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公開日 2025/09/09 06:35
ホームオーディオでも活用される逆ドームトゥイーターやFLAX素材を活用

フォーカルのカーオーディオ、“メイドインフランス”の誇り。アルピーヌとの幸せなマリアージュを聴く

栗原祥光

操安性はもとより、エキゾーストノートやエンジンの鼓動を愉しむスポーツカーに、カーオーディオは必要なのか? 搭載したところで、エンジン音で音楽が愉しめないのではないか? アルピーヌとフォーカルのマリアージュは、そのような考えを打ち消すに十分な説得力がある。結論から言えば、A110GTはフランスの魂そのものだ。



アルピーヌ「A110GT」(価格:11,500,000円/税込)



同じフランスのフォーカルのカーオーディオを装備


アルピーヌA110は、1.8リットルターボエンジンを運転席の後部に配置(ミッドシップマウント)したコンパクトな2シーターのスポーツクーペだ。



正面からみたアルピーヌA110GT


誕生は先代アルピーヌA110の誕生40周年にあたる2017年で、2022年にマイナーチェンジして、現在はモデル末期にあたる。生産はフランスのデュエップ工場で行われ、1日15台前後がハンガーアウトしているという。ちなみに日本は世界で5番目にアルピーヌA110が売れている市場であると聞いたことがある。



初代アルピーヌA110


様々な特別仕様車や限定車がラインアップされているが、今回紹介するA110GTはシートヒーター付きサベルトのセミバケットシートなどの豪華装備が奢られたモデルだ。取り付けられるカーオーディオは、フランス生まれの「フォーカル」のシステム。A110GTは、走りだけでなく音もフランス産なのだ。


 


ホームオーディオでもおなじみの逆ドームトゥイーター採用


それではA110のシステムを紹介しよう。トゥイーターは35ミリ径のアルミニウム/マグネシウム逆ドーム型。ドアやAピラーではなく、ダッシュボードに置かれるコダワリっぷり。さり気なくも主張するFOCALのロゴがフランス産であることを雄弁に物語る。



ダッシュボード上に置かれる35mm径アルミニウム/マグネシウム逆ドームトゥイーター


ドアにマウントするウーファーの口径は165ミリ。振動板の素材はフォーカルではお馴染みの、フランス産の亜麻繊維をグラスファイバーで挟んだFLAX(フラックス)だ。メーカーだけでなく、素材までフランス産とは恐れ入る。



ドアに取り付けられた165mmウーファー


A110シリーズのスピーカーシステムは、基本的に逆ドームトゥイーターとFLAXコーンウーファーの2ウェイで構成するが、GTグレードのみ助手席の後ろに200mm径のFLAXコーンサブウーファーをマウントし、2.1チャンネル構成となる。



助手席後部に取り付けられた200mmサブウーファー。振動板の素材もFLAX


ソースはラジオのほか、USB、ブルートゥース、さらにライン入力を用意する。イマドキのクルマでライン入力を用意するのは珍しい。



外部入力はUSB-Aのほか、ライン入力を設ける


バランスは左右のみで前後調整(フェーダー)機能はない。イコライザーは3バンドでサブウーファーのみを調整することはできない。



左右のバランス調整が可能




イコライザーは3バンドを調整可能


サウンドモードは「ナチュラル」「ラウンジ」「クラブ」「ライブ」の4種類。残響時間と低域の量が大きく変化する。



サウンドモードは「ナチュラル」「ラウンジ」「クラブ」「ライブ」の4種類


ボリュームコントロールはステアリングコラム右手側から伸びるスイッチで行う。助手席側からは画面操作のみ。当然、音量調整をしている時はナビ画面を表示することはできない。 

 


素材の良さを最大限に引き出す丁寧で繊細な仕事


温かな光を浴びたような陽性の音世界。僅かに高域に乗るブライトな輝きと引き締まった低域は、楽音にリズミカルなアクセントと愉しさを与える。トゥイーターをダッシュボードに配置したことが奏功し、自然な音像定位も魅力的だ。


2.1チャンネルというシンプルな構成なのも好印象。フランス料理の「ヌーベルキュイジーヌ」の世界に似た、素材の良さを最大限に引き出す丁寧で繊細な仕事ぶりを感じた。


香港の映画音楽作曲家、エリオット・レオンによる現代の交響曲「メタバース・シンフォニー」は、ダイナミズムでドライブ感が魅力。弱音部から楽器の数が増え、さまざまな楽器を操りながら音圧を上げてSF的な壮大な世界観を提示した。このダイナミズムなノリの良さは、サブウーファーによる制動のかかった低域再現がないと楽しめない。



「メタバース・シンフォニー」の再生画面


フォーカルは歌モノに強い。それはアルピーヌA110GTでも当てはまる。ここでは敢えてフランスのシャンソンではなく、YouTubeで3,300万回再生という邦楽のポルノグラフティのサウダージ(ファーストテイク版)を選んだ。


アタックが鋭く、ビブラートをあまりかけない明るく爽やかでストレートな岡野さんの声は、ミスター・チルドレンの桜井和寿さんが、岡野昭仁さんの歌声に対して「声に名前が書いてあるね」と賛辞を送ったように独特の魅力がある。そこにフォーカルのキャラクターが相乗し、美しくも哀しい楽曲の世界観を丁寧に描き、聴き手の心に染み入る。ドイツとも日本ともアメリカともイギリスとも違う楽器の柔らかな響きに、フランスの官能美を感じた。



ポルノ・グラフィティの「サウダージ」(ファーストテイク版)を再生


手持ちのハイレゾウォークマンNW-A300シリーズを使い、AUX入力とBluetooth接続を試した。本来ならUSB出力もNW-A300シリーズで行うべきなのだろうが、残念ながら車両側と接続することはできなかった。これはAndroid AUTOに対応する他の車種でも起きていることでA110GTだけの問題ではない。



ウォークマンとUSB入力では接続出来なかった


AUX入力は、音の輪郭が曖昧で全体的にノイジーな印象。また選曲はNW-A300シリーズ側で行うため、運転中に選曲操作をすることはできない。Bluetooth接続に切り替えると、視界が晴れやかに拡がる。選曲は車両側で行えるが、トラック送り/戻ししかできないため、好きな楽曲を選ぶ際は、ひたすらトラック送りをしなければならない。


同じ楽曲をUSBメモリに入れて車両に差し込んでみた。音質の面でも操作面でもコレでキマリだ。車両のインフォテインメントディスプレイに楽曲リストが表示されるようになり、音場も拡がりをみせる。聴くならコレだ!



USBメモリからの再生ならば音質や操作面もグッド!


人生を楽しむ方法をよく知るフランス人だからこそ生まれた、人生を楽しむためのクルマ。アルピーヌA110GTはスポーツカーの枠を超え、贅沢な時間を過ごすツールといえるだろう。

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