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公開日 2018/03/29 08:00
開発者に話を聞く/生産ラインも視察

デノン “モンスターAVアンプ”「AVC-X8500H」はいかに誕生したのか。同社の白河拠点を取材

大橋伸太郎

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デノンは今年2月、13chアンプ内蔵/同時出力約1,600Wという“モンスター級”のフラグシップAVアンプ「AVC-X8500H」を発売した。イマーシブオーディオ時代における新たな到達点として早くも注目を集めている本機は、いかにして生まれたのか。大橋伸太郎氏がデノンの開発・製造拠点である白河工場を取材。開発陣に話を聞きながら、そのサウンドの真髄を探った。

AVC-X8500Hの開発拠点および製造ラインを取材。13ch内蔵というモンスター級のフラグシックモデルがどのようにして誕生したのか、開発陣に話を聞きながらレポートしていく

<1>13chアンプ/同時出力1,600Wの超弩級フラグシップ登場の意味

飛び抜けて強力、かつ壮大なAVアンプが、イマーシブサウンド時代の象徴のごとく現れた。デノンの「AVC-X8500H」だ。全ch同一クオリティ・独立基板構成の13chパワーアンプを内蔵したAVアンプで、ドルビーアトモス/DTS:Xに加え、Auro-3Dにもアップデートで対応予定と、全イマーシブサウンド対応のプロセッサーを実装する。過去においては無論、今後もイマーシブサウンドにおいて本機を上回る規模のAVアンプは考えにくい、桁外れのスペックを備えた製品だ。

イマーシブサウンドの先駆者:デノン

デノンは、2014年に登場した家庭向けドルビーアトモスの実用化にあたり、同社AVアンプにプロセッシング&デコードプログラムを他社に先行してインストール。米ドルビーラボラトリーズにあって、検証役を果たしたことはすでに知られる通りだ。それをDSPに実装した家庭用AVアンプを発売したのも、デノンが最も早かった。さらに昨年、欧州発のイマーシブサウンド規格であるAuro-3D再生に、「AVR-X6400H」で国内製品として初対応したことも記憶に新しい。

現在、ホームシアターを担うサウンド製品のボトムは、AVアンプのテクノロジーの一部がスピーカーと融合して生まれた、より新しいジャンルであるサウンドバーなどに置き換わったと考えられる。そうした状況もあって、AVアンプのほぼ全ラインナップを毎年更新しているのは、事実上デノンともう1社があるのみ。DTS:Xを含め、イマーシブサウンドとオブジェクトオーディオで先行し、地道にたゆまず開発を積み上げた牽引者の努力が積み上がって、AVC-X8500Hな“モンスターAVアンプ”が送り出されたわけだ。

白河工場の生産ラインにて、AVC-X8500Hと写真に収まる大橋伸太郎氏


新フラグシップが伝統の「A1」をあえて名乗らなかった理由

ここでいったん、本機がなぜ「A1」を名乗らなかったのか、について触れておこう。これは、デノンのAVアンプを長年追いかけてきた読者なら興味がある点ではないだろうか。

デノンは映像音響が進化する都度、総力を挙げて主要モデルを開発し「A1」の名を与えてきた。ドルビープロロジックIIxやDTS 96/24に対応し、170W×10chパワーアンプを内蔵したDVD/ロッシー時代の頂上モデル「AVC-A1XV」(2004年)は、音元出版視聴室の信頼篤い常用リファレンスとして忘れ難い。

Blu-ray/ロスレスHDオーディオの時代に移行した後は、一体型として150W×7chを達成した「AVC-A1HD」、セパレート型の「AVP-A1HD」と「POA-A1HD」(いずれも2007年発売)がフラグシップの座に付いた。筆者も専門店で試聴イベントに一役買った記憶がある。

生産拠点に併設されたデノンミュージアムには、歴代の銘機がずらり。こちらは「AVC-A1XV」

HDオーディオ時代の金字塔となったセパレート型AVアンプ、「AVP-A1HD」と「POA-A1HD」も展示されていた

これら従来の「A1」たちを、さらに上回る150W×13ch同時出力を達成したAVC-X8500Hは、イマーシブサウンド以外のスペックにおいても何ら遜色なく、フラグシップとしての製品像に実質上の違いはないのだが、「A1」を冠していない。

先行するAVアンプの開発を通じてフラグシップを念頭に置いた技術を蓄積

写真などで見ると、AVC-X8500Hは従来のトップエンド機「AVR-X7200W」(2015年)に近い印象を受けるかもしれないが、筐体サイズは奥行きがX7200Wと比べて55mm長く、一回り大きい。

上部天板を外すと、前部中央にメイン電源を司るEI型トランスが鎮座し、ヒートシンク、4基のファンを挟み、モノリス・コンストラクション(パワーアンプ部をチャンネル単位でカード式に分離し、縦に立ててマウントする様式)のパワーアンプ・ブロックが左7基、右6基に林立する。後部は各種(デジタル/アナログ)基板とプリ部が占有している。端正なレイアウトは、ぱっと見でAVR-X7200Wと似ているが、比べればその規模のちがいがわかるだろう。さらに目を凝らすと、先行モデルにおいて旗艦機への実装を念頭に開発された様々な技術が盛り込まれている。

AVC-X8500Hの筐体内部。モノリス・コンストラクションによって13ch分が独立したパワーアンプ基板が左右対処に整然と並んでいる

「AVR-X6300H」(2016年)で初採用され、AVR-X6400Hでの生産の進展を経て安定化した、パワートランジスタを市松模様のように実装するチェッカーマウント・レイアウトがここでも採用されている。放熱性を改善してアンプ効率を向上させることが目的だが、本機ではそのベース部に熱伝導に優れる銅板が新たに追加されている。また、ディスクリート構成のキャパシターが音質グレードの高いものに換装され、低域の時定数が上がる回路設計に変更されている。音質に考慮してJRCと共同開発した、ボリュームおよびセレクターにそれぞれ特化したICの採用も、AVRX6300H/X6400Hの流れの中にある。

AVC-X8500Hが示した「新時代のフラグシップ像」

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