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公開日 2026/01/22 14:23
評論家・井上千岳が試聴

サブゼロ処理研究所初の電源ケーブルが登場――ひさご電材「GOURD CORD」にHST処理を施した限定モデルの実力を聴く

井上千岳

電源供給の要所にメスを入れるサブゼロ処理研究所の新たな挑戦


オーディオ関連機器への超低温処理で幅広く事業を展開してきたサブゼロ研究所だが、ここ数年は電源を新たなターゲットとして様々な提案を行っている。例えば分岐ブレーカーもそのひとつだし、壁の電源コンセントにもサブゼロ処理製品がラインアップされている。


いずれも電源の入口と出口を交換するもので、その中間の屋内配線はそのままなのに効果は驚異的だ。鮮度が圧倒的に高まり、見違えるような音質が得られる。電源へのアプローチがこんなに利くとは想像していなかったので、非常に貴重な経験をしたものである。


今回はそこからさらに進展して、いよいよ電源ケーブルである。サブゼロ製品として販売されるのはこれが初めてのケースとなる。






                HST-BASIC-GCP-603 パワーケーブル (1.8m)



信頼の「GOURD CORD」をベースに独自のHST処理を適用


ベースとなるのはオーディオケーブルの設計・製造で広く知られているひさご電材のGOURD CORD GCP-603で、PCUHDと4N-OFCの2種の線材を使用した5芯3極構造。芯線のサイズは各2.0sqである。


接地側/非接地側各2芯とアースという構成でシールドは編組。またコネクターは一体型モールドとして、端子にはロジウムメッキが施されている。


これに独自の超低温処理HSTを施したのが、ここで紹介する電源ケーブルである。


処理のタイプは基本的なBASICで、24時間の深冷処理を1回行うものだ。今回は「オーディオ・アクセサリー誌50周年記念」のプレ販売で、数量20本の限定生産である。


厳密な温度管理で音質を最適化する「HST」とは何か


ご存知の方にはちょっと余計かもしれないが、HST処理の説明を簡単にしておく。


サブゼロというのはゼロより下つまり摂氏0度以下のことで、鋼材の焼入れ後0度以下まで冷却することをサブゼロ処理という。


そして-100℃以下で行う超低温処理のことを、特に超サブゼロあるいはクライオジェニックスと呼ぶ。HSTはHyper Sub-zero Treatmentの略で、サブゼロ研究所の独自の処理プログラムである。


全工程は24時間かかるが、この間の冷却・沈静・徐冷(乾燥も含む)の各工程を温度と時間の双方で精密に管理し、音質にとって最適な状態での処理を実現している。


媒体には液体窒素のガスを用いるため、より正確な温度管理が可能である。液体窒素に浸けて引き上げるといった単純な方式とは違い、物質に与えるストレスや安全性にも十分な配慮を行って適切な処理を行うことができるのである。


処理前でも十分に高品質なオリジナルの実力


まずオリジナル(サブゼロ処理前)のGCP-603の音を確かめておくことにしたい。大元のコンセント/電源ボックス間に使用する。


きめ細かく素直な音調だ。汚れや歪みっぽさがなく、表面がきれいに磨かれたクリーンな質感を備えている。また音色にくせが乗ることもなく、ナチュラルな感触で音楽が澱みなく流れている。


ピアノのタッチは明瞭だが刺々しさがなく、バロックの艶やかさもきれいに描かれて伸びやかだ。オーケストラのダイナミズムにも無理がなく、立ち上がりの瞬発力も高い。


質の高い再現性で、十分完成された内容である。ここからどう変わるのだろうかというのが興味のあるところで、変に手を加えない方がいいのではないかというような気もする。


音調を変えずに「実在感」を高めるサブゼロ特有の変化


ところがサブゼロ処理後の製品に交換して聴いてみると、音は歴然と変わるのである。それもまさしくサブゼロ特有の変わり方をする。


どういうことかというと、音調そのものに大きな違いはないのだ。違うのは音のひとつひとつに細かな彫りが浮かんでくること。情報量が増えて表現が緻密になり、空間の奥行が深まり、音の実体感が高まってリアルな感触が増す。


それが変化の本質だが、四の五の言わずに音を聴いてみれば一目瞭然である。


ピアノのタッチが明瞭なのはそのままだが、響きがずっと細かくなっている。線がつるっとしているのではなく、微細な凹凸に彩られて陰影が深い。同じひとつの音でもカーンというだけではなくシャランという潤いのある響きに変わるのである。


バロックでも古楽器らしい張りと艶に、瑞々しいしなやかさが加わっている。それに楽器それぞれが空間の中で浮き上がって、立体的な存在感を見せているのも生々しい。


気がついてみると、音場全体が奥の方まで深く引いて遠近感がよくわかるようになっている。サブゼロ特有と言ったのは、こういう変化のことである。


S/Nの向上と低域の解像度がもたらす音楽表現の深化


またピアノやバロック、さらにオーケストラでも、音の周囲がすごく静かになっていることもわかる。ノイズが鎮まってS/Nが向上したのである。これもサブゼロの効果だ。


これに伴って、オーケストラの低音がくっきりしてくるのも特徴と言える。量感そのものは変わらない。ドーンと大きな低音が出るのではないが、輪郭や音色がはっきりして存在感がよくわかる。音程も明快になる。


こうして音楽全体の表現が起伏の大きなものになり、表情が深く緻密で陰影に富んだ再現が展開されることになる。生き生きとした鳴り方と言えばわかりやすいかもしれない。


これまでにもサブゼロ処理を色々聴いてきたが、今回のこの製品には最も端的にその効果が現れているように思う。音調は変えずに再現が深まる。サブゼロとはそういうものだと理解してもらえれば有難い。




オーディオ評論・井上千岳氏


試聴ソフト一覧





























作品名 アーティスト レーベル 品番
「ヴィヴァルディ:四季、海の嵐他」 フェデリコ・グリエルモ(Vn)/新イタリア合奏団 マイスター・ミュージック MM-4529
「アルベニス:入江のざわめき/細川夏子」 細川夏子(ピアノ) マイスター・ミュージック MM-3092
「サン=サーンス:交響詩集」 フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮)/レ・シエクル ハルモニア・ムンディ/キング・インターナショナル KKC6761/2(2CD)

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