲しかったので、ここでアンプをE-5000にスイッチすると、ウーファーのピストンモーションが俄然速くなって、強烈なビートを叩き込んでくるようになった。流石はE-5000の駆動力・制動力である。

ここまでの2曲でXD化の恩恵はよく分かったので、最後は、今年の夏アニメで一番のお気に入りだった作品『雨と君と』から、オープニングテーマの鈴木真海子『雨と』をチョイス。元来よりハーベスの十八番であるアコースティックな楽曲である。

あれ?サンバ・ジャズの軽快なリズムが、さぞかし心地よいだろうと思ってセレクトした曲なのに、なんだか少し演奏がぎこちないぞ。そこでアンプをMODEL 60nに戻すと、まるで水を得た魚のように本来のパルチード・アウトのリズムを取り戻したではないか。

じつはこの現象、以前に初代をマランツMODEL 40で鳴らした際にも起こっていて、下位モデルのSTEREO 70sの方が伸び伸びと歌ってくれる感じがあった。

その理由を自分なりに考察してみたが、ハーベスのスピーカーにはエンクロージャーの箱鳴りを適度に活用するという設計理念があるため、アンプが過度にスピーカーユニットをグリップしてしまうと、箱鳴りとのバランスが取れなくなってしまうのではないか。あくまでも私の感覚的な話ではあるのだが、本機の鳴らし方のコツとして覚えておくと良いかもしれない。

このことはスピーカースタンドを選ぶ際にも重要で、オーディオのセオリー通りに強固な台に置いてみると案外うまく鳴ってくれなかったりする。実は専用スタンドの「HSS-7C」は、日本オリジナル企画。高さは低すぎるし、心配になるほど華奢な造りなのだが、出音はじつに秀逸で、なかなかこれを超えるスタンドが見つからない。ハーベスの黄金バランスは、様々な要素が複雑に絡み合って生み出されたものなのだ。

専用スタンド「HSS-7C」。華奢な外観だがハーベスの魅力をよく引き出してくれる。価格は79,000円(ペア・税込)

決して色褪せぬ、エバーグリーンな音

さて、ここまで初代とXD2の比較を中心にハーベスの魅力について語ってきたが、冒頭の「ハーベスってどういう音なんですか?」という問いに対しては、まだ十分な回答ができていないかもしれない。

そもそも、1990年頃のインタビューで、ショーは、「ナチュラルなバランスで録音されたソースであれば、ハーベスの実力を100%発揮できる。しかし、マルチマイク方式でイコライザーを用いた録音は、メリハリがあっても響きに暖かみが感じられず、本機の魅力を引き出すことはできない」と答えている。時代は変わっても、その考えは今も同じなのかも知れない。もし彼に、「BAND-MAIDの曲でレビューした」なんて伝えたら、きっと苦い顔をするだろう。

来年ハーベスは創立50周年を迎える。昨今主流な金属筐体スピーカーのハイスピードでハイレゾリューションなサウンドとは趣きが全く異なるが、オーディオの世界には流行り廃りがあるのもまた事実。きっと100周年を迎えた未来でも、「HL-Compact7 XXXはエバーグリーンな音」とか言われているんだろうなぁ。そんなことを想った今回の取材だった。

(提供:サエクコマース)

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