PR 公開日 2025/10/03 06:30

スピーカーケーブルが演奏の実在感を劇的に高める。“技術力”で攻めるオーディオクエスト「Brave Heart」レビュー

最新素材と高度な技術を惜しみなく投入

ケーブルブランドの名門AudioQuest(オーディオクエスト)から新しいスピーカーケーブルが発売された。その名は「Brave Heart」。

AudioQuest スピーカーケーブル「Brave Heart」 価格:712,800円(2.0mペア)/985,600円(3.0mペア)※ともに税込

「William Tell」にかわる “Folk Heroes(伝説のヒーロー)シリーズ” の新たな最上位機でもあり、同社のフラグシップライン “Mythical Creatures(神話上の生物)シリーズ” 「Thunder Bird」に代わる位置を占める。これでもか!というほど最新かつ高度な素材と技術が投入されているスピーカーケーブルである。

 

オーディオクエストを象徴する3つのキー技術

本製品に搭載される重要な技術を3点、ご紹介しよう。1点目は、パーフェクトに近い表面構造を持つ「PSC+(Perfect-Surface Copper +)」の単線導体だ。Thunder Bird、William Tellと同じく、最高レベルの精製度を誇る無酸素銅に2度の焼き鈍(なま)し処理を施している。

オーディオクエストのケーブルはすべて「単線導体」にこだわっている他、方向性が必ず設けられている。導体のグレードは4種類あり、今回のBrave Heartでは最上位となる「PSC+」が採用される

同社はケーブルにおける歪み発生の最大原因は撚り線の間の電磁的相互作用であると考え、すべてのケーブルの導体を単線としている。

また、いわゆる表皮効果については諸説あるが、導体の表面は「導体内部の電流密度が最大の領域と、外部の磁気密度の最大の領域とが交じり合う」ので、導電経路の品質に決定的な影響を及ぼすと同社は考え、導体の表面の滑らかさにこだわっている。

厳密に方向性を制御されているこのPSC+導体、本製品Brave Heartには12AWGのものを採用している。下位機William Tellは13AWG、上位機Thunder Birdは10AWGとなっており、その中間に位置する(注:AWGは数字が小さいほど径・断面積が大きくなる)。一般的に導体径が大きくなると低域の量感・表現力が高まる傾向があるが、同社によれば「トルク」が大きくなり実質的なダンピングファクターが高まるのだという。

 

絶縁体とシールドにも独自技術を投入

2点目。絶縁体はアップグレードされたポリプロピレンフォームである。「フォーム」すなわち発泡体であるから、究極の絶縁体である空気を大量に含んだポリプロピレンであろう。

絶縁体にはさらに同社独自の「DBS(誘電体バイアスシステム)」の強力な72V仕様を装備することにより、絶縁体に宿命的なノンリニアな充放電をリニア化。歪みと損失を大幅に減少させている。

72Vの最新DBSシステムを搭載。絶縁体の安定した稼働を実現する

3点目、シールドにはグラフェン+カーボンメッシュのネットワークを採用してRF(Radio Frequency)ノイズを強力に除去。さらに銀を分厚くコーティングしたシールドドレインワイヤーをアンプでなくスピーカーのマイナス側にのみ接続してRFノイズの消散性能を高めている。

Brave Heartの内部構造。カーボン+グラフェンによるシールドで外来ノイズを除去する

さらに、「Mythical Creatures」「Folk Heroes」シリーズのみに採用されている「ZEROテクノロジー」がBrave Heartにももちろん採用されている。「ZEROテクノロジー」はプラス導体とマイナス導体の絶縁体間の相互作用を排除しケーブル自体に特性インピーダンスを持たせない。これによりコントラスト・トランジェントを劇的に改善する。

この「ZEROテクノロジー」、アンプのソースインピーダンスとスピーカーのロードインピーダンスの不整合という原理的な問題を抱えるスピーカーケーブルにおいては、特に低域のエネルギー感と制動力をともに高めるはずだ。

その他、従来プラス極・マイナス極がほとんどの部分で1本にまとめられていたところをそれぞれ独立させたので、取り回しが大幅に改善しただけでなく電磁的な干渉を起こしがちな両極間の物理的な距離も確保されてフォーカス性能を高めた等々、技術的なトピックは枚挙にいとまがないBrave Heart。……もう我慢できない。Qobuzを再生して試聴してみよう。

 

音場が劇的に静かになり、演奏の実在感を高める

セルビアのベーシスト、ネナド・ヴァシリッチの『Bass Room』はオンマイク気味に録られたベースが指弾きも弓弾きも、空気を楽々と、しかし大きく重く揺り動かすさまにびっくりする。もちろんベースの音像自体もギュッと引き締まり、なおかつズシンと重いのに、後を引きずってもたつかせることなくなんとも軽快に(!)歌うのである。足取り軽やかに歌うずっしり重いベース音像と、一方で劇的に静かになった音場とのこのコントラストは演奏の実在感をこの上なく高める効果がある……。

アキュフェーズのパワーアンプ「P-7500」に装着したところ。方向性が設けられており、アンプ側には「AMP」と記載されている

タン・ドゥン『交響曲1997「天、地、人」』は冒頭で打ち鳴らされるたくさんの鐘の音が高域方向にも低域方向にも実に気持ちよく伸びる伸びる! 鐘特有の倍音も精緻度を大いに高めている。ヨーヨー・マの独奏チェロは静けさを増した空間に胴鳴りの解像度がこのうえなく高まって、しかもよく歌う。児童合唱やかけ声は瑞々しく濃い音色だ。そしてやはり太鼓群のアタックが重くかつ速い!

他方でハイ・ファイ・セット「卒業写真」は、ケーブルのとてつもなく広い周波数レンジがこの古い録音の魅力である太く厚い中域を相対的に痩せさせることがない。逆に、ボーカル音像はいつも聴くよりウォームでむっちりとしていて肉声感がとても豊かだ。ビブラートが揺らがないのも素晴らしい。ベース、ピアノ、ギター等伴奏楽器は音色と質感が丁寧に描き分けられる。コーラスは瑞々しく濃い。ストリングスは滑らかなブレンド感が耳を酔わせる。

そして輪郭を意識させるのではなく音色と質感を細やかに描き分けるかたちで各音像を描き分けるのでともすれば聴き落としそうになるが、どの試聴曲を聴いても、音像定位が実に正確だ。各音像にピントがさりげなくビシッと定まっているのが心憎い。

 

B&Wの「802 D4」の背面端子に接続したところ

たしかに高価なスピーカーケーブルではある。しかしこれほどの性能と魅力だ、聴かずにすますのはもったいない。ぜひいちど試聴していただきたい。

Brave Heartのパッケージ

(提供:ディーアンドエムホールディングス)

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