PR 公開日 2025/06/09 06:30

リンのネットワークプレーヤー「MAJIK DSM/5」の到達点。過去モデルとの比較を通じて徹底検証!

「MAJIK DSM-i」「MAJIK DSM/4」と比較レビュー

機能を強化しながら進化してきた末弟モデル

スリムな末弟がいつのまにかファミリー全員を支える頼もしい存在に成長したイメージだろうか。LINN(リン)のMAJIKシリーズの最新機種「MAJIK DSM/5」のことだ。初代機から15年、前作からも5年経っているので納得できる進化なのだが、先行する兄たちに迫る成長ぶりは目を見張るものがある。

LINNの歴代MAJIK DSM(アンプ内蔵ネットワークプレーヤー)シリーズ。上から最新の「MAJIK DSM/5」、中段が「MAJIK DSM/4」、最下段がMAJIK DSM-i」

MAJIKシリーズはリンのネットワークコンポーネントのなかではエントリーの位置付けながら、フラグシップのKLIMAXに準じる歴史があり、機能を強化しながら世代を重ねてきた。その変遷をたどると、プレーヤー機能に特化したDSに初めてプリメインアンプを内蔵した初代MAJIK DSM(2009年発売時の名称はMAJIK DS-i)から前作のMAJIK DSM/4(2020年発売)まで5つのモデルがある。型名と発売年ごとに追加・更新された主な機能を整理すると次のようになる。

初代MAJIK DSM(=MAJIK DSM-i) 2009年 
MAJIK DSM/1 HDMI1.3 2012年
MAJIK DSM/2 EXAKT LINK 2015年
MAJIK DSM/3 HDMI2.0 2016年
MAJIK DSM/4 デザイン一新 クラスDアンプ 2020年

型名の数字と世代が1つずれているのはHDMI端子を積んだ2012年モデルをメーカーが第1世代と呼んでいるためで、そこに特に重要な意味はない。きめ細かくアップデートを行うことで最新の技術トレンドをキャッチアップしてきた半面、アンプ一体型プレーヤーとしての基本構成は、2020年にMAJIK DSM/4が新たなデザインで登場するまで、10年以上受け継いできた。

スピーカーはフランコ・セルブリンの「Accordo Goldberg」を組み合わせ

MAJIKシリーズの進化を検証!

MAJIKシリーズの保守的ともいえる設計姿勢は、DSM/4で大きく転換し、2025年モデルのMAJIK DSM/5はさらに一歩踏み込んで音質改善に舵を切っている。DACにAK4493Sを採用し、上位機種同様「ポストフィルター・フィードバック」技術を用いたクラスDアンプに格上げするなど、心臓部の回路構成とグレードを大幅に見直したことがその一つ。

さらに、筐体を肉厚アルミに変えてフットも金属製の3点支持に変更するなど、上位機種のノウハウをMAJIKのグレードに落とし込んでいることにも注目したい。いずれも本質的な改善で、骨太な内容だ。

それ以上の詳細はニュース記事を見ていただくことにして、早速本題に入ることにしよう。初代のMAJIK DSM、前作に相当するMAJIK DSM/4の2台と比べながら、最新のMAJIK DSM/5が具体的にどう成長したのか、検証することが本記事のテーマだ。

リンのアンプ内蔵ネットワークプレーヤー「MAJIK DSM/5」(価格:1,100,000円/税込)。天面にKLIMAXシリーズ譲りのガラスボリュームが追加された一方、ピンアサインは省略されている
 
初代MAJIK DSMの外観は懐かしいと同時に現代の視点から見て新鮮さもある。アンプを内蔵する前のMAJIK DSをいまも自宅で使っているのでなおさらそう感じるのかもしれないが、ひと昔前のリンの製品に共通するデザインは古びていないし、無駄を排したシンプルな構成は共感を誘う。「CHAKRA(チャクラ)」と名付けられた技術を用いたアナログアンプを内蔵し、出力はチャンネルあたり100Wを確保。CHAKRAは最近まで現行製品の一部に使われていた息の長いリンのオリジナル技術だ。

声や旋律楽器がよく歌うバランスの良い再生音は当時の印象と少しも変わらず、「水上の音楽」でトランペットやホルンが奏でるピリオド楽器ならではの素朴な音色や打楽器の豊かな中低音など、心地良さに包まれるサウンドが展開した。ジェニファー・ウォーンズやリッキー・リー・ジョーンズなど少し懐かしいヴォーカルを聴くと、声が細身に痩せることなく肉声感が感じられ、リズムを刻むギターやパーカッションはとても反応が良い。ネットワークプレーヤーとアンプの一体設計は当時まだ珍しかったが、最初から高い完成度に到達していたことがわかる。

