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公開日 2016/12/01 11:22
高い技術力が豊かな音楽性に結実

マランツ「SA-10」の “ディスクリートDAC” は何が画期的なのか? 角田郁雄が徹底解説

角田郁雄

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マランツの新旗艦SACDプレーヤー「SA-10」は、独自開発のディスクリートDACを搭載したことで大きな注目を集めている。今回の記事では、ディスクリートDACの独自開発がなぜ大きな意味を持つのか、角田郁雄氏が分析。本機の詳細を徹底レポートする。

Marantz「SA-10」¥600,000(税抜)

極端に少なくなった半導体DACの選択肢

マランツは、約30年前にフィリップスとソニーがCDを規格化した当初から、理想のデジタル再生を追求してきた。そして今回、約3年間の開発期間を費やして、半導体DACチップを使わないディスクリート構成のΔΣ1bit DACを搭載するSACDプレーヤー「SA-10」を発売した。私はこの理想的なD/A変換方式を実現する技術と、音の再現性に感激した。この内容ながら価格を抑えたという意味でも、高い評価をしている。

なぜマランツは、ディスクリートDACを搭載したモデルを登場させたのであろうか。おそらくは、DACチップの選択の幅が狭まっているからだ。特に2000年代に入り、携帯電話やモバイルプレーヤーで音楽を楽しむ傾向が顕著となり、半導体メーカーは超小型のA/D、D/Aコンバーター、ヘッドホンアンプ、ライン出力などをワンチップで収められるチップに力を入れている傾向にある。そしておよそ2007年から始まったハイレゾ時代において、ピュアオーディオ専用の新しいDACチップはあまり登場していない。

SA-10に搭載されたディスクリートDAC「Marantz Musical Mastering」の回路イメージ

目立つところで言えば、旭化成エレクトロニクスやESS Technologyのダイナミックレンジを130dB以上に拡張した32bit型高精度DACといったところではないか。各オーディオメーカーは新しい高性能DACの選択の幅が少なく、FPGAを使った独自の外付けデジタルフィルターによって11.2MHzDSDなどのスーパーハイレゾに対応する独自のD/A変換方式を確立しているのが現状であろう。

一方で、ディスクリート構成のDACを手がける海外ブランドとしては、dCS、MSB Technology、CHORDなどがあるが、いずれも抵抗素子を複数並べたマルチビットDACの応用となる。Playback Designsだけが、ΔΣ1bitDACである。各ブランドが手の込んだ技術を投入しており素晴らしいと思うが、海外製であるので非常に高価だ。

日本のメーカーがディスクリートDACを独自開発した意義

こうした状況の中でマランツは、半導体DACチップの機能、性能に拘束されない音を追い求めたのである。私は、実は日本のブランドでも、ディスクリートDACは開発できるはずだと切に望んでいた。こうした中でマランツが、独自開発したSACDドライブメカの搭載と共にディスクリートDACを実現してくれたことは感慨深い。

USB-Bをはじめデジタル入力も搭載

SA-10がディスクプレーヤーでありながら、USB入力で手軽にハイレゾを再生できる点も評価している。とりわけ日本は、格別にCD、SACDを大切にしている。物としての実体感がないとダメなのであろう。これは電子書籍が今ひとつ流行らないのと同じだと思う。一方で新しいハイレゾミュージックにも関心がある。SA-10は、ハイレゾ・ダウンロードミュージックとディスクメディアの両方をひとつの筐体で、スペースを取らずに再生できることも優位点とする。

D/A変換に深く関わるマランツだからこそ、SA-10は実現できた

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