HOME > レビュー > リン「MAJIK DSM/4」で人気スピーカー5モデルを鳴らし分け!ワンボックスで実現する高品位な音楽世界

【特別企画】スペースオプティマイゼーションの効果も確認

リン「MAJIK DSM/4」で人気スピーカー5モデルを鳴らし分け!ワンボックスで実現する高品位な音楽世界

2022/03/09 生形三郎
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
2007年にいち早く市場投入されたDSシリーズを皮切りに、ネットワークオーディオの世界を牽引してきたスコットランドのオーディオブランド、LINN。

なかでも、同社プロダクトにおいてエントリーモデルとなる「MAJIK DSM/4」は、シンプルかつ洗練されたネットワークオーディオ環境を実現できる珠玉のプロダクトとして、ラインナップ中でもナンバーワンの人気を誇る存在である。LINNならではの利便性高いネットワークオーディオシステムと、着実な駆動力を持つクラスDアンプを軽量コンパクトな筐体デザインにビルトイン。本機とスピーカーだけでストリーミングを含む様々な音楽メディアへ縦横無尽なアクセスが可能になる優れものだ。

シンプルで高品位な音楽再生を実現する、リンの一体型ネットワークプレーヤー「MAJIK DSM/4」

ここでは、そんな「MAJIK DSM/4」を日本市場において注目を集める人気スピーカー5機種と組み合わせて、音楽ソースの、そして、スピーカーのどのような魅力を引き出してくれるかを探った。

最新の人気スピーカー5モデルと組み合わせ。中央から外に向かってJBL「L100 Classic 75」、PIEGA「Premium 501」、FOCAL「Aria926」、SONUS FABER「Olympica Nova I」、Bowers&Wilkins「805 D4」

■ネットワーク機能にアンプも統合。フォノもHDMI入力も持つオールインワン機

MAJIK DSM/4は、前身となる「MAJIK DS-I」を初代機として2009年に登場以来、周辺機能のバージョンアップを重ね進化を遂げてきたモデルで、本機で第5世代目となるプロダクトである。なお、「DSM」とは、デジタルストリームを表す「DS」に、マルチパーパスなどを表す「M」を足し合わせたモデルネームだ。今回ご紹介する「MAJIK DSM/4」のように、ネットワークオーディオ機能に加え、プリアンプおよびパワーアンプ機能を搭載し、先述のように本機のほかはスピーカーだけを用意すれば、すぐさま高品位なオーディオシステムが完結する「1BOXミュージック・ソリューション」を指している。

LINN「MAJIK DSM/4」(価格:638,000円/税込)※2022年2月より価格改定

本機の各部を見ていこう。まず、デジタルプレーヤーの要となるDAC部には、「KATALYST DAC Architecture」からの流れを汲むDACシステムを搭載して高品位再生を実現。アンプ部にも、上位機「SELEKT DSM」で初めて本格採用された同社製高性能クラスDアンプが搭載されている。このクラスDアンプの実力は、同社が誇るアナログアンプ「CHAKRAアンプ」のパフォーマンスを大きく凌ぐものといい、電源規模こそ異なるものの増幅回路部はSELEKTと同一構成という贅沢な仕様になっている。

機能面では、実に多方位のソースに対応する懐の広さがある。Spotify ConnectからTIDAL、Qobuzなどのストリーミングサービス、roonおよびネットワークファイル再生、Airplayやインターネットラジオの数々を有線およびWi-Fi接続で提供するほか、Bluetooth接続にも対応。さらに、4系統のHDMI入力と1系統のHDMI出力を備え、AVシステムとの親和性も高いという守備範囲の広さを誇る。

MAJIK DSM/4の背面端子。RJ-45のネットワーク端子を搭載、HDMIを4系統持つことも特徴

加えて、LINNならではの高品位なフォノイコライザーアンプを備えることも注目ポイントだ。同社「URIKA II」で開発されたアナログ、デジタルのハイブリッド構成が踏襲されており、位相回転や歪み増加のリスクを避けるために、低域領域やゲイン調整はデジタル・ドメインで、高域領域はアナログ・ドメインで調整を行ない最適なイコライジングを実現する。これらは、LINNがEXAKT SYSTEMで培ってきた、スピーカーネットワークにおける高度なクロスオーバー技術を応用したものだ。

MAJIK DSM/4の天板を外し、内部構造を確認。コンパクトな基板に

そして、最も特徴的な機能は、LINN独自の定在波除去システム「スペース・オプティマイゼーション」の対応だろう。これは、リスニングルームの寸法を入力し、それに基づいて定在波の振る舞いを高次にシミュレーションし、根本的な解決が容易には難しい低音域の定在波、具体的には80Hz以下の周波数帯域にアプローチするものである(詳細は後述する)。