MAJIK DSM/4はビスポーク製のクラスDアンプを内蔵し、TI製のDACを積む2020年モデルを試聴した。デザインだけでなくDACやアンプがそれ以前のMAJIKと異なることもあり、再生音の印象は現代寄りに生まれ変わっている。オーケストラの各セクションを正確に鳴らし分けるセパレーションの高さに加えて、ピアノ独奏曲のダイナミックレンジの大きな演奏など、音楽の起伏がひとまわり大きく感じられることが大きい。強弱の表現に余裕が生まれ、ステージをより立体的に再現する能力も上がっている。メインヴォーカルやリズム楽器のまわりにバックコーラスが厚く広がる描写など、同じ曲を聴いているのに初代機に比べるとスケールがひとまわり大きく感じられるほどで、進化は小さくない。

サヴァールのヘンデルを聴いて、音場の開放感と見通しの良さを獲得していることにも気付いた。DSM/4以降の音の変化のなかで、筆者が最も強い印象を受けたのは、その空間の広さと奥行きの深さだ。

リアパネルの変更過程を見ると、MAJIK DSMの考え方の進化もよくわかる。一番上が「MAJIK DSM-i」で、多数のアナログ入力も搭載しており、プリアンプ的な使い方も想定されていた模様。中段が「MAJIK DSM/4」で、HDMI入力が4系統と映像機器との連携も大きく視野に入ってきた。最下段が「MAJIK DSM/5」、HDMIは1系統と省略される一方で、アナログ入力を強化。またスピーカーターミナルもより豪奢なものとなっており、よりピュアオーディオ的な思想が強いといえよう。さらにEXAKTリンクも追加されており、リンの他製品との連携やグレードアップにも繋げられる仕様となっている

エモーショナルな表現の深さと浸透力の強さ

最新のDSM/5に切り替えた瞬間、初代機とDSM/4の違いよりもさらに音の変化が大きいことに気付いた。初代機とはゲインが異なるのでボリューム調整が必要だが、DSM/4とは変わらないはず。それにもかかわらず、キックドラムの瞬発力や連打するティンパニのエネルギーが明らかに上がっているし、ヴォーカルやサックスが力強く迫ってくる描写も耳を疑うほどリアルだ。

ボリュームコントロールが追加されたほか、天板の放熱穴のデザインも変更されている

リンの製品らしくディテールや輪郭を強調するような演出とは距離を置いているのだが、歌の表情の濃淡や息遣いの生々しさはシリーズの歴代モデルとは明らかに次元が異なり、エモーショナルな表現の深さと浸透力の強さが半端ではない。

各楽器の音像が正確に定位する空間的なセパレーションに加えて、同じ音の連打やトレモロなどを鮮明に鳴らす時間分解能の高さにも、SELEKTやKLIMAXと同じような進化が聴き取れる。そこにはとても重要な意味がある。一言で言えば、時間応答が優れ、立ち上がりが鈍らず、音色を描き分ける精度が上がっているのだ。

レイチェル・ポッジャー率いるブレコンバロックのゴルトベルク変奏曲をMAJIK DSM/5で聴くと、通奏低音の音圧が大きくなったように感じるのだが、それは低音から高音まで複数の楽器のアタックが揃ったことで音響的なエネルギーが上がったことを意味している。演奏の躍動感が蘇り、奏者との距離が近くなったと感じるのも同じ理由だ。

ORGANIKを積むKLIMAXではそのエネルギーがさらに大きいのだが、既存のDACチップを積むMAJIK DSM/5でも程度の差こそあれ同じ方向の進化を実感できたのは意外だった。

触る喜びを掻き立てる、KLIMAXシリーズ由来の透明なボリュームはデザイン面でも好評

スピーカーターミナルもより豪奢なものへ。DSM/4ではコネクタ間のスペースが狭くYラグが使いにくかったが、こちらは問題なく使用できる

代表モデル3機種を聴き比べながらMAJIKシリーズ15年の変遷をたどるつもりで試聴を始めたのだが、新しくなるほど進化の幅が大きいので、これは同じシリーズというより完全に別の製品ととらえた方が良いと考えることにした。DSMファミリーのなかでMAJIKの存在感がここまで大きくなることはかつてなかった。上位機種の著しい成長に刺激されて一気に脱皮した感がある。MAJIK DSMもついにここまで来たかというのが偽らざる感想だ。

(提供:リンジャパン)

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