公開日 2022/01/18 06:30

銀線コイルをさらにリファイン。オーディオ・ノートの最新カートリッジ「IO-X」が描き出す確かなリアリティ

【特別企画】品位の高い艶やかさが秀逸
日本が世界に誇るオーディオブランドのひとつであるオーディオ・ノート。同ブランドよりMCカートリッジの最新モデルが誕生した。モデル名は「IO-X」。精密切削加工によるアルミ合金製ボディに、アルニコマグネットの磁気回路や純銀製の発電コイルが収められている。オーディオ・ノートのノウハウが凝縮されたこのカートリッジのサウンドを解説する。

AUDIO NOTEのMCカートリッジ「IO-X」(価格:770,000円/税込)

■独自の純銀製発電コイルを継承しリファイン

オーディオ・ノートと銀線の結び付きは、最初の製品が銀線巻き昇圧トランスであったことからもその深さが知られるが、カートリッジの場合も例外ではない。初代の「IO」は1979年の発売で、この年同社は株式会社に変組されている。その後励磁型の意欲作「IO-Limited」や「IO-Type II」などを経て、直近の「IO-M」まで、純銀の発電コイルが貫かれてきた。

本機はその基本構造を継承しながらリファインを加えて、さらに再現性の向上を図った6代目のモデルである。

マグネットにはアルニコで、中でも最大の残留磁束密度とエネルギー積を持つタイプが搭載されている。これに精密切削加工による純鉄製ヨークを組み合わせ、磁路を極力短く取った磁気回路を構成している。またヨークは可能な限り肉厚とし、低域の量感を確保したということである。磁束の流れが強化された結果であろう。

アルニコは形状や方向などによって磁力その他の性質が変わると言われているが、この点を考慮した組み立てと着磁方法を採ることでマグネットの力を最大限に引き出す設計としている。

カンチレバーは高強度アルミ合金。スタイラスはラインコンタクト針で、新設計のダンパーを装着して制動の最適化を図った。またボディはアルミ合金の精密削り出し。フロントに天然木のバーを取り付け、端子台はベークライト製である。磁気回路と端子台は左右3本ずつのステンレス製ネジで、ボディに固定する強固な作りとしている。

なお出力ピンもやはり純銀製で、これまでの経験を基に表面保護のメッキをパラジウムとしている。出力インピーダンスは1Ωである。

■厚手で重心の低いサウンドが特徴。独自の透明度や品位が光る

低域に重心を置いた感触で、厚手で当たりのいい音色を備えている。それでいてこもりやにじみがなく、透明度の高い安定した音調が明晰で聴きやすい再現性を保証する。バロックは楽器どうしの分離がはっきりして混濁がなく、弦楽アンサンブルにも独奏フルートにも肉質感がしっかりと乗ってレスポンスのバランスがいい。ことにフルートの柔らかな手触りと木管楽器らしい息遣いのリアリティが温かな響きで描かれる。弦楽器の感触がまた柔和な余韻に富み、瑞々しいきめ細かさが匂うようである。

試聴は同社の最高峰MC昇圧トランス「SFz」(887,700円/税込)と組み合わせて行った。純銀線バランス型多層巻線構造を採用

ピアノもどっしりとした手触りで、肉厚なタッチの質感が弾力的な感触で引き出されている。高域の煌めきも決してけばけばしくなることはなく、緻密なニュアンスを乗せて余韻が透明だ。低音部の厚手の響きが音楽に力強さと芯を与えている。

弦楽四重奏は表情が大変きめ細かく描き出されて、音楽が立体的に感じられる。アンサンブルが整理の利いた鳴り方で精密に捉えられ、目の詰んだ再現性が支えられている。艶やかな音色にも金属的な刺がなく、過度な華やかさを控えて表現が深い。

オーケストラは弦楽器の柔和で繊細な質感が非常に快く、こういう音でいつも聴きたいものだと思うのである。分解能にも優れて濁りがなく、滑らかで伸びやかな金管楽器や暴れのない打楽器など音楽の優美な味わいが適確に描き出されている。品位の高い艶やかさが秀逸である。

■開発者の声:オーディオ・ノート 代表取締役 芦澤雅基氏

(株)オーディオ・ノート 代表取締役 芦澤雅基氏

1979年の初代「IO」発売から長年にわたる経験で培ったノウハウと組み立て技術により生まれた6代目のフォノカートリッジです。磁石内部の磁気抵抗が低く音質的にも優位性を持つアルニコ磁石を引き続き採用しました。

今回の開発で、磁気回路の形状とヨークの厚さが音質に与える影響が極めて大きいことを改めて確認しました。この磁気回路をアルミ合金製ボディにステンレスネジで強固に固定。内部に意図した空間を確保し、さらに天然木を組み合わせることでボディの鳴きをコントロールしています。自然で広い音場を再現し、雄大なオーケストラから情緒あふれるヴォーカルまで生気に満ちた音楽を再生します。

(提供:オーディオ・ノート)

本記事は『季刊・analog vol.73』からの転載です。

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