外観は、同じくSELEKTの意匠を受け継いだシンプルで美しいデザインが特徴的だが、その中に優れた操作性を内包する点もLINNならではだろう。フロントパネルの大型液晶ディスプレイは、鮮明な表示が得られる有機EL仕様となっており、とりわけ、楽曲名が長くなりがちなクラシックソースにも高い視認性が確保されている。

フロント上部に並んだボタンはスマートボタンで、ユーザーが好みの機能を割り当てることができる。入力切替はもちろん、ストリーミングのプレイリストやアルバムなどを割りてて、ワンタッチでお気に入りの音楽にすぐさまアクセスすることができるのだ。さらに、右端の大きなボタンは十字キー機能も備えており、シンプルなデザインを確保しながらも、曲送りやボリューム操作が行える操作性が実現されている。

フロント左の6つのピンはさまざまな機能がアサイン可能。たとえばSpotifyへのアクセス、フォノ入力といった切り替えができる。右のボタンはボリュームやコンフィグの設定を行える

■注目のフロア型3モデルと組み合わせ 〜フォーカル・ピエガ・JBL

それでは、5種類のスピーカーシステムと組み合わせて、「MAJIK DSM/4」の実力を検証してみたい。今回のテストは、fidataのサーバー「HFAS1-S10」からのファイル再生、そしてTIDALのストリーミング再生で楽曲を再生するとともに、本機の、そしてスピーカーの魅力を十全に発揮させるために、スピーカーごとにスペース・オプティマイゼーション機能のオン・オフも実施してその効果のほどを探った。

スピーカーと「MAJIK DSM/4」だけでシステムを完結できるシンプルさも魅力

まずは、FOCAL「Aria926」を接続する。一聴して爽快なのが、軽快でヌケの良い低域表現だ。軽量な亜麻を振動板の基層に用いたウーファーが持つ、爽快味溢れるサウンドの魅力を如実に描き出すのだ。低域量感は豊かだがアンプにしっかりとグリップされた俊敏さに溢れ、各楽器が奏でる音楽の律動が揃う様が何とも快い。

FOCAL「Aria926」(462,000円/ペア/プライム・ウォルナット/税込)

高域方向は、緻密な再現ながらも密度のある再現で、フォーカルらしい颯爽さとLINN独特の快活な躍動感が融合している。スペース・オプティマイゼーションを適用すると、室内に響くベースの余韻でマスクされていた帯域の明瞭度が上がり、ソースに内包されていた様々な楽器の存在が鮮明に浮かび上がってくることに驚かされる。同時に、全体的な音のスピード感や、奥行き表現の描写力も向上することに感心させられた。

続いて、ピエガ「Premium 501」では、高剛性の金属筐体由来の明瞭な定位感や、リボントゥイーターならではのなめらかで優しい質感描写がよくよく引き出されている印象だ。とりわけボーカルは柔らかく丁寧な歌声の質感を帯びるとともに、ベース楽器も小口径ウーファーから弾みよく繰り出され、実に温和で快適な表現を楽しませる。

PIEGA「Premium 501」(660,000円/ペア/税込)

スペース・オプティマイゼーションを適用すると、やはり低音域の乱れによるマスキングが軽減されるためか、弦楽器やピアノの音色の艶やかさがより十全に発揮されるとともに、リズムセクションの歯切れが向上し、音楽の躍動感がさらに引き出された。また、ヴォーカル表現もクリアネスが増し、全体的に実に心地よいサウンドを堪能させた。

JBL「L100 Classic 75」は、本機最大の魅力である、鳴りっぷりの良い豪快なサウンドが十二分に発揮されている。大きな筐体から繰り出される存在感のある低音が特徴的で、幾分高域方向が穏やかな音色で再現されることもあってか、音にゆったりと包まれるかのような迫力あるサウンドを楽しませる。

JBL「L100 Classic 75」(750,000円/ペア/税込)

このスピーカーは、大口径ウーファーによる浸透力の高い低音表現に起因してか、スペース・オプティマイゼーションによる効果が絶大で、中・高域方向の描写力が大幅に向上し、楽器の定位や音の重なりがより明瞭に再現されることに驚かされた。

