公開日 2015/04/07 16:32

PC-Triple C採用ながら価格を抑えたサエクのUSBケーブル「SUS-380」をレビュー

取り回しの良さも魅力的
音質・価格・取り回しと三拍子そろったUSBケーブル

SAEC(サエク)の「SUS-380」。こういうUSBケーブルを待っていた方も多かっただろうと思われるポジショニングの製品だ。短く結論から言えば、しっかりとした音質で、値段が高すぎず、取り回しが極めていい。この3点を満たす製品が今までなかったのが不思議だった。

「SUS-380」 0.2m/¥7,300、0.7m/¥8,400、1.2m/¥9,700、2.0m/¥11,300、3.0m/¥14,500、4.0m/¥17,200(いずれも税抜)

当然使いやすいが、使いやすいのでいろいろな用途に使いたい。そのために長さのラインナップが揃っているのもこの製品の成り立ちを象徴しているように思う。具体的に書けば、0.2m/0.7m/1.2m/2.0m/3.0m/4.0mの6つの仕様が用意されている。

新導体PC-Triple Cを採用する

内容を紹介すると、まずその導体には話題のPC-Triple Cが採用されている。超低歪率や高い伝導率という安定した電気的特性を持つ銅素材だ。連続で鍛造し、ケーブル状に伸延していく新開発のテクノロジーにより、信号の伝送を妨げる結晶粒界を極力減らし、結晶を長手方向に連続化させている。

PC-Triple Cの鍛造処理のイメージ。信号の伝送を妨げる結晶粒界を極力減らし、結晶を長手方向に連続化させている

そして絶縁体には非誘導率の低いフッ素樹脂を採用。信号伝送に悪影響を与える静電容量を低下させ、安定した高速伝送を目指している。その外周をアルミ箔と編組による2重シールド構造でくるみ、シース(被覆)は難燃性PVCという、さまざまな場所で使いやすい素材を選択している。

そして、特筆すべきはケーブル外径の5mmという直径で、これが曲げ方向はもちろん、捩じり方向にも柔軟性を与えている。USBケーブルはA端子側とB端子側の周方向の角度が決められてしまうため、捩じりにくい剛直なケーブルは使いにくいのだが、オーディオ用にはそうした製品が少なくなかったのだ。

まとまりの良い端正な音。音質面でも使いやすいUSBケーブル

音元出版の試聴室でテストした。筆者のMacBook Proを使い、USB-DACとしてESOTERIC「K-05X」、ACCUPHASEのプリアンプ「C-3800」とパワーアンプ「A-70」で、ELACのスピーカーシステム「FS249 BE」を鳴らした。

取材にはESOTERICのUSB-DAC内蔵SACDプレーヤー「K-05X」を用いた

エリック・クラプトンの『アンプラグド』のCDからリッピングしたPCMファイルを再生すると、中高域のストレートで抜けの良い感じ、量感タイプの低域というのが支配的なトーンだ。高級な導体を感じさせるキメの細かい、ほのかに甘みを感じさせるようなところもあるが、シャープさや音のにじみのなさ、コントラスト、音色感など、まとまりの良い、端正な音を持っている。

DSD2.8MHzの音楽ファイルとして大友良英と高田漣のアルバム『BOW』より「It's Been A Long, Long Time」を聴くと、空間表現力が高く、伸びやかな空気感が印象的だ。ギターのフレットの上を指が滑る動きの時のキュッという動きの音に強調感がなく、声の質感もナチュラル。

同じくDSD2.6MHzの若手ミュージシャンたちによるジャズのライブ『4A.M.』ではソフト自体の持っているコントラストの強い、温度感の高い感じがストレートに出てきて、音楽的にも楽しめる。ユリア・フィッシャーがソロヴァイオリンを弾いているチャイコフスキーの『ヴァイオリンコンチェルト』(192kHz/24bitのwav)での、音像のフォーカスの精度の高さや強調感のない音色感。ステージの見え方も歪みがない。

総じて言えば、強烈な個性は持っていない。しかし帯域的にムラがなく、取り回しや価格はもちろん、音質の面でも使いやすいUSBケーブルであるとレポートしたい。

(鈴木 裕)

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