■高品位なブックシェルフ2モデルをテスト〜ソナス・ファベールとB&W

ソナス・ファベール「Olympica Nova I」との組み合わせは、優美で気品のあるOlympica Nova Iのフォルムと、MAJIK DSM/4の洗練された佇まいとが、実に美しくマッチングしている。再生すると、ソナス・ファベールならではの芳醇で潤い豊かな音色と、LINNならではの演奏の一体感の高いサウンドが繰り出された。とりわけ、歪み感を排した柔らかみある高域と量感豊かなベースを引き出す再現によって、心地よい絶妙なピラミッドバランスが生み出されている。

SONUS FABER「Olympica Nova I」(935,000円/ペア/税込)※スタンドは推奨の「Stand Olympica NOVA」

描写の解像力は高くも、楽器同士の間合いの描き方が絶妙で、距離感や遠近感がよく出ている。スペース・オプティマイゼーションの適用では、楽器の立体感や空間の上下方向への広がりがよりリアルな姿で描き出された。音のキレも向上し音楽の躍動感が引き出され、音楽のリアリティが高いソナス・ファベールの魅力を着実に描き出した。

最後に、B&Wのフラグシップライン新800シリーズの末弟「805 D4」を駆動する。筐体構造の一新と細やかなバージョンアップで獲得した、ディテール再現に極限まで迫るような、重箱の隅をつつくかのような描画力が遺憾なく発揮されている。ドラムスのキレの良いアタック表現や、広大な空間描写性能が凄まじいものの、タッチの質感はあくまでしなやかに再現されるところに、その名の通りLINNのマジックを体感する。

Bowers&Wilkins「805 D4」(1,122,000円/ペア/グロス・ブラック/税込)

低域方向も同様に、駆動力の恩恵も合わさってか実に迫力豊かなパワフルな低域が大胆に繰り出されていく。スペース・オプティマイゼーションを適用すると、音の余韻がクリアになるとともに、不要な音の張り出しが整理され、音楽の一体感が高まった。緻密な描画力もあってか、特にこのスピーカーは、オプティマイゼーション効果の細かな調整にも如実な反応を示した。

以上のように、MAJIK DSM/4のスムーズな操作性と優美な音質でもって、5つのスピーカーの個性と魅力をスマートかつ十全に楽しむことができた。特筆なのは、やはり、いずれのスピーカーでもLINNらしい心地よく瑞々しい聴き心地を味わえることだろう。脚色なく詳細な描写ながらも落ち着きある音色再現と、同社クラスDアンプならではの着実なグリップ力を伴う力強い低域再現によって、どのようなソースおよびスピーカーであっても、実に快適なサウンドを楽しませてくれた。

■スペース・オプティマイゼーションの役割をさらに深堀り

最後に、スペース・オプティマイゼーションについて、もう少し掘り下げて説明しよう。2013年にリリースされた技術で、現在で3世代目のバージョンとなる。最新バージョンの「アカウント・スペース・オプティマイゼーション」では、部屋の形状を自由にアサインすることが可能となり、寸法を始め、壁の材質や窓の位置などを入力して綿密なシミュレーションを実施する。計算行程が膨大にわたるため、ネットワーク経由でのアクセスを利用してLINNのサーバー・コンピュータが演算を実施することで、一般的なPCでは1日程度かかってしまう複雑な計算を、わずか数分(部屋のサイズによって変動あり)で完了させることに成功しているそうだ。

スペース・オプティマイゼーションの設定画面。部屋のサイズや試聴位置などを入力してシミュレーションが行える

なお、シミュレーションにはスピーカー情報もインプットされ、101ブランド625モデルのデータ(ユニットやバスレフポートの位置やシステム・インピーダンス情報)を元にして計算が行われる。

具体的な処理としては、部屋内で発生する定在波によって乱れた80Hz以下の周波数エネルギーのうち、音圧が増加した部分のエネルギーのみを抑えるという処理内容になっている。音波の打ち消し合いによって音圧が低下したディップ帯域の補正はアンプへの負担に直結するため実施せず、最も確実な効果が得られる音圧増加部分の低減処理のみを実施する仕様だ。また、全体的な効果の適用量も任意に調整できるようになっている。

このスペース・オプティマイゼーション機能を用いることで、スピーカー本来の持ち味をより十全に引き出すことができる点も素晴らしい。難易度が高くも出音に大きな影響を及ぼすルームチューニング(定在波対策)までを最適化できる本機は、まさに高度に洗練された「1BOXミュージック・ソリューション」であることを実感させる。

「MAJIK DSM/4」は、美しい音質とデザイン、優れた機能性とハンドリングを高次に実現した、オーディオ機器の一つの理想を体現したプロダクトと言えるだろう。

(提供:リンジャパン)

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク